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永遠の刻


(N)
これから話すのは、特別な霊薬によって普通の人達の3倍から5倍生きられると言う、何とも羨ましい生き方をしている1人の女性の話。
その女性は霊薬によって、怪我をする事も、病気をする事もなく、毎日を過ごしていました。
歳を取るのも周りの人達より遅い為、その見た目も女性が50歳でも20代にしか見えない程の若さを保っていました。
その為、不信がられるのが嫌で、同じ地には3年しか居ないと決めていた…
女性が新しい地に来て2ヶ月が経った頃、近所の広場で果物を売っている男性に出会い、最初はただの果物売りとお客でしたが、気が付けば毎日女性が好きなリンゴを買いに行くようになっていた、
(女性)
はあ、、、今までは誰とも深く関わらないのが当たり前だったのに、、
あの人と話したい、だからリンゴを買いに、、

(N)
女性は毎夜今までに感じた事のない胸の高まりを感じて、ため息をついた、
ある日リンゴを買いに行くと、男性から年に1回開かれる祭りに行かないかと、声を掛けられた。

(女性)
誰かと何処かに出掛けるなんて初めて、何をしたらいいの? 何て返事したら、、、

(男性)
ごめん! 急にこんな事言ってびっくりさせたな
他の予定あるならいいんだ!

(女性)
ううん、行きたいっ!

(男性)
本当? 良かった〜
あっ、いつものリンゴねっ! はい どうぞっ!

(女性)
あ、ありがとう、 誘ってくれて嬉しかった

(N)
祭りの日、女性はドキドキしながら男性を待っていた、後ろから小走りに駆けてくる足音

(男性)
ごめん!待たせたね

(女性)
ううん、さっき着いた所だから

(N)
女性は頬を赤らめ男性の横に寄り添いながら、祭りを楽しんだ
途中、人混みの多い場所に入り他の人の肩がぶつかり、女性が困っていると、男性がそっと女性の手を握って人混みの中を抜けて行った
そんなドキドキな祭りも終わりまた、いつもの日常が始まる
それがきっかけに男性と女性は時間を見つけては、一緒に買い物に行ったり、互いの家に出入りし
美味しい紅茶を飲みながら、他愛もない話で楽しく過ごすようになっていた
2人が知り合って、2年が過ぎようとしていた、
女性はこれまで同じ地には3年しか居ないと決めていた為、急に不安になり男性の顔を正面から見れなくなっていた、、
そんな女性の様子に男性は強烈な不安を覚え、仕事を終え女性の家へと急いだ!
女性の家では、男性と女性が向かい合わせにテーブルに座っており、暫く沈黙が続いた、

(男性)
あのさ、、、俺の勘違いならいいんだけど、、
最近、俺と目を合わせようとしてないな〜って、、
何か心配事があるなら、話してくれないかな?

(女性)
心配かけてごめん、、、

(男性)
お前の不安そうな顔見てられなくて、、

(N)
女性はギュッと唇を噛み締めた後、何かを決断したように大きく頷き、大きく目を開き男性を見つめる

(女性)
これから話すのは、私がこれまで生きてきた経緯、全て話すから途中で嫌になったら出て行って構わないから、、

(男性)
お前の事は全部知りたい! 話してほしい

(女性)
私は、、、霊薬によって普通の人より3倍以上生きる事が出来るの、

(男性)
何だ! 羨ましい

(女性)
そんな簡単な話じゃないのよ! 人より長く生きるって皆んなを見送る事が多いって事よ?
分かる?
誰かを好きになれば、必ず私が見送る事になる
、、ただ1つ誰かと共に人生を送れる方法があるの!

(男性)
その方法を使えば、お前と同じ刻を過ごせるって訳だな?

(女性)
うん、、私が飲んだ霊薬はもう1つあって、私と長い刻を歩んでくれる人を見つけるのが、私の人生の目標なのよ、、
でも、、、それはとても難しい事よ
過去にも同じ話しをした人も居たけど、皆んな私を化け物だと思い、叫び声を上げながら去って行ったの、、、

(男性)
その男達、お前の魅力が分かってなかったんだな、、

(女性)
、、、考えてみて? 人より長く生きてさらには死ににくい体になるって、実は不幸な事が多いかもしれないって事、、
いつまでも変わらない容姿を疑われないように、同じ地には長く居られにいし、 そんな面倒臭い人生誰も共にしてくれないでしょ!

(男性)
ねえ? もう1個の霊薬見せてくれない?
へえ〜、不思議な色してるんだな!
キラキラしてて綺麗だな〜

(女性)
ふふっ、見るだけならね、
さあ! 全て話は終わり、もう分かったでしょ!
明日からはまた、果物を売って素敵な人見つけてよね!

(N)
女性は男性に背を向け、男性が出て行くのを待った、ガタンッと音がし、女性は振り向いた

(女性)
何でまだ居るの? 帰ってよ!

(男性)
ははっ⤴︎ もう帰れね〜よっ!

(N)
男性は満面の笑顔を浮かべ立っていた!

(女性)
まさかっ!

(N)
女性はテーブルに置いた霊薬を見た、そこには
蓋が開けられ空っぽになった霊薬の入れ物が転がっていた!

(女性)
飲んだの? あなた本当にそれでいいの?
私と歩いてくれるの? 永遠の刻を、、

(男性)
俺はしつこいぞ!! お前の行く所なら
何処までも、何処までもついて行く!
さあ! 行こうっ もう離さないからな

(N)

男性は霊薬を飲み女性と永遠の刻を選んだ

終わり

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