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『消化不良』22年W杯欧州予選 Group.A~アイルランドvsアゼルバイジャン~

 皆さん、こんにちは。シルジャベです。この挨拶もそろそろ板に付いてきた頃、いかがお過ごしでしょうか。かく言う私はといいますと、深夜にブツブツとメモを取りながら欧州小国の試合を見ることにある種の快感を覚えています。ふふふ。

【両チームのラインナップ】

アイルランド×アゼルバイジャンスタメン

 早速ラインナップの確認から参りましょう。下段がホームのアイルランド、上段がアウェイとなるアゼルバイジャンです。両チームとも中2日で予選を戦っている者同士と、日程的には互角です。
 まずはホームで迎え撃つアイルランド。負傷が懸念された21番コノリーですが、なんとか間に合った模様で元気にスタメン入りしました。同じく負傷交代したCBの20番オシェイは欠場で、最終ラインは人員の調整が予想されます。前節からの変更は2選手で、10番パロットと11番マクリーンがスタメン起用されました。ちなみに、アイルランドの公式Twitterによるとコノリー・イーダー・パロットは若手三人衆のように扱われているようです。年齢も19歳から21歳と若く、また3選手とも本籍はプレミアリーグと期待を背負うのも頷けます。この試合ではどのようなケミストリーを生み出してくれるのでしょうか。

 対するアウェイのアゼルバイジャンは、前節から3選手を入れ替え。予想は4バックでしたが、形としては上記の5-3-2が基調でした。注目は、私もピックアップした8番のマフムドフ。いわゆる『小国に1人いるタイプのマジシャン』として、攻撃のタクトを振るう役割が期待されます。
 勝ち点の状況を整理しておきましょう。ここまでの3試合、なんと両国とも3連敗中です。特にアイルランドの苦戦ぶりには、思わず目を覆いたくなるものがあります。今後に望みを繋ぐためには、両国とも勝利がマスト。さながら生き残りを賭けたデスマッチの様相を呈しています。

【前半】

 前半開始です。アイルランドは戦前の予想通り3バックでスタート。シンプルに前線の個性を活かしたい意向があったかと思います。その甲斐もあり、21番コノリーと9番イーダーが存在感を放ちます。対するアゼルバイジャンも予想通りの5-3-2で、前の5枚は多少の調整を施しつつ立ち位置を取りました。20番のオゾヴィッチが調整担当だったでしょうか。序盤の戦いにおいて、アイルランドは中盤と大外の繋がりを作れていました。特に、WBのドハーティとCBのコールマンが顔を出せる右サイドが攻撃の中心でした。方やアゼルバイジャンですが、相変わらず(と言っては失礼かもしれませんが)前進手段に苦労していました。ビルドアップの糸口では悪くない感触でしたが、そこから先に再現性が見出せていませんでした。攻守の一体化に四苦八苦し、アイルランドが自由を得るシーンが多かったです。
 立ち上がりから主導権を握ったアイルランド、出足が鋭くトランジションの強度は高かったです。ただ、自陣に撤退した際の守備は若干の怪しさを見せ、下がり過ぎだったりボールプレスが甘かったりといったシーンも見受けられました。この点が、後に手痛い代償を支払う原因になったように思います。
 さて、不穏な伏線が敷かれたアイルランドですがCFのイーダーの出来が素晴らしかったです。ポルトガル戦では鳴りを潜めていましたが、この試合では好印象でした。大柄な体躯ながらしなやかなスプリントを見せ、中盤のサポートに降りる器用さも兼ね備えています。まだまだ20歳の若武者、今後大きく育ちそうな気配。
 そうこうしている間に20分が経過しました。アゼルバイジャンは中盤が最終ラインを意識的にサポートするようになって落ち着いてきた印象です。アイルランドが3トップだったためアゼルバイジャンの3バックは窮屈そうでしたが、8番マフムドフを筆頭に降りる動きが酸素を送り込みました。22分には7番のアラスカロフが左サイドからカットインし、エリア手前からファインシュートを放ちます。これはアイルランドGKのバズーヌもファインセーブで応え、得点を許しません。再現性はやや薄いものの、中盤に良い形でボールを付けられた際には活気のある前進ができていました。相手を空転させる一工夫があれば、もっと面白いチームになれるかもしれません。特に増やしたいのが、最終ラインから相手の間に立った中盤に刺す縦のパス。通った際には雰囲気のある前進ができていたので、惜しまれる部分です。
 攻勢に出たいアイルランドと落ち着きつつあったアゼルバイジャン、割合としては6:4でアイルランドの前半だったかと思います。とりあえずこれで終了だな…と思った矢先のこと。試合が動きました。
 迎えた前半追加タイム、左サイドからマイナスのこぼれ球を拾ったアゼルバイジャン8番のマフムドフが、エリア手前左でボールを得ます。アイルランドはなぜかボール保持者へのアプローチが著しく甘く(本当に著しいので気になった方は是非ご覧ください)、空白の時間が流れます。マフムドフ自身も判断に迷っていた様子でしたが、エリア手前の中央まで運べてしまいました。ここでやっとアイルランドの圧力が機能するも、振り抜いた右足から放たれたシュートを防ぐには至りませんでした。ゴール左へ鮮やかな軌道を描いたミドルシュートは、GKのバズーヌをあざ笑うかのように突き刺さりました。ラストプレーでの先制劇、試合は風雲急を告げました。

【前半総評】

 今回もまた、リアルタイムな感想をそのままお届けしたいと思います。書けなかった時は後からまとめているのですが、できればホヤホヤの感覚を伝えられるのが面白いかなと思っています。

アイルランドは相手の力量差もあるが、前節よりも良い入りを見せた。9番イーダーが躍動し、コノリーとの相性は良好な模様。もう1人の若武者パロットは、あまり目立たない前半だった。前半を通していくつか決定的なチャンスを作り出し、それでも先制を逃したのは痛恨と言ってよいだろう。トランジションの強度は悪くないものの、ミドルブロック以下まで引いた際には人がいるだけになっているシーンもチラホラ。対するアゼルバイジャンは前進の手段に苦しむも、ふと中盤が良い形で前を向いたときは面白い攻撃ができていた。少ないチャンスを活かした先制点は値千金の一撃であった。攻撃の力量を考えると、虎の子の1点として死守したい展開か。

【後半】

 先に選手交代に出たのはアイルランド、21番のコノリーが下がります。前節にどこかを痛めた様子で交代していたコノリーですので、前半だけの出場には一抹の不安が漂います。代わって入ったのは15番のホーガン。ポジションはそのまま左WGです。アゼルバイジャンは交代も陣形変更もなかったです。
 後半開始早々、右サイドまで流れたホーガンが好機を演出。シンプルなクロスがエリア内に届き、17番のモランビーがフリーでヘッドも枠を外しました。このシーンでも見られるように、アイルランドは17番のモランビーが後半の元気印でした。それはもうめちゃくちゃ元気で、ボランチにも関わらずしばしば前線をガン無視しながら相手GKまでプレスを掛けるくらいです。55分にはそんなモランビーが弾丸のような競り合いを見せ、アゼルバイジャンGKのマゴメダリエフと交通事故。いや、これはカードで当然。めちゃくちゃ抗議してたけど。
 アイルランドは前半消えていたパロットが中に入る場面を増やしたようでした。右サイドにはドハーティがいて優位性を発揮できるので、理に適った動きです。ただ、それでもパロットは中々に厳しい状態で、若手三人衆の中では控えめな印象になってしまいました。
 試合展開としては、徐々に接触が増えてきた印象。60分を過ぎた頃から、ファウル覚悟の厳しい当たりが両チームに続発します。そんな中、62分に前半から目立っていたイーダーが惜しいヘディングシュートを放ちます。落下点に入るのも巧く、ターゲットとしての汎用性を見せつけます。63分には不発に終わったパロットが下がり、同じポジションに12番ロビンソンが入ります。ウエストブロム(英2部)での活躍も記憶に残る選手ですね。対するアゼルバイジャンは3選手を一気に投入。陣形は変わらずも、フレッシュな面々を活かしてリードを守り切る狙いがあるでしょうか。
 そしてここから展開は膠着して参ります。75分以降は書くことが少なくなりました。ホームでの勝利を狙うアイルランドは前掛かりに攻めますが、その反面アゼルバイジャンに背後を使われてカウンターを浴びるシーンも散見されました。そして85分現在、シュート本数はアイルランド18本対アゼルバイジャン10本と結果として打ち合いの形になっています。
 そして迎えた87分、アイルランドがコーナーキックの流れからダフィーのヘッドで同点に追い付きます。時には前線に上がり勝利への執念を見せていたダフィー、その思いが実を結びました。
 さぁここから勝利を目指したいアイルランド、最後の猛攻………とはなりませんでした。中2日ということもあって限界も近かったか、特に決定機も作れず試合はそのまま終了しました。両者にとって、ある意味ではネガティブな痛み分けとなりました。

【後半総評】

 リアルタイムの感想と、勝ち点状況を少し触れておきます。これで両チームとも4試合を消化して1分3敗と、本大会出場は絶望的です。前評判からしてアゼルバイジャンは仕方がないところがあるものの、アイルランドは一体どうしてしまったのでしょうか。最近の代表戦績を見るに、一過性のものではなく慢性的に苦しんでいる様子です。かつては大舞台でも印象的な活躍を見せ日本にも密かなファンが多いチームですし、今後の復活に期待したいところです。

ホームのアイルランドが執念とも言えるドロー。はっきり言って勝ち点3を取らなければいけない試合だったように思うが、それでもギリギリで追い縋ったところは士気にプラスされるか。イーダーとコノリーが前線の要と見て間違いないが、コノリーの状態は大丈夫なのだろうか。プレータイムに制限が掛かっているようだと厳しいか。一方でアウェイのアゼルバイジャンは、勝利まであと一歩だった。良い形での攻撃はあったものの、やはり単発で終始してしまう点が惜しまれる。これは他の力が劣るチームにも見られる傾向なのだが、守備と攻撃を連動させ良い形を持続可能なものにすることに苦労することが多い。やれることをやろうとするひたむきさは好材料なので、あと一皮も二皮も剥けてほしいチームだ。

【気になった選手】

①アダム・イーダー(20歳・ノリッジ)

イーダー

 試合は引き分けということで、先にホームのアイルランド側から選出。記事内でも何度か名前が出たイーダーにスポットを当てます。所属しているノリッジでも途中出場ながら経験を積んでいる若武者は、屈強さとしなやかさを兼ね備えた大型ストライカーです。アイルランド代表にはユース年代から選ばれ続けていて、将来を嘱望されているのだと窺い知れます。クラブでも代表でもまだまだキャリアは浅いですが、大化けの予感を漂わせています。

②フィリップ・オゾヴィッチ(30歳・カラバフ)

オゾヴィッチ

 アウェイのアゼルバイジャンからは、中盤で奮闘していたこの選手をピックアップ。国内の強豪カラバフに所属するオゾヴィッチは、トップ下や中盤セントラルを主戦場とする選手です。今季リーグ戦では17試合10ゴールを記録しており、得点への嗅覚も備えています。攻守のリンクアップに苦しむアゼルバイジャンでは中々目立つシーンが増えませんが、8番マフムドフ共々中盤を支える屋台骨になっています。ユース年代では出生地のクロアチア代表としてのキャリアを積んできたこともあって、確かな技術の持ち主です。マフムドフほどの活躍はできていませんが、今後の予選で輝く資質は十分にある選手だと感じました。

【試合結果】

2021.9.4
22年W杯欧州予選 Group.A 第5節
アイルランド 1-1 アゼルバイジャン
【得点者】
アイルランド:ダフィー 87'
アゼルバイジャン:マフムドフ 45'+1'
【警告】
アイルランド:モランビー 56'
                          ブラウン 90'+5'
アゼルバイジャン:クリヴォチュク 67'

 今回のレビューは以上になります。ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。これにて第5節は終了、第6節の2試合を持って小休止に入ります。あと少し、精一杯振り絞ります。それではまた!

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