見た映画を小学生並みの感想で記録する17/渇き。について

この記事は2019/11/2にAmebaブログに投稿したブログ内容を転記して作成しています。

ブログ書くのサボって気がついたら11月になってしまった。どうしよう。
見た映画について忘れる前にそろそろ書き込んでいきたいと思います。今回書くのは2014年公開の「渇き。」についてです。主演に役所広司氏、小松菜奈氏の両名を起用した作品です。以下アマゾンのページから引用したあらすじ

容姿端麗な優等生の娘・加奈子(小松菜奈)が部屋に全てを残したまま失踪した。元・妻の依頼でその行方を追うことを請け負った元父親・藤島昭和(役所広司)。家族が破綻した原因が自分の性格や行動であることには一切目もくれず、自分の“家族”像を取り戻すことだけを夢想し、なりふり構わず娘の行方を調査する。過去と現在の娘の交友関係や行動をたどりながらやがて、今まで知らなかった娘・加奈子の輪郭が徐々に浮かび上がっていく。果たして父は娘を見つけ出し、あの頃夢見た“幸せな家族”を取り戻すことができるのだろうか?(C)2014 「渇き。」製作委員会

という感じであらすじを見た限りだと失踪した娘を探す物語のように感じられます。原作は深町秋生著「果てしなき渇き」という推理小説だそうです。

ここからは自分なりの感想をば(ネタバレあり)

まずはこの作品で良かったところ、面白かった点について

・登場人物全員が壊れている
→この作品を見終わって真っ先に思い浮かんだ言葉がこれです。主人公である元刑事藤島を筆頭に物語に登場する人物のほとんどが人格や行動が壊れている(もしくは意図的に壊されてしまっている)ように感じました。藤島は娘である加奈子の捜索にあたって倫理的に問題のある行動や言動が多く、離婚した元妻を陵辱に近い形で犯そうとしたり、脅された中でとはいえ簡単に殺しを請け負ったりと僕みたいな一般庶民には理解しがたい行動が数多く描写されています。そして加奈子も表には出ない(内に秘めた)狂気を含んでおり、それが顕在する瞬間の恐ろしさが映像を通じて見えたような気がします。
他にも人を食い物や踏み台にする者や、それらに食い物にされ壊れてしまった者、復讐のために殺しに手を出した者、組織の暗部を隠蔽する者などなど・・・列挙すると中々に強烈な中身ですね。

・表世界と裏世界の近さが現れているように感じた
→この作品では藤島が加奈子を捜すパートと、その3年前の「ボク」と加奈子の関わりを描いたパートの2つの話題を交互に描いています。藤島が捜査を行なっているパートでは陰鬱な描写や薄暗さが強く出ているのに対し、3年前のシーンでは1カット目からアニメーションを使うなど明るさや爽やかさ(開幕から「ボク」はいじめられるが)が前面に押し出された描写が目立ち、この2つのパートが対照的に描かれているように感じました。(本当はどうかわからないが)
後半に進むにつれて3年前のシーンでは加奈子に魅了され、彼女の深淵を覗こうとする「ボク」が少しずつ彼女のいる裏世界に足を踏み入れてきます。この辺りから両パート共に夜のシーンや暗い描写が目立ち始め、時系列の違う2つの話題がリンクしていきます。これは表の世界しか知らない人間が裏世界に引き込まれていく様を観客に擬似的に体験させるための演出のように見えました。それに合わせて表裏2つの世界の距離の近さを表しているようにも感じました。薬物や売春、人殺しなど一般生活で触れることのない物事は実生活の近くにあって、ほんの些細なきっかけで自分の生活の中に入り込んでくるというメッセージ性の表れなのかなと。知らんけど。

・「狂気」を映像として綺麗に演出している
→演出面において人の狂気を様々なアプローチで演出しているように感じました。例えばクラブハウスのシーンでは音楽と映像を共に情報量を多くすることで薬物に溺れた人のハイになっていたりトリップしている様を作り出し(あと単純楽曲が良かった)、藤島が陵辱を働く際には遠くから撮影し音声の情報量を少なくすることで被害者の精神状態を演出しています。多分。各シーンごとの瞬間瞬間の情報量の作り出し方と演出が(語弊があるかもしれないが)とても綺麗でした。クラブシーンでなぜ「でんでんぱっしょん」が使われたのかは謎。

・最後の雪山のシーンの意味合い
→ラストシーンで加奈子の遺体を山に埋めた加奈子の元担任東と藤島が冬の雪山で藤島が加奈子の遺体を東に掘り起こさせるという結末が描かれていますが、この一連の流れを見て「結局何も残らなかった」という印象を受けました。藤島が多くの人間を巻き込み、時には命や尊厳を奪ってきた挙句たどり着いたのは結局虚無だったのではないかと僕は思っています。何も得ず、多くのものを失った彼がこれからどうなるかは作品では描かれていませんが、ロクなものではないことは容易に想像できます。自分の思う理想の家族像を得ようとした彼がたどり着いた先は何もない真っ白な世界(雪山)ってことなんですかね・・・

次に批判的な意見を書こうとしたのですが、特に思い浮かびませんでした。

最後に、この作品では様々な人が抱える狂気が恐ろしく、そして生々しく描かれています。この狂気はきっと誰しもが抱えているものでそれが膨張(?)していないから我々は今の「普通」得ているのではないかと考えさせられる作品でした。ちょっとした要因が発端で裏の世界に足を踏み入れる可能性もあるし、復讐のためにと殺しに手をかけることもありえるんだなと。人間ってこわいね。

おわりー!!!!!

次回は「蛇にピアス」について感想文書こうと思います。

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