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ガールズケイリンの今後を考える際の注意点・後編【令和競輪どうしましょ4】

前編【令和競輪どうしましょ3】では、ガールズケイリンにおける選手数や開催バランスについて取り上げました。この後編では、具体的にSNSなどでファンから提唱されている改革案について、基本的には「選手数増」を優先しないとマズい理由を述べていこうと思います。

代謝をやめれば選手が増えるのか

ガールズケイリンのファンでも選手が増えたほうがいい、ということを理解している人は多いとは思います。その際に槍玉に挙げられるのがガールズでの代謝制度です。

現状の代謝制度は1期で3人の代謝が行われます。1期は半年ですので、1年で6人、ガールズケイリンから姿を消すことになります。前編でも取り上げたとおり、毎年約20人の養成所入所があるのですが、この代謝制度のために1年での選手増加は

入所20-代謝6+α(別途の引退や養成所を卒業できない人など)=13人

ということになっています。ガールズでの代謝制度をやめれば、選手は約19人近く増加するはずです。

ですが、代謝制度のもつ意味を無視するわけにはいきません。全レースでほぼ最下位着の7着しかとれない選手が現役に残ることは褒められたものではないです。脚力がないため回避行動がとれず、事故の原因になる場合もあるのです。

もちろん、選手登録されてストレートで代謝されるのは私も理不尽だと思います。ストレートは対象外にする、産休明けは考慮する、代謝の人数を減らすべき、などの代謝制度のルールを変えるのは私も賛成なのですが、代謝をやめろ、というのは別の話だと思ってます。

また、仮に代謝制度をガールズで廃止した場合、選手増のペースは19÷13=1.46で、約1.5倍になりますが、実際にはこの数字より増加率は少し下がるでしょう。最下位着を取り続ける選手が、収入面などを考えて自ら現役を断念する場面が増えるということが想定できるからです。

なにが言いたいのかというと、前編でも話したとおり、開催あたりのレース増加や2層制のような開催形態を拡大させるために必要な選手数の確保を目指すうえで、代謝の人数を減らしたり廃止したりする程度では、10年先までかかるペースを7~8年に短縮できるかもしれないほどしか効果がないです。

根本的な養成所入所人数、ひいては受験者数がずっと横ばいである以上、まずやるべきなのは、しつこいようですがガールズケイリンのさらなる普及と認知、そしてそれにともなう受験者の増加を促すことです。いくら稼げるのか、産休や育児のケアはあるのか。女性による組織的プロスポーツである以上、環境の準備や説明をすることが、他の女子プロスポーツと差別化するうえで説明すべき点であるはずです。

クラス分け問題

ガールズケイリンは現状、L級1班のみの1クラスで開催されています。しかし、これはレース競技としては異常な状況です。動力源に成績がつく公営競技(競馬・競輪)のなかで、クラス分けが行われていないのはガールズケイリンだけなのです。

想像してください。ディープインパクトと未勝利馬が一緒に走った場合や、脇本雄太選手がチャレンジクラスの選手と一緒に走った場合を。100回やって100回、ディープ・脇本選手が勝ちます。負けることがあるとすれば、重度の体調不良や怪我、事故といったトラブルが発生したときのみでしょう。

そのため現状のガールズケイリンでの一般戦には最上位クラスが出走するとほぼ完全優勝してしまします。2023年10月12日現在、年間勝率が5割以上の選手は16人います。

これでも、初期に勝率9割台が複数人いたころから比べれば落ち着いてきたほうです。選手も増えて、レベルも上がってきたために上位同士で混戦になって、最高勝率の水準が下がってきたのだといえます。ですが上下の差が大きいことに変わりがありません。1クラスしかないのですから当然です。男子でSSとA3が一緒に走るなんてことはないのです。

ですので、競技としてシンプルにガールズもクラス分けを目指すべきなのは当然なのですが、これも今すぐに実行するのは大変難しいことなのです。

現状191名(矢野光世選手が2023年10月10日に引退したため、前編執筆時には現役192名だったのが1名減りました)をクラス分けしようとすると、単純に半分で割るとしても1クラス100名を下回ります。言い換えれば、2015年~2016年頃のガールズケイリンでの規模を2クラス作るようなものになるわけです。

第17回 産業構造審議会 製造産業分科会 車両競技小委員会 資料3 女子レースの展望 P.3②より

当然、あっせん停止や怪我、産休などで、稼働できる選手は現役選手数どおりではありません。1クラス80人で開催やあっせんをまわす苦労を想像してみてください。いろいろ余裕がありません。欠場があった場合でもクラスが違う選手を追加・補充で呼ぶこともできません。

個人的には今の規模を倍にすることになると考えるならば、選手も倍になってようやく現実的なクラス分けの話ができますが、選手が今の倍になるには今の増加ペースのままでは 191÷13=14.69年 かかります。

私も早急にクラス分けをしてほしいと願ってはいますが、そのためにも先にやるべきは選手数増への対策なのです。制度を先に弄ってはバランスが崩れます

オールガールズクラシック前座問題

これはおまけなのですが、先日行われたG1オールガールズクラシックでは12Rすべてがガールズ開催であった反面、前半6レースは前座戦だったことに批判がありました。

正直、前座をやめてオールG1開催にすることは「やろうと思えば」できますが、個人的にはまだやらないほうがいい、と思ってます。

理由の一つ目は、前後の開催にしわ寄せがでる点です。12R×7名=84選手を1つの開催で一気に集める形になったオールガールズクラシック。そのため、オールガールズクラシックの開催前後3日間で、ガールズケイリンは開催していません

ガールズ選手の半数で、かつ2R制開催の6開催分を一気に呼んだわけですから、こうなるのも仕方ありません。そこは多少しょうがないと思うので、それは別にいいのですが、もしこれでオールガールズクラシックを全レースG1にしてしまうと、ガールズの上位半分を一気に呼ぶことになるため、前後のガールズケイリンの開催がほぼ50点未満のみの開催しかできなくなるのです。

理由の二つ目は、負け戦が悲惨なことになる点です。オールガールズクラシックの全レースをチェックしていましたが、残念ながら中堅クラスと最上位クラスとで、松戸333バンクでも1ラップで0.7秒くらいレースのスピードが違っています。これを勝ち上がりで工夫したとしても、予選は極端な結果になり、節の後半の負け戦のレベルが極端に落ちる危険性があります。51点くらいの選手が前座戦で奮起している姿が担保されたほうが開催は締まったものになると思えます。前座戦、私は面白かったと思うのです。

これも結局は選手が少ないために起こることです。正直、今回の前座問題は、前座戦があることの説明が不足していたことに尽きます

こういうことだと思うのです。わかりやすくすれば済んだ話だと思ってます。私もゆくゆくは12RフルのG1が見たいですが、まだ、そのためには選手を増やさないと番組を弄るだけではむずかしいです。っていうか数を番組でごまかしてポイント制のG1が男子でも増えてしまっているのに、おんなじことをガールズでやってほしくないですね。

余談ですが、そもそもガールズも2R制しかできないからポイント制なのです。大前提として競輪はボートのように連続走数をとることができないので、トーナメントに向いてる競技です。

一旦、今回はこれで締めようと思います。なにか追加でご指摘やご意見あればお気軽にください。なによりも、まずはガールズケイリンの選手になりたい女性を増やさないと、話は進まないのです。

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