ネタバレありの映画感想[002]すずめの戸締り

新海誠監督2022年の最新作"すずめの戸締り"
一言でいえば新海誠流ロードムービーでした
九州の片田舎に住む女子高生がひょんなことから家を飛び出て、寄り道しながら東北まで。自らのルーツを探す旅に赴くという主軸に対して、ボーイミーツガールや大震災を絡めて上手に料理してありました

以下では私がいいなと思った演出などを備忘録的に書いていきます

1.ボーイミーツガールなのに男の影がない
 今作がそれまでの作品と大きく違うと感じたのはヒロインである宗像草太を実に上手く蚊帳の外に置いていたなというところです。私はこの話の主軸は”すずめの自立”にあると考えたので、寄りかかれる男の存在が出てこないようにした、序盤で草太が椅子になってしまうという脚本は非常にうまいなと感じました。すずめが男にキスしてても相手が椅子なら心のオタク君もムキムキしないし、人間に戻る終盤にはすっかり草太君にも感情移入しているので嫉妬より祝福の気持ちの比率が大きくなっていたんじゃないでしょうか。

2.すずめの動機付け
 私は物語を自然に動かすのに重要なのがキャラクターの動機付けだと考えています。普通に考えれば、閉鎖的な地方の女子高生がいくらイケメンでも初対面のヒッチハイカーについていくのは現実味がないですよね?でも、物語ではそれを必然にしなくてはならない。すずめの戸締りでは、主人公が震災孤児で真の意味では叔母とも家族に慣れていないという点から、向こう見ずな行動をとっても不自然でないような構造になっています。物語の幕開けではすずめの人となりがわからないので、すずめは突飛な行動をとっているように見えるのですが、話が進むにつれて境遇がわかってくると納得できるという構造になっています。序盤はすずめの突飛な行動がフックとなって、物語の展開に期待を持たせ、後半はすずめの動機に理解が深まり感情移入できる演出と構成は非常に巧みだったと言えるのではないでしょうか。

3.いい男、芹沢
もう一ついいなと思ったポイントをあげるなら、いいチャラ男芹沢君。後半は芹沢君がいてくれたおかげで重くなりがちな展開をいい塩梅に中和してくれていました。交通機関がない被災地への交通手段提供、それまで描写が少なかった草太側の人となり、叔母さんのメンタルケア、第三者から見た主人公たちに対する評価の代弁と一人で何役こなすんだよという便利さ。そのうえ、存在が邪魔になる終盤では車の事故で自然に退場してくれるという舞台装置要素。懐メロの選曲でジブリオマージュを示すのは流石にあからさますぎる気もしましたけど、わかりやすくていいんじゃないでしょうか。

4.まとめ
というわけで、"すずめの戸締り"はとってもいい映画なので映画館でみましょうね


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