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パラフィンの浸潤

巻き終わったコイルは、細い線の両端を端子部分にハンダ付けし、4mm×10mmのネオジム磁石を芯に突っ込んで基本的な構造は完成するが、一般的なエレキギターではさらにコイルを溶けたパラフィンに漬け込み、固めてしまうようだ。これは弦以外の振動がコイルを揺らし、ノイズの原因となるためである。パラフィンはキャンドル細工の原料に使われるもので安価に手に入るものであるが、湯煎にしたり少し手間がかかる。今まで作ったPickupはこの工程を省いたので振動が音になって拾ってしまっていた。打楽器のように音が響くのである。今回はこの工程を行ってみる。

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これはPickupの裏表である。裏は細い銅線が出ているのでそれを誤って切らないようにグルーガンで固めた。ケースとの隙間からパラフィンは流れ込んでいく。表側はケースになるが、表面にパラフィンがこびりつかないようにマスキングテープを貼っている。こうすれば取り出して固まった後もマスキングテープを剥がせば綺麗に取れる。端子部分もパラフィンがつかないようにマスキングテープで包んだ。

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今回のために用意した道具類。右下がパラフィンであるがステアリン酸が10%ほど既に混合してあるので、量って混ぜる工程が省ける。左下は100均で購入したタッパー。左上は空気を少し抜くことができる「おひつ」のようなもの。右上は空気を抜くポンプ(手動)。さらにこれらを載せている台は料理などを保温するための電気プレート。温度指定ができる。

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まずはパラフィンを湯煎して溶かす。この写真では「おひつ」のお湯で溶かしているように見えるが、実際はコンロに小鍋でお湯を沸かし、その中にタッパーを浮かべて溶かした。完全に溶けてから「おひつ」にお湯を移し、保温プレートの上で保温している。

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その中に、二つをマスキングテープで繋いだPickupを浸けた。しばらくすると隙間から泡が出てくる。冷めないように「おひつ」の蓋をして、しばし待つ。適当なところで「おひつ」付属の空気ポンプで中の空気を抜いていく。気圧が下がることによってPickup内部の空気が膨張し、さらに出やすくなる。この方法は中の巻線を痛める(断線する)恐れもあるということでお勧めしていないサイト記事も見られるが、市販の高いpickupではないので切れたとしても痛手はそう大きくない(作り直せばいいだけ)。なので、気にせず空気を抜く。

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パラフィンの温度は70度くらいがいいのだが、「おひつ」の底がプレートに密着していないので少し高めに設定した。あまり高い温度はPickupのケース自体に影響(変形)するらしい。30分くらいつけても少しずつ泡が出てくる。これは後で気が付いたのだが、マスキングテープ内に残っていた空気がじわじわ出ているようで、実はあまりいいことではない。この点では空気を抜かない方が良かったのかもしれない。

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頃合いを見計らって引き上げる。この時、水平に上げなければならないのだが(倒すとせっかく染み込んだパラフィンが出てしまう)、二つを繋いでいたマスキングテープが解け、横向きになってしまった。まあ全部が流れ出るわけでもないので、とりあえず冷えるまで待って周囲のマスキングを剥がした。熱を加えたせいか、なんとなく裏面の方が太っているが多分ケースには収まるだろう。問題はコイルはちゃんと繋がっているかどうか。断線していたら、やり直しである。テスターを繋いで抵抗を計る。6.88kΩ(冷えるとだんだん抵抗値が下がる。最終的には6.45kΩくらい)を示しているので大丈夫そうだ。もう一方もほぼ同じ値を示している。

Pickupも出来上がり、ボリュームやジャックなどの他のパーツも揃った。今回も配線に基板を使うが、それもNCで切り出してある。ソルダーレジストやフラックスなどが届けば次の作業に入る。今回のPickupはDevidedではなく、通常の音を拾うものである。ケースに入れてユニットが完成したら、Devidedの実験の続きに入る。

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