見た映画を小学生並みの感想で記録する18/蛇にピアスについて

この記事は2019/11/3にAmebaブログに投稿したブログ内容を転記して作成しています。

今から7,8年くらい前、当時中学生の僕の周りのマセた人たちが口にしていた言葉「蛇にピアス」と「吉高由里子」。当時は自分の見ていないドラマの話か何かだと思っていたのですが、数年後に映画の話ということに気づきましたが、つい最近まで触れることができずにきました。ということで今回は「蛇にピアス」についての感想を書いていきます。以下アマゾンのページから引用したあらすじ

渋谷を徘徊する19歳の少女ルイは、クラブで知り合ったアマの蛇みたいに割れた舌(=スプリットタン)に心を奪われる。後日、アマに連れて行かれた妖しげな店で、全身に刺青を施し、顔じゅうにピアスのある店長のシバに、舌ピアスをあけてもらう。少しずつ穴を拡張しスプリットタンにするつもりだ。その日以来、彫り師のシバに強い憧れを抱いたルイは、自分にも最高の絵を刻みたいと思うようになる。(c)2008「蛇にピアス」フィルムパートナーズ

という感じでルイ、アマ、シバの三人を中心に物語が展開していきます。原作は小説家金原ひとみのデビュー作で、芥川賞も受賞した作品。ということで感想文を書いていきます。1ヶ月くらい前に見たものなので記憶違いあったらごめんなさい。(ネタバレ含)

この作品の面白かったところ、興味深かったところ

・開幕の一人称視点の映像で物語に引き込んでいく
→作品の始まりが渋谷のスクランブル交差点を歩いているルイの主観映像に始まり、クラブに入っても音が全く聞こえない(ルイがイヤホンをしている)状態が続きます。この一連の展開でルイ特に興味無くクラブに入っていく=特にあてもなく街を歩いていたという構図が生まれているように見えました。
それからクラブで踊っている派手な男性をずっと見続けているうちに彼が近寄ってきて一言ルイに言いますが何も聞こえない(前述の通り)そして二度目でやっと聞こえる一言「スプリットタンって知ってる?」
ここまでのオープニングとも言える展開が情報量が少なく簡潔ながらも必要な要素を登場させており、これから始まる物語へ必要な土台を組んでいるという印象を受けました。こういう立ち上がり好きです。

・ルイが拠り所にした2人について
→あらすじにある通り身体改造を施した派手な若者アマ、そして彫り師のシバの2人とルイは体を重なることになります。アマとはクラブで出会ってからすぐに同棲するようになり、シバとはルイが刺青を入れる計画を立て始めた時からシバの店で逢瀬を重ねるようになります。途中ルイはアマとのセックスに満足していないとも思えるような描写があり、そういった身体についてルイはアマではなくシバに求めているように受け取れました。一方でアマのルイに対しての愛情はまっすぐで深く、その愛情を注いでくれるアマに対してルイは精神的に依存していたように見えます。
この身体をシバに求め、愛情(精神的な部分)をアマに求めるといういびつな人間関係がこの物語での必要な要素の1つであるように感じています。
本来なら精神も身体も1人の相手に委ねるというのが一般的(これについては人それぞれ考えがあるので一概には言えない)ですが、その2つを別の人間に委ねるということは当人(ルイ)は両方満たされますが、委ねられた相手はどうなるか。
アマはルイと同棲して体を重ねていることもあり心体共に満たされているように見えますが、シバは身体だけ満たされ精神的に満たされていたかといえばそうではないように見えました。終盤でアマが死亡し、ルイがシバの店に住むようになってからシバとしては精神的にルイに依存されて満足するも今度は身体が満たされなくなる(シバは相手が苦しむ様を見ないと興奮しない性壁を持っている)という常に空白を抱えているシバに複雑な感情を感じました。

・痛みでしか生を感じられない主人公
→作品終盤でルイが痛みを感じている時にだけ生を感じることができるという描写が描かれます。元々生きているか死んでいるか分からなかったルイはスプリットタンを作ろうとしたり刺青を入れる際の痛みを感じることで自分が生きていることを実感するが、その一方でそれらが完遂してしまった時の喪失感も同時に覚えてしまいます。(刺青を完成してしまった時に酒に溺れてしまう)作中で結局ルイのスプリットタンは完成せず、下に大きな穴が残り未完成のままに終わります。そして最後にルイがスクランブル交差点でお腹を抱えてうずくまるシーンがあり、これは恐らく妊娠を演出したものですが、このラストを見た自分は「様々な痛みを覚えたルイはこの妊娠の痛みを最後まで抱えるのか(中絶してしまうのではないか)、そして妊娠の痛みを覚えた次は死の痛みを求めるのではないか・・・」と思ってしまいました。

・スプリットタンの映像技術が単純にすごい
→これはストーリーと全く関係のない話なのですが、スプリットタンを映像技術で作っている(演者は実際にスプタンにしてない)のですが、映像内での違和感が全くなく正直ビビりました。製作当時の映像技術ってここまで進んでいたのかと驚きました。ルイの舌ピアスも合成・・・?(情報求)

次に少し批判的な意見をば

・特別出演する豪華俳優陣に気を取られてしまう
→この作品では今でも名前を聞く豪華俳優陣が脇役として登場しています。例えばルイのアルバイト先の上司に井手らっきょ氏、アマが殴りかかるチンピラに藤原竜也氏と小栗旬氏、ルイとシバがアマの届けを出すために向かった警察の受付に唐沢寿明氏など超豪華ラインナップが名を連ねています。確かに凄いことですが、彼らが出てくることで物語に没入しているのに彼らに気を惹かれてしまいました。そこまで続いていた集中を所々で切られるのは少しアレかな・・・と。(個人の感想なので悪しからず)

こんな感じですかね。ストーリーについてほとんど触れてないけど見た人には伝わる感じになって気がします。多分。

この作品は今見ることが出来てよかったなと思っています。中学生当時に見たらただ吉高由里子が濡場を演じているところにだけに目がいって作品のシナリオには目が向かなかったと思います。(今そういう経験があるかっていう話は僕が泣くからしないでね)
何にも興味を持たなかった少女が偶然触れた世界に入り込んで始まる一連の物語は醜くも綺麗で、見てる人を引き込ませる物語と演出だったと感じています。いい作品でした。
舌ピはえっち。

おしまーーーい

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