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【競輪入門#1】競馬やボートとの違いを理解しよう

競輪がわかってもらえない理由

競輪を説明しようとして、これまで多くの競輪ファンが「玉砕」してきた。競輪の場合、レースの仕組みを説明することに苦戦してきた歴史がある。さらに解説が難しいことによって誤解ともいえる解釈のほうが広まったりもして、尚更競輪という競技の本質をわかってもらえない悪循環ともいえる状態が現状だろう。

だが、間違いなく競馬やボート、オートレースといった日本の公営競技で競技性は競輪が一番単純である。自転車に乗って規定距離の周回コースを走っているだけである。

競馬のように馬、騎手、コースなど多くの要素を理解しなくてはいけなかったり、ボートやオートのように機械的理解をしなくてはいけない、ということが、競輪にはない。

それなのに何故、競輪はわかってもらえないのか。

それはまるで相対性理論のように「常識だけでは理解できず理論で考えるしかない」部分が、たった1つ存在するからである。

ただ人が走るの事と、自転車で走る違い

(参照:なぜ競輪だけ風圧の影響が大きいのか

馬が走る、という動作を少しだけ小難しく書き直す。「馬が1馬力で走っている」実に当たり前のことだが、これは人間が走ることも一緒で「人が1人力で走っている」となる。

ざっくりと書くが、馬と人の違いはいくつもあれど実は筋肉で走っているという点では共通している。筋肉はフルパワーで使うと乳酸がたまるうえ、細かな筋繊維の損傷を伴って「疲労」がくる。そのため、フルパワーで走れる時間には限界があり、少々セーブしたりすることで距離を稼ぐことをする。

そういった意味では競馬も競輪も大体1km以上を走る「中距離戦」であり、フルパワーで走り続けるということはない。どこかでパワーダウンして、規定の距離を走りきるように調整している。ここも一緒だ。

単純に違うのは筋肉量だ。馬は人の数倍もの重量≒筋肉をもつ。走る速さは筋肉だけではない(骨格や蹄などの要素もある)にせよ、単純化するのならば馬が人より速いのは筋肉の量が多いぶんだけ、スピードを出しやすいということになる。馬が最高時速60km(1ハロン12.0がこれ)で走れるところ、人は100mを10秒で走るアスリートであっても時速36kmだ。

だが、競輪は時速60km出ている。馬とほぼ変わらないスピードを出せている理由はもちろん、自転車に人が乗って走っているからだ。

先程のように言い換えよう。「人が1人力を自転車でギヤ変換させて走っている」のだ。つまりはまず、競輪の特殊性を理解するうえで、このギヤ変換して走ったときに起こる事象を理解することが必要となるのだ。

全力疾走できる「時間」は馬も人も同じ

ギヤ変換について起こる事象について理解するうえで1つ大事なことを先に説明しておく。それは、馬も人も全力疾走できる「時間」はほとんど変わらないということだ。

「全力」を筋肉が出力し続けられる時間の限界、これは筋肉で動く生き物として馬も人も実はほとんど変わらない。馬と人の違いは筋肉においてはあくまで「筋肉量」による出力差であって、時間ではないのである。

そして、優秀な競輪の自力選手であれば、時速60km/h以上を維持できる時間は持続時間と呼ばれ、約30秒といわれている。仮に時速60km/hを30秒持続した場合、距離に換算すると500mだ。ただ、時速を60km/hの最低値にしているため、実際はもう少し長い距離を60km/hで走ることができるということになる。

2022年現在、この持続時間の条件で一番長い距離を走れている選手は脇本雄太選手だろう。400mバンク半周を11秒切るタイムで走るため、時速換算すると65km/h超えとなっている。これを600m維持できてしまっているので、約600m近くを全力で走ることができている、ということになる。

この600mという数値に注目してほしい。そう、競馬で600mといえば、上がり3ハロンといわれる3ハロン≒600mである。勝負どころからのスピードを3ハロン維持できる馬は一般的に強いと言われているが、競輪でもそれは一緒なのだ。この距離を全力で走り続けられる選手を自由に駆けさせてしまったら、他は「おいつけない」のである。

そして、この持続時間は能力や衰えで短くなる。ベテランの馬が一瞬の脚に賭けるレースをするのと、ベテラン競輪選手が追込に変わるのは事情として一緒だということだ。

次回はバテの詳細について解説し、より競輪唯一の特殊性を解説したいと思う。

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