ボージャックホースマン、諦めてください

Netflixアニメ「ボージャックホースマン」のシーズン1を観た。人と話したくなる。他の人は誰に共感するのか、誰に腹がたつか、どの台詞が印象に残ったか…。

私は今のところボージャックに移入する。ダイアンのことも分かる。ピーナッツバターのことはわからない。

観ながら『誰かボージャックを救い出してくれ。セックスじゃなくて、過去を一緒に振りかえって向き合ってくれ。』『何がどうならボージャックを助けられるんだ』とぐるぐる考えていた。

厳しいかもしれないけど、ボージャックの中で答えはもう出ている気がする。妄想を見たとき、スヌーピーのキャラクターに「人は思い通りにならないわ。心を開いて、親切にしなきゃ。」と言われていたでしょ、あれはボージャックの深層心理の声だと思う。

分かっているんだけど、変わりたくないし、言ってしまえば面倒くさい、疲れる。そんなのより一発逆転、運命を変えてくれる一人に出会って、なんならさっき出会ったこと人がその人ってことにして、幸せってことにしたい。そんな感じかな、と思った。

「その人」は現れません。ボージャックの過去を全部追体験して、理解してくれて、欲しい言葉を欲しいときに言ってくれる人。自分が「その人」になるしかないよ。

ボージャックの過去もちらっとだけ出てきたけど、ぎゅっとして撫でてあげたいね。よく生き延びたね。あの両親に育てられたにしては、頑張ったと言ってあげたい。

それでもここからは。ボージャックは50代。両親のせい、友人のせい、才能のせい、恋人のせいにしていてもいいんだけど、ぐるぐる回って苦しくても、もう少し楽になっても、周りの人はあまり関心がないんだよね。ボージャックが苦しくても楽でも、周りの人は共鳴しない。

私は少し考えて、ボージャックが助かるには、ボージャックが取るべき手はボージャック自身の手なんじゃないかと思った。他者に愛を求めて、減っていくよりも、ボージャック自身が自分を絶対に助けてやる。俺が俺を何としても幸せにしてやる。って思うことが始まりなんじゃないかと思う。

今までも、ボージャックは下手ながらも自分を助けようとやってきたんだけどね!!!分かる。人に好かれたいよね。

ダイアンが、ボージャックではなくピーナッツバターを選ぶのもとても分かる。ダイアンとボージャックは似てるんだけど、ダイアンは諦めがついている。過去にもらえなかった愛を頂戴、穴を埋めてください、っていう感じがない。

ピーナッツバターは、ダイアンの孤独を理解してなさそうだし議論もできなそうでダイアンと趣味も違うけど、優しいんだよね。いい人。ボージャックに共感はするけど、一緒に生きるならピーナッツバターを選ぶかも。

私たちなんとかやってきたんじゃないですか!?ダイアンもボージャックも、もっとこうしてほしかった、こうならよかったっていう足りなさを抱えながら、なんとか間違えまくりつつ頑張ってはきましたよ、と認めてあげたいよ。生きているんだから!これは傷の舐め合いか?かもしれない。

人が人にあげられるものって限られているでしょう?私も、お母さんのためだけに人生全部をあげられない。誰かパートナーを見つけたとしても、自分の時間がほしい。いつも一番目の恋人は私で、二番目が他の誰かであってほしい。

ボージャック「俺が彼女に利用されてるって言いたいのか?」
ダイアン「あなたも彼女を利用してる。彼女はファザコン。」
この会話で、私はファザコンの自覚が芽生えた。

私もボージャックと同じ。「家」が欲しい

ボージャックが自分の駄目なところを見つめて、言葉にして目の前の女の人に話しているとき、かわいいと思ってしまう。それがボージャックには良くないのかも知れないけどね。『可哀想な俺を愛して』って声にまんまと乗っかってる。

シーズン1の最終回で、ボージャックがダイアンに「君に好かれたかった。」って言ったシーンが好きだった。ダイアンが「わかってる」って返してくれたのも有り難かった。ボージャックここで手を打とうよ、人生で好かれたいと思える人と会えた、変わりたいと思わせてくれる人と会えた。

ボージャックが欲しいのはお父さんとお母さんからの愛。「頑張ったね」の一言。それを諦めよう。手に入らないんだよ。ボージャックの両親は世界に二人きりだし、ボージャックが生きているだけで許してくれないならね、ボージャックが楽しいのを喜んでくれないなら、もう何をしても許してくれないよ。過去にもらえなかった愛による穴を埋めてくれるものも、無いよ。

穴は一生、心にあるけど、穴を視野に入れないことはできる。穴の無い次元にいけるときもある。そうしているうちに穴は埃を被っていたりする。両親のことは、両親がどうにかすることで、ボージャックがやらなくていい。夢に実家が出てくることもあるでしょう、寝酒しないと眠れないこともあるでしょう、動悸、女の人に甘えたい、怒鳴りたい。それでOKと言ってあげたい。ボージャックは本当はどこに行きたい?

余裕がある時に振りかえってさ、ボージャックがほしいものはなにか、どうなりたいか、何が悲しかったか、考え直してさ。自傷行為みたいなデートが減っていくとうれしい。

ボージャックはダイアンに「実家なんて帰らなくていい!」って言ってあげれるのにさ。人には言ってあげれるのに。自分にも言ってあげてよ。ママからの電話、もう出ないでいいよ。

こんな風に考えられるのはアニメだからで、現実私の前にボージャックみたいな人間が現れたらとても背負えなくて、私は逃げると思う。人一人の心って重いから、「持って」と言われても持てない。私はいい人間じゃないし。

私も誰かと生きたいけど、自分を殺したり減らしたりしたくない。自分を好きなまま誰かと一緒に生きたい。どんな考え方なら、どんな相手となら、一緒に生きられるんだろうね。

ボージャックがトッドのロックオペラを手伝っているときね、ボージャックは活き活きしていたよ。ワクワクして楽しそうだったよ。

人の心は操作できない。過去に欲しかった愛は貰えない。昔の過ちは消せない、許してもらえない。一生抱えて生きていくしかない。でもそんなボージャックだからこそ見れる景色があると思うよ。話せる話があると思う。涙が出るほど分かってもらえる瞬間も、誰かのことが分かる瞬間もきっと来る。そう信じて、諦めて、温かいお風呂に浸かって、明日の朝御飯を用意して、できるだけふかふかの布団で寝てほしい。

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