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KEIRINグランプリ2023を現時点で考える

並びがわかる前に考えるメリット

昨年好評だったヤツの2023年版です。

今年のKEIRINグランプリメンバーが決まりました。
古性優作
山口拳矢
眞杉匠
佐藤慎太郎
松浦悠士
清水裕友
深谷知広
脇本雄太
新山響平
(補欠)松井宏佑

並び想定・コメントは後日の共同記者会見でわかるのですが、現時点で状況を整理しておくことで、発表されたコメントから並び方の意義や作戦を読み解くヒントになります。

近畿の並びは前後不明?

普通に考えれば近畿は脇本-古性のはずなのですが、一部で古性が前も有りうるかもという声が聞かれます。今年3月21日のG2ウィナーズC決勝で古性-脇本の並びでした。ただ、この並びになった理由が脇本は万全ではなく、古性を前にしたほうがよいと考えたから、というものでした。

しかもレース結果は、古性と新田が絡み新田が落車(再乗8着)、古性は4着入線も失格。後ろの脇本は内から松浦に掬われ、外踏み続けるも2着という結果でした。ただ、結局仕掛けるタイミングや位置取りの判断においては古性が前々に踏んでいたからこそ脇本は2着だったもので、さすがは古性の立ち回りといったところ。そもそも脇本は好調でなかったがゆえに、松浦に掬われる前に外を踏めていれば脇本が勝てたように思えるレースでした。

個人的にGPは脇本が前でいいような気がします。単純に別線で先行が有りうるのは北日本と中国ですが、この北日本と中国のどちらかが後手を引くような場面があまり想像できず、なおかつ単騎勢も多いため、単騎相手に争いくらいなら下げる判断も考慮に入ります。それでは結局中団争いをしても、脚を使ったのに5,6番手、という結果も充分あり得ます。そうであれば、中団を狙える古性を前に据えるメリットが例年よりかは低いほうだと思えるのです。

ただ、それでも古性が前になる場合は、それ相応の理由が考えられます。そうです、脇本選手はオールスターの落車による肋骨と肩甲骨の骨折および肺気胸の影響で、11月9日の四日市記念まで4節欠場していました。

なおかつその四日市記念でも2日目までは爆発的な時計を出していたものの3日目から時計が急落、準決勝こそ突破したものの、決勝は9着大敗。その後の競輪祭でも予選は良かったのですが、決勝は後方8着と、節の最終日に最上位とのレースで節序盤のスピードが維持できていないことから、現時点では完調ではなさそうに思えます。

ですが、節の前半では完調時並みの時計を叩き出していました。GPは単発レースです。完調ではなかったとしても、どちらかといえば節では後半でイマイチなだけという課題でしたので、やはり個人的には脇本が前でいいと思ってるのですが、もし並びが入れ替わって古性が前だった場合は、脇本の調子に対する認識が「そういうこと」だと考えられます。でもねえ、完調じゃなくても強いんだよねえ。

北日本は新山-佐藤

一番並びが定まっていそうなのは、北日本の新山-佐藤でしょう。航続距離ならば輪界No.1の新山選手を前にしない理由がありません。ただ、問題なのは北日本が2車であることです。シンプルに逃げた場合を想定しても、3番手が取り合いになって消耗してくれればいいのですが、今年は単騎が多そうな気配で、3番手に自力のある(単騎)選手がすんなり入ってしまい、B前に捲りを直撃されてしまう可能性があります。

佐藤慎太郎選手にB前に番手捲りを打つ自力を望むのは、さすがに厳しいです。3角まで至れば牽制の仕事を期待できますが、2車であり、単騎も多い状況では、Bまでに誰も迫ってこない状況になり辛いのです。

ただ、新山選手は前回りが想定される選手たちの中で、立ち回り能力は一番厳しいです。前々に逃げるつもりで仕掛けて、逃げることになれば中団縺れに期待するか、誰かが叩いてきて好位に嵌るかあたりが勝ち筋ですので、いずれにせよ「逃げるつもりで」レースをするほうが結果はよいでしょう。捲りに回ろうとすると立ち回り負けして8番手になりかねません。GPの8番手は遠いです。

中国勢は完全に前後不明

昨年清水がSSから陥落したものの、1年で復帰し、ゴールデンコンビで挑む4度目のグランプリとなった。過去3度のグランプリでの並びは、

2019年 清水-松浦
2020年 松浦-清水
2021年 清水-松浦
でした。

ただ、3年とも結局は掲示板にいずれも入ることができず、私は毎年二段駆けをするのではと構えていたのですが……勝負どころで中団以降という結果。そもそも立ち回りの鬼ともいえる中国勢らしからぬ惨敗が続いています。

清水、松浦ともに立ち回り能力が高く、航続距離が約400mというかなり近いタイプ。どちらが前でも、様々な作戦を構築できるのが強みです。ですが、気になるのはトップスピードです。

年々レースが高速化しており、脇本だけではなく距離を短縮した新山や、先日の競輪祭での眞杉など、勝負どころでの1ラップ200mが10秒台の勝負になっているのですが、今年見ている限り、清水も松浦も、自力で1ラップ10秒台を出した記憶がありません。もともと総合力の高さが武器の二人なのですが、グランプリで立ち遅れが目立つ点とトップスピードがわずかに不足している点が、悪い意味で噛み合ってしまっています

それでも、昨年は単騎の松浦選手が、先行3番手の位置を奪うことに成功しています。ただ、守澤選手の追い上げを対応しているうちに前の新田が発進しており追走できなかったうえ、上を近畿勢に捲られてしまいましたが、過去のグランプリのなかで、H時点での比較では昨年が一番立ち遅れなかったのです。

正直、二段駆けをやったとしても、今年の戦績を見る限りは距離では勝負できますが、スピード差では3番手あたりからの捲りに仕留められてしまいそうです。今のところ私には奇策は浮かびませんが、そのヒントは別府記念(12/7-10)の松浦が節間でどういう動きを「試す」かで想像できるかもしれません。

清水が前だと航続距離、松浦が前だと立ち回りが若干アップします。どちらを選択するのか、楽しみです。

ほんとに単騎なの? 深谷と山口拳について

さて、競輪ファンの間で噂されているのが、山口拳矢-深谷知広という連携があるのでは? というもの。

根拠としては山口拳矢の父・幸二が2011年のグランプリで、当時は移籍前だった中部の深谷による先行から、番手捲りを打った浅井康太をさらに追い込んで交わし優勝していたため、親にかわって子の拳矢が恩返し先行をするのではないか? というもの。

ただ、山口拳矢の先行は上位戦だとまともに決まったことがありません。タイトルを獲ったダービーも単騎で中団捲り追込でしたし、普段から山口拳矢の武器は、立ち回りと捲りです。

一応、並んだ場合を考えると、山口拳矢が主導権を取るとしても、1ラップ強までしかスピードは保たないでしょう。ですので、主導権取りが成功したとしても深谷は早めに、下手すればHの時点で番手捲りを打たねばならなくなるはずです。深谷自体は2ラップ踏めますけど、真後ろからの直撃に耐えられるかは怪しいと思います。

また、山口拳矢だけを考えると、ラインの先頭でも単騎でも、立ち回り能力はそこそこです。上手いかと言われるとそこまでではないと思いますが、立ち回り意欲が高い選手です。好位が取りたい他の選手にとっては、面倒な相手です。ですので、あまり山口拳矢と位置取り争いしたくない、とか、それどころじゃない、と放置されると、あっさり好位を回り、直線の長い立川で強襲するかもしれません。それこそ、父と同じように

深谷が単騎の場合は新山並みに立ち回りはうまくなく、新山より厳しいのは単騎であれば9番手を回ってしまう危険性がかなりあります。さすがに単騎9番手で勝てるほどグランプリは甘くありません。正直、普通に考えれば買い辛いのですが、車券に絡むとしたら、ノーマークで誰かの捲りの乗った場合です。なので、誰かの捲りに本命を打つなら、そこに付ける形で押さえておくのが基本だと思います。

単騎慣れが好循環 眞杉匠

関東では長年SSをキープしていた平原康多がついに陥落し、入れ替わるように眞杉匠がSSとしてグランプリに出場することになった。おそらく単騎となる公算が大だ。

しかし、関東4車で吉田拓矢の激走を番手発進して勝たせてもらったオールスターから打って変わって、競輪祭では単騎で好位からBで口空けた簗田の位置に入り込み、番手捲りの松井宏佑の後ろからスピード差で仕留めて優勝したように、それぞれで違う踏み出しの判断をG1決勝で2度も間違えなかったこと、そして競輪祭では立ち回りを見せたことで、なんでもできちゃうかもしれない怖さを持つ選手となってしまった。

好位が欲しい選手が複数いる可能性が高いグランプリのため、競輪祭のようにうまくいくかはなんともいえないが、どんな展開を予想するにしても消すわけにいかない近況である。

個人的になにより怖いのは、山口拳矢と違って、先行選手としても一定の能力を持っていることである。たとえば狙いたい好位の位置が並走になった場合でも、ペース次第では多少脚を使って踏み上げ、位置を求められる「タテ」を持っていることだ。そのため、赤板J付近で変にペースが上がらなかったときは、一旦単騎で前を切るなど、展開をかき乱す動きまで考慮せねばならないかもしれない。

もちろん、そこまで立ち回りをするかはわからない。眞杉の基本は先行選手だからである。ただ、展開予想をするときに眞杉が存在することで、薄い可能性を考慮せねばならないということだ。

踏まえて共同記者会見を楽しもう

というわけで、共同記者会見前の展望記事でした。今年も共同記者会見に4年連続で競輪記者じゃない記者として参戦します。レポート配信をお楽しみに。

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