見た映画を小学生並みの感想で記録する9/orangeについて

この記事は2019/9/19にAmebaブログに投稿したブログ内容を転記して作成しています。

ΣISAKAです。中学から高校までの間に触れた作品って何故か思い出深かったりやけに記憶に残っていたりするのですが、その中でも高校生の時に読んだ高野苺作の「orange」は読みやすいストーリーの長さ(コミック全5巻)とSF要素を併せた恋愛ストーリーで、高校生の時に読んだ漫画で1番好きな作品でした。
そんな作品を映像化したのが今回感想を書く「orange」です。高校生当時の自分はとにかく漫画原作の実写化を嫌って見ませんでした。今回、折角定額サービスに加入したことだし見てみようと思い今回視聴しました。

以下アマゾンのページから引用したあらすじ

高校2年生の春、菜穂に届いた手紙。それは10年後の自分からのものだった。 書かれていたのは、転校生の翔(かける)を好きになること。翔が1年後には死んでしまっていること。そしてその未来を変えるためにやるべきこと。 初めはイタズラかと思っていた菜穂だったが、書かれていることが次々と起こっていく。なぜ翔を失ってしまったのか?10年後の自分と同じ後悔を繰り返さないためにはどうすればいいのか? 運命を変えるべく、菜穂は動き出す。その先にある、暖かくも切ない<結末>とは―?(C)2015「orange-オレンジ-」製作委員会 (C)高野苺/双葉社

というように原作と同じようなあらすじとなっております。ここからは原作履修済みの人が書く感想。

この作品で良かったところ、面白かったところ

・「青春」を映像として綺麗に切り出せている
→早速映像的な話になってしまうのですが、舞台が高校ということもあり、その中で展開するストーリーと発生する様々なイベントを追体験できるような映像の作り方であったように感じました。これは恐らく高校を卒業してしばらく経過している今見たからこそ感じたものではないかと考えています。多分高校生当時には当たり前の光景に見えた。
例えば後半に出てくる体育祭の場面。盛り上がる生徒達、応援に来る親族の人達、普段と違う表情を見せる皆、普段と違う雰囲気の学校の風景。これら全てはその瞬間を生きている高校生にとっては「当たり前」のものです。ですが、その光景を「その瞬間が過去のものである大人」がいかにそれを再現するかということは非常に難しいものであることは間違いありません。映像制作に携わる人間にとっては当たり前の作業であるかもしれませんが、その光景の再現は恐らく非常に難しいものであると思います。

映像内の雰囲気づくりもとても素晴らしいものでしたが、その他にも「画角」も非常に美術的な印象を受けました。
本編での主人公達の下校中にパンを買い食いするシーンの画角がとても好きです。ごくごく日常的なシーンですが、この中での空間、主人公達の所作、表情の切り出し方がとても良かった印象がありました。

続いて少し批判的な意見について

・もう少し各キャラクターの物語を描いて欲しかった
→この作品ではシナリオの都合上原作からカットされた部分が多くあります。個人的に切って欲しくなかったシーンを上げていきます

まず1つ目は「上田に対して声を荒らげる貴子のシーン」です。
菜穂の好きな人である翔が同じ学校の先輩である上田と付き合い始めてから上田が菜穂に強く当たるようになります。ここまでは描かれているのですが、原作ではこの後に菜穂と軽くぶつかって激情する上田に対して貴子が強く叱責するシーンがあります。これは個人的に必要なシーンで、菜穂の周囲が彼女を心配していると同時に上田に対する不信感が爆発することを描いています。映画を視聴した後に原作を読み直して改めてこのシーンの必要性を再確認しました。

2つ目は「菜穂と須和以外が未来からの手紙を受け取っていないこと」です。
僕としてはこれが非常に致命的で、原作では主要人物(翔以外)全員が10年後の未来の自分から手紙を受け取っています。ですが映画では上記の通り2人しか手紙を受け取っていません。これによって後半の流れに大きな変化が起きてしまいました。原作の後半は「未来の自分から手紙を受け取った5人が翔が生き残る未来のために奮闘する」といった構図になるのですが、これが映画だと「未来の自分から手紙を受け取った菜穂と須和に触発されて残り3人も一緒に奮闘する」という構図に変わってしまいました。少なくとも僕はこのような印象を受けました。原作では同じ立場の人間として同じ役割を担うのに対し、映画版では菜穂と須和が上位、それに追随するあずさ、貴子、萩田という形に変わってしまっています。これだと5人の立場は等しくありません。ここが1番悲しかったポイントです。

といったように菜穂と翔と須和の3人のストーリーに的を絞ってしまったことにより全体のシナリオの厚みが無くなってしまい、それほどの感動を得ることができませんでした。周りの物語あってこそのストーリーなんだなと改めて感じました。

それぞれ長々と書き込んでしまいましたが、僕の映画orangeに対して「映像としては非常に綺麗な作品であったものの、原作のストーリーの良さを押し殺してしまったがためにその良さが薄れてしまった作品」というのが全体の印象です。
映画「バクマン。」の時にも記述しましたが、原作となる作品がある作品を映像に落とし込む際に尺の都合のためカットしてしまうシーンがあるのは致し方ありません。しかし落としてしまったシーンが物語にとって必要な場面であった場合、シナリオは原作から徐々に乖離してしまいます。とある作品では原作と全く違う展開にすることで映像尺に併せて制作するというパターンも見られました。しかしそれでは「名前を借りただけの別作品」となってしまいます。正直それは頂けない。

orangeでは前述の通り原作に限りなく準拠しながらも所々切ってしまった場面があったために本来のシナリオの良さを落とした印象です。改めて原作を如何にリスペクトするか、また如何に原作に忠実であるかという二点が実写化において必要なものであると感じた所存です。という原作厨の意見でした。

おわりー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?