「Pocketful of Words」という曲について

自分の作った曲について語るということは野暮なことである。それは重々承知の上で語らせて欲しい。この曲はそれぐらいのことをしないと報われないほどの境遇に、この僕がしてしまったからだ。よろしければ、まず曲を聞いていただければと思う。

この曲は、ボカコレ2023夏の参加曲として投稿した。当初、ボカコレ2023夏には曲を投稿しないつもりだったし、実際曲も作ってなかった。ボカコレはDTM界隈で大きなイベントとなっており、このランキングに載ることは一つの目標となっている。

ランキングに載るためには、再生数だけでなく、いいね数やコメント数も関係してくるらしい(アルゴリズムは非公開)。だから、SNSでは曲の宣伝が繰り広げられる。僕も2022秋のボカコレでやった。結果は満足のいくものではなかったけど。

SNSでの曲の宣伝は、①作曲の実力、②魅力的な動画、③知名度、④日々のつながり、などが影響する。僕の場合、どれもない。ま、頑張れってことです。

話がずれたが、つまりは埋もれるような惨めな思いをするのであれば、ボカコレ投稿やめちゃえってことでボカコレ2023春の投稿は見送った。夏も見送るつもりだった。少し前向きになったのは、だいえっとちゅうPさんの曲を聞いてから。

投稿を回避した自分を恥じた。それでも曲作りには着手してなかったけど。

ボカコレ1週間前、一つのことを閃いた。
「どうせ埋もれるのなら、そもそも確信犯的に埋もれさせてしまえ」
正直なところ、今のボカコレにはあまりいい印象を持っていない。「半年に1度、タイムラインが荒ぶるイベント」という印象。
だから、荒ぶらずに埋もれるっていうのは、ちょっとした反骨精神のつもり。かなり捻じ曲がってるけど。

「埋もれさせる=誰にも聞かれない曲」という運命を背負わせるのだから、やはりそれなりのクオリティは維持したい。僕が選択したのは、変拍子だった。なにより、聞いた人の耳に残りやすい。ただ、グリグリと拍子がこれみよがしに変化するのもあまり好きではないので、なるべく気づかれないような変拍子にしたかった。

ただ、変拍子でキャッチーなフレーズを作るのは難しい。1週間しか制作期間はなかったけど、それでも3回はサビを作り直した。歌詞も入れた状態だったのに作り直すのは、かなり勇気が必要だった。リファレンスないかなと思って探してみたけど、該当するような曲はなかった。

例えば、ミッションインポッシブルのテーマ曲は5拍子。キャッチーなので参考にしたけど、可愛くならなかったので没にした。可愛くないと、意味がない。今回ボーカルをとるのは、「かりせん」こと夏色花梨。やっぱりかりせんには、可愛い曲を可愛く歌って欲しい(今まではかっこいい曲ばかり歌ってもらってたので)。今思えば、1週間でよく形になったと思う。苦労した分、可愛くキャッチーなメロディになったと思う。

Aメロも5拍子だと芸がないので、4拍子メインにした。ところどころ4拍子じゃないけど笑。まあ、普通に聞いたらわかんないかもなのでいいや。自然に聞けそうなのでそのままにした。

変拍子の曲をつくると、初めて聞いた時にどう感じるかが不安になる。4拍子のつもりで聞いた人は、いきなり5拍子で始まる曲に置いてけぼりになるだろう。しかもこの曲は、途中で拍子がしれっと変わる。だから、何日か寝かせてチェックした。メロディが可愛いかの確認もかねて。なんとか聞けそうだなと思ったので、よしとした。

問題は歌詞。最初は芥川龍之介の「藪の中」から着想を得ようとしたけど、やっぱりうまくいかなかった。一部歌詞に残ってるけどね。

知らない 誰かが悪いとか
言わない 見たこと聞いたこと

この歌詞は「藪の中」から着想を得たところ。こっから前後に歌詞を広げていった。サビの入りにはキャッチーな言葉が欲しくて、メロディに合いそうな言葉を探したところ(今更ですが、曲先です)、「ポケット」という言葉が。サビはこれで引っ張るしかない。時間もないし。

タイトルもポケットで引っ張ることにした。歌詞のニュアンスは、ポケットいっぱいに入った言葉ってこと。ポケットが言葉でいっぱいだ。僕の好きな曲に似たタイトルがある笑。YMOの「ポケットが虹でいっぱい(Pocketful of Rainbows)」。原曲はプレスリーですが、僕が知ってるのはこちらなので…

ということで、タイトルは「Pocketful of Words」とした。

ここまで苦労した曲を、埋もれさせます。
やり方は簡単。宣伝しない。8/6に投稿したのは「TOKYO6の日」ということなのだけど、それもSNSにはあげない。一つ失敗したのは、ニコレポに動画投稿のお知らせが出るようにしてたこと。気づいて慌ててオフにした。

8/6 22:55現在、思ったほどは埋もれてくれてない(再生数68)けど、それでも再生数は平均よりも断然少ないと思う。再生数に対するいいね数はそんなに多くないけど、リピートしてくれた方がいらっしゃるんだろうなとポジティブに受け止めたい。なにより、宣伝も何もなく投稿した曲を聞いてくださり、いいねまで押していただけた方には感謝しかない。しかし、どうやって曲に辿り着いたのだろう?。全曲チェッカーの方かな…。巡回の際にいいねを押したので、もしかしたら押し返してくれたのかもだけど…。そこは迷ったのよね。巡回でいいね押したら、たどってきていただける可能性もあるだろうし、それでは埋もれることにはならないし。でも、巡回してていい曲だなって思ったら応援してあげたいしね。そこは割り切っちゃった。多分僕が押しても、それはOne of themでしかないし。たどってきていただける可能性は少ないとも判断した。

1週間で作った曲なので、荒さはある。それでも苦労もしたしチャレンジもしたし、お気に入りになった。このまま埋もれさせるのは不本意なので、少しずつ長い目でお披露目したいと思う。