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『千両役者』22年W杯欧州予選 Group.A~ポルトガルvsアイルランド~

 皆さん、こんにちは。シルジャベです。ついに始動した『欧州予選アーカイブ化』計画、強い気持ちで臨みたいと思います。

【両チームのラインナップ】

ポルトガル×アイルランドスタメン

前語りはさておき、早速両チームのラインナップを確認して参りましょう。上側がアウェイのアイルランド、下側がホームのポルトガルです。
 ポルトガルは現在、2勝1分でグループ首位に立っています。主将のロナウドを筆頭に、個人の攻撃的なスキルが非常に高いチームとなっています。この試合のベンチにはアンドレ・シウバゴンサロ・ゲデスも控えていますし、他にもペドロ・ネトやジョアン・フェリックスなど多士済々。中盤にもルベン・ネべスジョアン・モウチーニョが出番を窺っています。その一方、最終ラインの守備強度には課題もあります。カンセロゲレイロはいずれも攻撃的なサイドバックであり、堅固さは両センターバック、とりわけルベン・ディアスが多くを担保している状況です。対戦するチームは、間違いなくこの点を突きたいはずです。
 相対するはアイルランドは現在、連敗スタートで勝ち点がまだ得られていません。国際試合成績を確認すると、大いに苦戦している様子が垣間見えます。直近の14試合で1勝6分7敗となっており、個人的なイメージとはやや乖離している具合でした。その1勝も決して強国とは言えないアンドラとの親善試合であげたものですし、本大会出場に向けての正念場を迎えています。

【前半】

 前半キックオフです。戦前の予想通り、ポルトガルは4-3-3の布陣で臨みます。対するアイルランドも5バックとこちらも既定路線。アイルランドは後5枚+前5枚のような組織編成で、前に関してはポルトガルの動きに合わせて高さや立ち位置を調整している様子でした。顕著だったのは、アイルランド9番イーダーによる『アンカー消し』です。とりわけ前半は、ポルトガル6番でアンカーを務めるパリーニャとのランデヴー状態でした。アイルランドはアンカーを消しながらミドルブロックを組み、ポルトガルの最終ラインに対してはそれほど強いプレッシャーを掛けなかった印象です。
 話は移りましてポルトガル側。出ましたよ、ベルナルド・シウバの列落ち&キャリーが。筆者はアーセナルファンなのですが、この光景を見ると謎の頭痛に襲われます。ベルナルドにとっては常套手段と言ってしまえばそれまでなのですが、この試合では判断が早かったですね。なんと開始40秒ほどでもう落ちていました。アンカーへのマークを察知するや否やの動き、ちょっと怖かったですね(本音)。

ベルナルドの列落ち

 そうこうしていると、アイルランドが自陣ゴールキックからのビルドアップに失敗。エリア内でボールを奪ったブルーノ・フェルナンデスがPKをゲットしました。長いOFRを経て原判定は覆らず、キッカーはロナウド。これをアイルランドGKバズーヌが汚名返上と言わんばかりにナイスセーブ!試合の均衡は保たれました。
 前半からポルトガルがボールを保持しながら進む試合展開になっている中、アイルランドではFWの21番コノリーが存在感を放ちます。2000年生まれの21歳で、所属しているブライトン(英国)でも一定の出場機会を得ています。この試合におけるアイルランド攻撃の軸は、コノリーの突破とイーダーの献身でした。左サイドに位置取り、攻撃に絡むカンセロの裏を執拗に狙います。ポルトガルは最終ラインが背走させられた際に脆さが垣間見え、コノリーの対応には手を焼いていました。
 前半は凡そここまで書いた形で推移していきました。アイルランドはセンターバックの20番オシェイが負傷交代するアクシデントがあったものの、低めのライン設定で自由なポルトガルの攻撃を跳ね返しました。それでもさすがのポルトガル、27分にカンセロのピンポイントなクロスからジョタのヘッドがポストを叩くなど、高い個人の資質からチャンスを窺います。
 そしてこのまま前半が終わるかと思われた追加タイム、再三奮闘していたコノリーの抜け出しから得たコーナーキックをセンターバックの5番イーガンが沈めてアイルランドが先制に成功します!基本的に守勢に回っていたアイルランドにとって、セットプレーからの先制点というのは非常に大きなものでした。

【前半総括】

 ここで前半終了。以下に私がリアルタイム視聴時に残した総括メモを記して後半に移りたいと思います。

アイルランドは地味ながら堅実で、ローラインで守りスペースを許さないよう奮闘。守勢に回る時間帯が長いので、心身の消耗にどこまで耐えられるのかが勝負を分けるか。負傷で交代枠を1つ使っているのもどう響いてくるか。ポルトガルはカンセロ・ブルーノ・ベルナルドらが自由な動きで穴を見つけようと試みる。個々のスキルの高さからチャンスをいくつか作るも、アイルランドが慣れてきた印象。ただ、押し込むことは出来ているので試行回数を増やしてスペシャルな選手に決定機を届けたい。コノリーに再三裏を狙われているので、そこのケアを怠るとまた思わぬ失点を喫する危険性も孕んでいる。

【後半】

 勝負の後半がキックオフ。ポルトガルは15番のラファ・シウバに代えてアンドレ・シウバを投入。ロナウドを左サイドに配し、右にジョタが移りました。対するアイルランドは交代を行わず、前半よりもさらにラインを下げ5-4-1に近い形となりました。この試合後半の大勢については、正直前半の部分に書いた通りです。攻めるポルトガルを跳ね返すアイルランド。後半の試合展開は、さながら全てが追加タイムかのような様相。ポルトガルがアイルランドの壁を打ち破れるのかが焦点でした。
 ポルトガルはジョアン・マリオやゴンサロ・ゲデスらアタッカーを投入、終盤にはサイドバックを削って猛攻に出ました。それでもアイルランドの集中力は見事なもので、特に自陣エリア内でのクリアは非常に迫力がありました。私がイメージしていた『闘えるアイルランド』の姿が、そこにはありました。
 とはいえ、守勢一辺倒でさすがのアイルランドも披露の色が濃くなってきました。コノリーとイーダーがちらほらとボールを押し返すも、単発に留まります。72分にはそのコノリーが足を痛めた様子でマクリーンと交代、状態が気掛かりなところです。
 さて、コノリーが交代したアイルランドはさらに攻め手を欠くこととなりました。後半当初からの目標であろう『ウノゼロ』を成就させるべく奮戦します。
 ポルトガルは最終的に72%のボール保持率を記録したように、とにかく攻撃を続けました。個人スキルでサイドを抉り、中央に侵攻したロナウドに届ける。さながら国を挙げて『英雄』の到来を待ち望んでいるかのようでした。

 そして、その刻は訪れます。

 迎えた89分、右サイドをカンセロと攻略したゲデスのクロスに合わせたのはクリスティアーノ・ロナウド。ここまで再三のシュート試行が不発に終わっていたポルトガルの巨人、ついに降臨しました。この得点で代表通算110点目を記録したロナウドは、一国の代表における得点数で世界最多になりました。チームの窮地を救った殊勲の一撃に彩りを添えました。
 落胆の色を隠せないアイルランドですが、それでも最後の力を振り絞ってポルトガルの猛攻を跳ね返します。後半の追加タイムは5分、もう間もなく試合終了という局面まで至りました。

 そして迎えたラストプレー、右サイドからジョアン・マリオのクロスボール。届きました。ロナウドの頭に。

 この時点で、私がマッチレビューに添える副題が自動的に決まりました。『千両役者』。これほどロナウドに相応しい言葉は他にないでしょう。はっきり言って試合を通した貢献度は高くなかったロナウドですが、ここぞの場面で仕事をこなすスター性はやはり唯一無二。脱帽です。

【後半総括】

 前半同様、リアルタイム総括を記して締めたいと思います。

どうしても攻め手に欠けるアイルランドは、後半の頭からリードの死守を選択。ポルトガルのスキルフルな前進に手を焼くも、ゴール前は意地でも守り通した。このまま終えられるのかと思った矢先のメシア降臨は、不憫としか言いようもない。もっとも、ボールを握り攻撃を続けたポルトガルが勝利したことは妥当とも言える。前半にも書いた通り、自由を得た攻撃陣の動きは見ていて面白い。ただ、守備の面を考慮するとボールが保持できないような相手との対戦は苦労しそう。かつて『塩漬け』でEUROのトップを掻っ攫った粘り強さをどこまで発揮できるのか。今後が楽しみだ。

【気になった選手】

 今回のマッチレビューシリーズでは恒例となる予定の企画です。両チームからそれぞれ『気になった選手』を取り上げて参ります。

①アーロン・コノリー(21歳・ブライトン)

コノリー

 この試合において、アイルランドの攻撃を最も牽引していたのがこのコノリーです。左サイドから子気味良いドリブルとスピード感溢れるスプリントでポルトガルの守備陣を脅かしました。得点関与こそなかったものの、アイルランドの先制ゴールは彼の突破から得たコーナーキックによるものでした。2019年の初招集以来まだ出場は8試合ですが、今後主力としてチームの看板になり得る選手だと感じました。所属チームではまだレギュラーとしての地位を確立できていないですが、母国でも確かな才能を持つスター候補生として期待されているようです。

②ルベン・ディアス(24歳・マンチェスターシティ)

ディアス

 ポルトガルからはこの漢を選出。中央にドンと構える鉄の番人、ルベン・ディアスです。かつては高齢化に悩まされていたポルトガルのセンターバック陣ですが、彼の台頭と成長で一気に頼もしくなった印象です。この試合でもアイルランドの速攻をことごとく封殺し、ポルトガル守備陣においては欠かせない存在になっていることを認識しました。もちろんそれは所属しているマンチェスターシティでも同じこと。先日行われたUEFAの表彰でも、ディフェンダー部門で最優秀選手賞に選出されていました。納得しかない。ていうか、まだ24歳になったところなんですね。それは嘘だと言ってほしかった。マジかよ。

【試合結果】

2021.9.1
22年W杯欧州予選 Group.A 第4節
ポルトガル 2-1 アイルランド
【得点者】
ポルトガル:ロナウド 89' 90+6'
アイルランド:イーガン 45'
【警告】
ポルトガル:ロナウド 90+7'
アイルランド:ヘンドリック 10'
                          オシェイ 33'
                          コノリー 45+2'
                          ドハーティ 56'

 今回のマッチレビューは以上となります。無事にDAZNのアーカイブが1週間残ることも確認できましたし、ここからグループAの全試合をお伝えしていくことになります。拙文ですが、どうか読んで頂けますと幸いです。ここまで見てくださった皆さん、ありがとうございました。また次回のレビューでお会いしましょう!

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