指定席や特観席をリーズナブルにしすぎてはダメ【やってはいけない108のファンサービス・第2回】※転載

※移転前の転載です。

昔はそれでもよかった

 公営競技に限らず、興行には座席に対してお金を取るという方法がある。一般的には指定席、と言われるものだ。なぜか公営競技の場合、一部を除いて「特別観覧席」通称「特観」と呼ぶことが多いのだが、やってることは一緒で有料席ってことだ。

 コンサートやスポーツなども含め、観戦、観覧する行為にお金を発生させるのは、基本的な収入源となる。

<観戦、観覧に伴う収入を得る方法>
・入場料(立ち見という扱いがこれと同一である場合も多い)
・有料席(指定席、特観席)

 ただ、公営競技の場合はレースを見せるというスポーツ興行的な面もありながらギャンブル興行による収入が大きかったため、入場料や座席料を主収入としてあまり検討されてこなかったと言える。

 有料席の概念がなかった訳ではない。ただ、有料席を設けていた主たる理由は、観戦収入のためというよりも「大口客が快適に感じて常に来場しやすくするため」であったといえる。大前提としてはやはりたくさん打ってもらいたいことが主眼だったわけだ。

 しかし、時代は変化し、ギャンブルとしての収入経路が多様化した。場外、電話投票、ネット投票。必ずしも、打つためにレースを開催している場所に行くことが必要条件ではなくなってしまったのだ。

 客側から見ればギャンブルをしたいと思った場合、実際に見て楽しむ、現金で場外で楽しむ、電話やネットで気軽な投票を楽しむ、というように選択肢が増えたという喜ばしい状況であるわけだ。

運営側はついついタイプ分けしたがる

 すると、運営側ではこんなファンサービスへの思考が生まれる。

「お客には『(開催レースを現地で見る)本場派』と『場外派』と『電話・ネット投票派』がいるのでそれぞれ個別にファン層を考えてファンサービスをしよう」と。確かに購入経路ごとにファンサービスを分けることは必要ではある。

 しかし、改めて客側として考えてみてほしい。このサイトを見てくれてる人は少なくともネット投票を主体とする購入経路の人が多いとは思うが、あなたは全く本場開催や、場外開催に行かないでしょうか?

 そんなことないですよね。程度の差があれど、都合がついて、興味がある開催があれば、レースを見に行ったりしますよね。逆に本場開催に通うオヤジでも、常にレースをやってる時だけ行くタイプ、レースをやっているところを渡り歩くタイプ、場外発売も含めて場所を変えないタイプ、ネット投票と併用しているタイプなど、行動の比率はさまざまなはずなのです。

たまにしかレース場に行けない層が満足できない

 私の競輪のホームである京王閣は、いまほとんどの有料席が500円である。以前はバック側で200円の有料席があった。もちろん、屋根付き、空調付きで席とテーブルが確保できることはサービスだし、それが安いのは嬉しいことであるのだが、正直、それだけである。この程度のサービスなら、混雑する開催でなく、天候が良ければ外でふつうに楽しめる状況であれば利用しないレベルのものだ。

 ちなみにロイヤル席3000円というのもあるが、ワンフロアに1列席がずらっと並んで余裕がある、という程度だ。専門紙1紙と、ビール2杯がついてくる。サービス品の値段が実質半分と考えると座席料は1500円程度になってしまう。

 京王閣にこれ以上の一般的な有料席はない(厳密には来賓席があるのだが、個別に場側と相談するものになる)。

 この状況で、私のような(離婚はしているものの)仕事をしていて、子供もいて、たまにしかレース場に行けない人間は、京王閣に行くことを選ぶでしょうか。どの席を選んでも、子供がと快適に過ごせるような席はないし、仮に1人で行くとしても、これでは家でネット配信を見ながらネット投票していたほうがはるかに快適です。

 京王閣の有料席には、一定数の常連が多くなるのは必然でしょう。いつも通える人なら、快適な椅子のみでも価値を求めるでしょうから。

有料席のサービスで稼ぐやり方はすでに他ではある

 京王閣のような椅子保証だけを目的とした有料席の考え方とは逆に、付帯サービスのある高額席を用意している公営競技場は増えている。大井競馬に行けば、高級料理とボックス席で団体で利用するのが前提の席から、外でのバーベキュー、ほどほどの値段のボックス席、もちろん普通の椅子有料席もある。

 ボート場でも江戸川なら、ボックス個室に種類が複数(ペア席、カラオケつき、完全個室、開放型ボックス席・・・)あって、利用方法によって選択できる。

 たまにしか来ないお客さんを相手にしたって儲からないじゃん、って思う人は、是非考えてほしいことがある。

 ①毎日1万円買う本場に通う常連
 ②月2回程度高級指定席で座席料やらサービスを利用して、投票以外に1日1万円、本場での投票金額が1日2万円、後は本場開催日以外はネット投票で月総額3万円投票するお客

 どっちが収益性が高いのだろう?

 ①の場合、投票売り上げで利益となるのは総額の約25%から諸経費(賞金や開催経費)など引いた額だ。本場で売れた売り上げなので場外手数料等はもっていかれない為、仮に諸経費まるまる無視して25%が利益だったとしよう。本場日数が15日だったとして。

 本場投票1万円×0.25×15日=37500円の利益
 (①のお客が使った月間総額は15万円)

 ②の場合、大事なのは有料席の売り上げはギャンブルの売り上げと違って、サービス経費を引いたら利益になるということ。サービス経費が25%だったとすると(ネット投票だと場外手数料が10%分追加でかかるとして)

 座席料・サービス料1万円×0.75×2日
  +本場投票2万円×0.25×2日
   +ネット投票月間3万円×0.15=34500円の利益
 (②のお客が使った月間総額は9万円)

 概算のレベルだし、実際の経費はちげーよって当然あるのはわかっています。ただ、投票券の売り上げから場側が利益となるのは絶対に25%を上回らないが、大事なのは有料席を含めたサービスによる収入は、その枠から外れることなのです。

 ターゲットを絞って席を用意するのは間違いとはいいませんが、今や投票形態の多様化からさまざまなスタイルの客がいる状況ですから、有料席サービスも多様化して、なかには高級コースを提供するやり方があっても良いのではないかと思うわけです。どうですかねえ。

(ただし、本場開催日数が極端に減った競輪の場合は、日数面でその方針による享受が受けづらい問題があります。この点は次の機会に…)

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