Σ詩ぐ魔

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Σ 詩ぐ魔 第9号

時間割市原礼子(大阪) 時間割が分からなくて 遅刻しそうになって 生徒手帳を探して 時間割が書いてあるページを探しても どこにも書いていなくて どうしよう 数学社会…

Σ詩ぐ魔
2か月前
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Σ 詩ぐ魔 第8号

告白市原礼子(大阪) あなたに謝らなければいけないことがあります 気がつかなかったこと 気にしなかったこと 叱らなかったこと なぜ どうしてと 問い詰めなかったこと…

Σ詩ぐ魔
5か月前
11

Σ 詩ぐ魔 第7号

透明な生活市原礼子(大阪) 透明な時間が過ぎてゆく そこでの生活は透明で見えない なつかしい声をたよりに想像する よみがえる言霊 言葉の力に繋がれてゆく 窓から見…

Σ詩ぐ魔
8か月前
6

Σ 詩ぐ魔 第6号

らせん階段を君が市原礼子(大阪) らせん階段を君が下りてくる 見上げているわたし うれしさにはじける子どものように笑う 君は父親のように優しくほほ笑む ひな鳥が親鳥…

Σ詩ぐ魔
11か月前
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Σ 詩ぐ魔 第5号

いつか行きます市原礼子(大阪) いつかこっそり覗きに行きます 君はそう言ってくれた いつか いつかはいつのことなのか まだ来てくれない いつか いつになるかわからない…

Σ詩ぐ魔
1年前
3

Σ 詩ぐ魔 第4号

リハビリ病棟にて市原礼子(大阪) リハビリ病棟の 南向きの明るい部屋では 失われた機能の再獲得のために リハビリ士たちが日々奮闘している さまざまな理由で放置され…

Σ詩ぐ魔
1年前
7

Σ 詩ぐ魔 第3号

《掲載順は氏名五十音順》 再生市原礼子(大阪) 明日が今日に変り始める時刻 多くの人が眠っていると思われる時刻に 老嬢は眠れなくて独り起きていた 来し方行く末を想…

Σ詩ぐ魔
1年前
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Σ 詩ぐ魔 第2号

********************************** 『Σ 詩ぐ魔』(第2号)目次 一宮川         市原礼子(大阪) 金の卵       …

Σ詩ぐ魔
2年前
8

遙 5号

個人詩誌 5号 本詩誌5号では、詩と音楽との関わり合いについて述べた。今回は余韻について述べたいと思う。 最近「駅ピアノ」や「空港ピアノ」のプログラムをテレビで…

Σ詩ぐ魔
2年前
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Σ詩ぐ魔 創刊号

(掲載順は氏名五十音順) 祖母の大根おろし金相野優子(兵庫) わたしの台所の飾り棚の 一番良い場所に飾ってあるアルミのおろし金は 祖母が使っていたもので台所の柱…

Σ詩ぐ魔
2年前
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「Σ詩ぐ魔」発刊にあたって

令和三年は昨年来のコロナが世界的規模で猛威をふるい、さらに変異種となっては人々を苦しめ不安な事態が続いた。秋口に入ってわが国は幸いにもやや終息の兆しが見えてきた…

Σ詩ぐ魔
2年前
8
Σ 詩ぐ魔 第9号

Σ 詩ぐ魔 第9号


時間割市原礼子(大阪)

時間割が分からなくて
遅刻しそうになって
生徒手帳を探して
時間割が書いてあるページを探しても
どこにも書いていなくて
どうしよう
数学社会生物たぶん
おそるおそる教室の戸を開けると
授業は始まっていた

何人かでかたまって床に座り
なごやかに談笑
紙の器に色水
ストローやお箸もある
よかった間に合った
周りを見回すと
生物の矢野先生
長身の先生のおだやかな笑顔

一時

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Σ 詩ぐ魔 第8号

Σ 詩ぐ魔 第8号


告白市原礼子(大阪)

あなたに謝らなければいけないことがあります
気がつかなかったこと
気にしなかったこと
叱らなかったこと
なぜ どうしてと
問い詰めなかったこと
あなたに謝らなければいけない

何かの間違いに違いない
そんなこと
信じられない
気がつかないふりをした
知らないふりをした
あなたは助けを求めていたのに

わたしは逃げていた
対峙する勇気がなかった
あなたは闇のなかにいたの

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Σ 詩ぐ魔 第7号

Σ 詩ぐ魔 第7号


透明な生活市原礼子(大阪)

透明な時間が過ぎてゆく
そこでの生活は透明で見えない
なつかしい声をたよりに想像する
よみがえる言霊
言葉の力に繋がれてゆく

窓から見えた公園の光景
走り回る子どもをはなれたところで見守る親
お弁当を広げている親子
ありふれた光景を
少しのあいだ並んで見ていた
 …いいですね…

その一言に繋がれた
ありふれているけれども
かけがえのない
そのような日々を誠実に生

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Σ 詩ぐ魔 第6号

Σ 詩ぐ魔 第6号

らせん階段を君が市原礼子(大阪)

らせん階段を君が下りてくる
見上げているわたし
うれしさにはじける子どものように笑う
君は父親のように優しくほほ笑む
ひな鳥が親鳥の後を追うように
盲目的について行きたい

君はらせん階段を上って帰ってゆく
わたしはここに残らなければいけない
片腕をもがれたアバターだから
こころを回復するために訓練が必要
痛いけれど我慢すれば
トレーニングが終了すれば
人間に

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Σ 詩ぐ魔 第5号

Σ 詩ぐ魔 第5号

いつか行きます市原礼子(大阪)

いつかこっそり覗きに行きます
君はそう言ってくれた
いつか
いつかはいつのことなのか
まだ来てくれない
いつか
いつになるかわからないけど
こっそり行きます

君を待っていると
ずんずん伸びてくる青い芽
君の優しい声が聞こえてくる
いつか行きます

昔話にある
お姫様は逃げる男を追いかけて大蛇に変身
大蛇は恋しい男に巻きついてもろともに焼死
そうなってもいい

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Σ 詩ぐ魔 第4号

Σ 詩ぐ魔 第4号

リハビリ病棟にて市原礼子(大阪)

リハビリ病棟の
南向きの明るい部屋では
失われた機能の再獲得のために
リハビリ士たちが日々奮闘している

さまざまな理由で放置され
一本の木偶の棒となった私の右腕は
長時間の手術を経て
しかるべき角度に固定され
リ・ハビリスが始まった

折れ曲がった棒のような私の腕の
機能を回復するため
リハビリ士の指は
私の固まった筋肉をほぐしてゆく

力を抜いて

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Σ 詩ぐ魔 第3号

Σ 詩ぐ魔 第3号

《掲載順は氏名五十音順》

再生市原礼子(大阪)

明日が今日に変り始める時刻
多くの人が眠っていると思われる時刻に
老嬢は眠れなくて独り起きていた
来し方行く末を想うと眠れなくなるのだ
誰かと話したくなった
迷った末に若い友人に電話をかけた

若い友人は若いと言っても古希を過ぎていたが
昼は出歩き夜は疲れて眠るという普通の生活者
深夜の電話に驚いて飛び起きたのが間違いの元
深夜の電話には出るべ

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Σ 詩ぐ魔 第2号

Σ 詩ぐ魔 第2号

**********************************

『Σ 詩ぐ魔』(第2号)目次

一宮川         市原礼子(大阪)
金の卵         大倉 元(奈良)
旅に惹かれて      和比古(兵庫)
ものものしい「者」たち 熊井三郎(奈良)
壁の中に立っている   佐相憲一(東京)
テレビが来た日     阪井達生(大阪) 
玄関          高丸もと子(大阪) 

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遙 5号

個人詩誌 5号

本詩誌5号では、詩と音楽との関わり合いについて述べた。今回は余韻について述べたいと思う。

最近「駅ピアノ」や「空港ピアノ」のプログラムをテレビで楽しんでいる。必ずしもプロでない人が駅、空港などに設置されているピアノを弾く番組である。歌を伴うこともある。心に沁みるメロディーが伝わり、喜びも悲しみも音符となって心に響く。そこには深みのある人生哀歌が詠われている。過ぎ去りしときを思い

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Σ詩ぐ魔 創刊号

Σ詩ぐ魔 創刊号

(掲載順は氏名五十音順)

祖母の大根おろし金相野優子(兵庫)

わたしの台所の飾り棚の

一番良い場所に飾ってあるアルミのおろし金は

祖母が使っていたもので台所の柱神だ

小さい時には早く目が覚めて

台所に行くといつも祖母が居たものだった

いまも朝早く目覚めてうす暗い台所に入るとき

灯りをつけるまでのほんの短い時間に

ふと祖母の姿が見えることがある

いつもわたしのお弁当を作ってくれて

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「Σ詩ぐ魔」発刊にあたって

「Σ詩ぐ魔」発刊にあたって

令和三年は昨年来のコロナが世界的規模で猛威をふるい、さらに変異種となっては人々を苦しめ不安な事態が続いた。秋口に入ってわが国は幸いにもやや終息の兆しが見えてきたが、新たなオミクロン株の出現と急速な拡大に不安は去らない。

この年干支は丑、奇しくも発起人三人(グループ牛)は古希を過ぎての年男である。年の瀬にして新たな電子媒体に基づいた詩誌の発行を試みる。誌名は「詩ぐ魔」、∑(シグマ)に文字のイメージ

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