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出会った頃から彼は協調性があり初対面の人にも臆することなく無邪気な笑顔を見せていた。私にだってそうだ。緊張感はありつつも私が気持ちよく話せるような空気感を纏いつつも彼の色を出してきていて。それはとても驚くほどに安心できて初めてじゃない気がしていた。もう3年前になるだろうか。私は年下の男が嫌いだった。ただ年下というだけで甘えていいと思っている男が嫌いだ。私と同じだからか、自分のそういう一面が嫌いだったからかもしれない。彼は年下で敬語を使うけれども時々男を見せ私を魅了した。彼は人を素直に受け入れ、認める。彼を知るうちに段々と心を開き彼のまっすぐな目を見るうちに惹かれていった。



彼の友達の中にアパレル会社で働く男の子がいる。誰がどう見ても格好良く、それでいて人当たりもいい。だが私は格好良いだけの男が嫌いだ。私の中の偏見でしかないが格好のいい人は自分の格好良さに甘えて努力もせず顔だけで生きていると思っている。実際そういう中身がない人間はそこら中にいる。私は昔、女というだけで男達から勝手に査定され彼らの中の点数をつけられイケると思われ見下され女というフィルターだけで見られることに嫌気をさしていた。勝手に選ばれ、声をかけられ、馴れ馴れしく触ってくる男が嫌いだった。そういう男は大抵顔だけはいい。中身すっからかんの自分が格好いいというだけの自信だけで性的に寄ってくる男共が嫌いだ。


彼に話を聞いていた初めの頃は偏見でしかなかった。警戒心丸出しでガードを固めようと準備をしていたくらいだ。だが彼が友人と会う頻度が増え彼は友人に会うのが楽しみで大切で友人らの話をいつも聞かせてくれていた。それは友人らが彼の事を大切に思ってくれていてそう接してくれているから彼は無邪気に私に話すのだろうと確信した。私は彼に好意を持って大切にしてくれる友人を大切にしたい。初めて友人に会った時、感情が昂り彼らにありがとうと伝えると彼らは自分達の方が彼に感謝していると伝えてくれ、一夜を終えた。

今日はその友人の話をしよう。

その友人は人との距離を保ち自分のペースを崩さないように自分を大切にしている人だなと思っていたし今も思っている。私もガサツに人のテリトリーに入られるのが苦手なのもあり徐々に彼を知り彼の友達というフィルターをいつか取りたいと思っていた。彼は空気の作り方がとても上手い。誰も何も傷つかず心地よい時間を過ごせるのも彼が纒う繊細さと面白さと柔らかさとまるでカニクリームコロッケのような、ただのコロッケではなくカニクリーム。カニの鋭さとクリームの滑らかな感じ。そうそう頻繁に食べるものでもなく。でも外側は硬そうで噛めばサクッとした後に滑らかなクリームが口の中で溶け合う。あの感じ。私は彼を格好のいい人というフィルターでは見ていない、最初から。だからこそ中身を知り彼がどういう人なのか知る必要があった。私が勝手に持っていた偏見を覆すような人なのだと知り途端に心を開いていく自分がいた。誰もサクッとまず食べようとしなければ彼の本質は分からない。


彼も彼で、自分の格好良さだけで寄ってくる女を毛嫌いしていた。自分の中身も知らずに見た目だけで媚びてくる人達を客観的に見て冷めていたのだろう。昔の私と同じだと思った。私は彼に偏見を持っていた事を恥じた。彼を知らずそういう私の中の価値観で決めつけていた事は私が女というだけで査定され彼らのストライクゾーンに勝手に入れられ関わられてきた事と全く同じ事だと思う。決めつけていた事に自分の浅はかな考えを恥じた。


親しき仲にも礼儀あり
長い付き合いでもガサツな人は嫌いだ。私は基本人を嫌いになったりしないが嫌いな人はいる。だがその分懐けば何でも良くなるのは昔からそうだった。



私もずっとアパレルで販売員をしてきて副店長までして苦労やどうしようもない事や自分の思うままに事が運ばない事はもう分かっている。彼は時に真面目な話をする。その話がとても好きだ。ゆっくりと、言葉を選びながら感情を込めて話す。彼は穏やかで謙虚で優しい。そして警戒心もある、そんな人だと思う。初めは壁を感じていた頃、彼なりにきっと色々と気を遣い接してくれていたんだろうと思う。そしてそれは私の彼の事を愛し、とても大切に思っているからだと私は分かっている。彼の彼女という、フィルターの中で彼も彼なりに彼の友達という立場の中で。


私の彼に聞いた。その友人が私のnoteを読んでくれている事を知った。とても意外で驚いた。私は嬉しくて嬉しくて泣いた。やっぱり彼が関わる人たちはとてもいい人ばかりで、彼が人を好きで彼の周りは彼をとても大切にしている。でもそれは彼が周りを大切にするからだと思う。平面上ではなく人それぞれ芯があり殻を破り上手く芯をつく。彼のそういった人を疑う事なく興味を示す所が大好きだ。ご飯屋さんに行っても必ずどこでもチェーン店でも店員さんにご馳走様でした、美味しかったです。というところや私の友達や知り合いにも話をしてくれる所がとても大好きで。愛を感じる。人に愛を感じている人は他にいないんじゃないかとさえ思う。彼にはいろいろな友人がいる。人との関わり方が上手くて。


でも彼は、彼の周りの友人がnoteを読んでくれていたり私の話をしたりしてくれている事に関して私の事を凄い人だと褒めてくれる。普通友達の彼女なんて興味なくない?と。それは私が彼の事を大切にしている事が友人に伝わってるからだと思う、いつもありがとうなんて言ってくれる。泣けてくる。私が思うに彼が私を大切にしている事が周りに伝わっているから周りの人が私の事を気にかけてくれたりするのではないかと思う。

友人はnote読んでる事を伝えてくれた。とても嬉しかった。私の等身大のような飾らない文面が好きと聞いていた。直接は聞いてないが読んでくれてる事がとても嬉しかった。正直このnoteは私の心の中のようなもので、裸を見られているかのような恥ずかしさもある。日記のような、そんな感じ。


友人と会うのが久しぶりで、嬉しくて2人きりで話した。その時間は今までとは違う空気だったと思う。今までのような壁がなく、私自身を知ってもらえた気もする。太陽の下でリラックスして話していた。私は彼が大好きで、彼の笑顔をこれからも引き出したい。彼の中に私は入れただろうか。分からないがそうならいいな。彼の友達というフィルターはもうない。彼自身を知り関わっていきたい。



人と人の心の繋がりは目で見えない分心で感じ空気で感じるものだと、肌でわかり合うものだと。
言葉でも体温でも伝えられる事は沢山あるが目を見て目の奥底に秘めた光の強さを常に感じていたい。


彼が私を愛してくれているように私も彼を愛しているし彼が大切にしているものは私もそれ以上に大切にする。


だが時に彼の彼女というフィルターで見られることが寂しくもある。だからそこに入り込んでくれる人は私にとっては大切で。入国を許可した人には懐いてしまうたちなのだから。私は彼と一緒にいて気づく。人が好きだが警戒心があるのはどこかで傷つきたくないから。でも彼はいい意味で人に期待してないし自分が関わりたいように関わっている。私はその辺不器用で、一定の距離を保ちたいと思う人とはずっとそうなる。もっとフランクに関わりたいと思う時もある。でも適当な繋がりはしたくないのだ、人間の愚かな部分を知り得たくない。


ストックの花のように、永遠に愛情を感じ彼らを信じ私を信じて。私達は永遠に心を通じ合わせていく。


枯れていくストックの花。永遠の美。
花は枯れていく時が一番綺麗だ。最後まで美しく朽ちていく。


私はもう偏見はない。彼の個性や放つ空気感、柔らかさ謙虚さ優しさ堅さ、は全て彼そのもの。そんな彼に馴染む私の彼はまるで何にでも合うソースのようで。


ストックの花のように、彼らは生きている。
まっすぐ地面に足をつきながら力強く咲く花のように。

フィルターをかけられ、朽ちないようストックの花に水をやり生きていこう。今日から毎日水をやり太陽を浴びよう。明日も自分らしく生きるために。誰かのフィルターにかからないように。芯を持って。地に足をつけよう。


自分だけの花を咲かせて。


「filter stock」
愛情の絆 
2023.4

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