ネタバレあり映画感想[001]大怪獣のあとしまつ


補足:
本記事はムカっぱらが立った勢いだけで書かれています。ムカっぱらがたったのは私が好きな「サイエンス・コメディ」と「巨大特撮」の貴重なおいしいネタを雑に扱われたからという一点に対してであり、ただの私怨です。記事をみてやろうという酔狂な方は、色眼鏡がかかっているという点をご理解の上でご覧いただきますようお願いいたします。(自己弁護)

大怪獣のあとしまつ(2022)

監督・脚本 三木聡
出演 山田涼介、土屋太鳳、濱田岳ほか

目次
1.はじめに
2.作品の印象
3.私が思うよかったところ
4.私が思うわるかったところ
5.まとめ

1.はじめに
戦いが終わっても世界は続く、切り取られたスペクタクルの後には、地味なあとしまつが待っているというところに焦点を当てたのが、本作「大怪獣のあとしまつ」でした。このタイトルを聞いた時、私の頭の中に一番に浮かんだのは「空想科学読本 著:柳田理科雄」です。作劇上の都合で作り出された荒唐無稽な描写を、現代の科学的知識から眺めて、笑い飛ばそうという趣旨の本であります。ですから、この作品のタイトルをみたときに、私が想像したのはシニカルでナンセンスなサイエンス・コメディだったのですが、悲しいかな期待は裏切られてしまったのです。本記事はその顛末を簡単に記録に残しておくために書かれています。

2.作品の印象
結論から言えば、「大怪獣のあとしまつ」は決して面白くない作品ではありませんでしたが、手放しに褒められる作品でもありませんでした。本作品は巨大な怪獣が駆逐され、その無惨な死体だけが残されたところからはじまります。怪獣も有機物なので、放っておけば腐りますから、その”ごみ処理”に関わる顛末こそが本作の一本大きなストーリーラインです。そこに山田涼介の抱える秘密、土屋太鳳の秘めた恋心、濱田岳の野心からなる三角関係、死体処理を巡る政府の政治劇というサブストーリーが絡み合って映画は進行していき、最終的に物語は驚きの結末を迎えます。主人公が「デウス・エクス・マキナ」と叫んで光の巨人に変身し、怪獣を彼方に運び去って、物語は唐突な結末を迎えるのです。

3.私が思うよかったところ
出演陣を経験豊富な俳優で固めているだけあって、各々の演技は非常に見応えがあります。主演の山田涼介は非常に颯爽としていてカッコいいし、オダギリジョーは一匹狼のプロフェッショナルを見事に演じ切っています。ところどころには非常にいい画もあって、人によっては感じ入る部分もあるかもしれません。

4.私が思う悪かったところ
ここからは私が思う悪かったところです。非常に主観的かつ感情的な評価になっているため、あわない方は読まないことをお勧めします。
4.1 不必要なキス
この映画の主人公パートでは不自然なまでにキスシーンが乱発されます。冒頭で土屋太鳳と濱田岳のキス、中盤で濱田岳と不倫相手のキス、終盤で山田涼介と土屋太鳳のキス。私はキスシーンは演出として否定はしませんが、ここまで乱発されては食傷気味にもなりますし、演出の意図がわかりませんでした。強いて言えば、望まないラブシーンを強要する圧力への当てこすりに感じた程度です。
4.2 不自然な下ネタ
この映画の政治パートでは不自然なまでに下世話な下ネタギャグが乱発されます。それもどちらかといえば低俗かつ幼稚な内容で聞くに堪えないものです。政治腐敗の表現としては陳腐すぎますし、こちらも演出意図がわかりませんでした。
4.3 鼻に突く自嘲
私が最も許せないと感じるのはこの点です。
本作では冒頭のシーケンスでデウス・エクス・マキナという単語が印象的に挿入されます。しかも、ご丁寧に「強制的に作品の幕を下ろす存在を示す演劇用語」という解説のセリフまで入れて。勘のいい視聴者なら、おそらくこの時点でこの映画にきな臭い匂いを感じ取ることができますし、結末の予想もつくかもしれません。この映画は、人類側がとりうる選択肢がすべてなくなり、追い詰められた状況で、主人公が「デウス・エクス・マキナ」と叫ぶことで光の巨人に変身し、諸悪の根源であった怪獣の死体を宇宙へ運び去るシーンで結末を迎えます。簡単に言えば、打ち切りエンドです。唐突にエンドロールが始まり、さらにエンドロール中に「次回作乞うご期待(予算半分)」という嘘予告を挟みます。おそらく、制作側の精一杯の抵抗と自嘲だったのでしょうが、私としてはこれはやってほしくありませんでした。たしかに、ビッグバジェットはスポンサーや周囲の意見に左右されて思うように作品を作れないところはあるでしょうが、マジメな内容にするならふざけて欲しくはなかったですし、ふざけた内容にするならそちらに振り切ってほしかった。少なくとも俳優陣は各々真剣に演技をしていたのに演出、編集が自嘲的になったことで台無しにされたと感じられる部分が私にはうけいれられない部分でした。真実はどうあれ、私はそう感じたということです。

5.まとめ
恐らく、制作陣は思ったように映画がとれなかったのでしょう。これは想像にすぎませんが、構想段階ではB級コメディ映画になる予定だったのではないでしょうか?随所に挟まれる下らないギャグシーンにその片鱗がみえたと感じます。そう考えれると、主人公パートのキスシーンをはじめとした投げやりな演出も腑に落ちるのです。とはいえ、私としてはこの映画は嫌いではありません。他ではできない映画体験をさせてくれたということだけは確かだからです。たぶん、劇場でぽかんと口を開けてエンドロールを眺め、終わった後に呆然として笑ってしまうような経験は当分の間はできないでしょうから。それだけに冒頭で「デウス・エクス・マキナ」という結末のネタバレがあったことには、幻滅せざるを得ないのですけども。ひっかけるなら、徹底的にやってほしかったですね。

といったところで、「大怪獣のあとしまつ」の感想でした。

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