焼肉の流儀
オッさんにもなると、高い焼肉を食べることがたまにあります。
高い......まぁ、高いわけです。
国産とか黒毛とか和牛とか神戸とかシャトーブリアンとか熟成肉とか。
その金額には正しい理由があるのでしょうが、小市民な僕は「この肉一切れで、牛丼何杯分......」と換算してしまいがちです。
――小市民ってか、貧乏性ですね。
さて。
僕が大人になって驚いた事の一つに、こんな風習がございます。
「いい大人は焼肉の際に米を食べない」
これを聞かされた時は、僕は目上の人に対して「は?」と素のリアクションを呈してしまい、生温かい目で見られてしまいました。
いやいやいや、なんなん。
焼肉に米。それはもう、運命の恋人なのでは??
別れ難く、離れ難く、そばにあって当然のディスティニーコンビネーション(?)なのでは?
とりあえず白米食べさせて。
そんな内なる獣の咆哮を嘲笑うかのように、その日は本当に誰も米を食べずに、少量の希少部位肉をそっと食べて終了しました。
せめてキャベツくらい焼かせろと思いつつ、僕は〆の牛テールクッパを独り占めしたのでした。
あれから数年。
まぁ理屈は分かりました。
歳を重ねると脂が胃にもたれるので、米を食べずに、少量の肉をゆっくり食べる......のが丁度良いのでしょう。
だけど僕は未だに不思議なのです。
いい大人は、焼肉の際に米を食べない。
これは、地域的及び社会的には限定的な風習なのではないかと。
高級肉を日常的に、そして遺憾なく食べられる人たちを仮にセレブと呼称しましょう。
そのセレブ達にアンケートを取ってみたい。
どちらがマジョリティで、どちらがマイノリティーなのか。教えてくれ。
――焼肉の際、米を食べますか。食べませんか。
少なくとも僕は確実に食いますね。
高い肉を食べる事が幸せなんじゃない。
満足することが、幸せへの直行便なんだ。
おなかすいた。
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