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敬愛するチャーリー・ワッツに捧ぐ

2021年8月25日。
この時が来てしまった…敬愛するローリングストーンズのチャーリーワッツが天に召された。
2014年の来日公演を観に行った時、ラストナンバーの「(I Can’t Get No) Satisfaction」を聴きながら「ああ、ストーンズが来てくれるのもこれが最後かもしれないな」と思い、涙が出てきた事を思い出す。
その時感じたことが、本当になってしまった。
食い入るように録画したビデオを何度も見た、初来日公演から31年。ずっと元気でいてほしかったし、また日本にも来てほしかったが、誰にでもこの時は来てしまうのだ。

私がドラムを叩けるようになったのは、チャーリーのおかげといっても過言ではない。
彼の8ビートはスネアとハイハットを一緒に叩かない。左手でスネアのバックビートを叩く時、何故か右手を返すようにハイハットを叩かず静止するのだ。
癖なのか、スタイルの違いなのかはわからないが、「Jumpin’ Jack Flash」でも「Brown Suger」でも「MissYou」でも「Angie」でも、必ず1曲通してそのスタイル。
当時中学生だった私は「あの左手だけになるタイミング…3拍目にスネアだな!」と、8ビートのメカニズムをチャーリーのスタイルで学んだのだった。
人が叩く姿を間近で見たりすればすぐわかることだが、周りにそんな人もおらず、ましてや当時はYoutubeなんてもちろんなかったので、それこそテープが擦り切れんばかりに何度も見た初来日公演のライブ映像で、多くの事を学んだ。
人差し指と中指の間にスティックを挟んでクルクル回す癖もチャーリーの影響。曲の合間、静かに両手でスティックを回すく姿がカッコよかった。

チャーリーはいつもエレガントで、ラフな格好は絶対しなかった。
たとえTシャツ1枚でも派手な色は選ばず、ボトムスもシックで落ち着いていた。
そして、これまたシンプルな、ソールが平らな白くて薄いスニーカー。
ただ、チャーリーと言えばやはりスーツ姿。やや明るめのジャケットで、ネクタイもきちんとしめてプレイする姿も忘れられない。

プレイスタイルもいつもクールで、レギュラーグリップのスタイルを崩すことはなかった。
ドラムはいつも薄いブラウンのグレッチ。1バス、1タム、1フロアタムのシンプルなセッティング。
彼のルーツはジャズだが、ロックで名を馳せてもドラムセットのこだわりはずっと捨てなかったのだと思う。
スタイルも至ってシンプル。安定したグルーヴから8分のスネアのフィルがドライブする。
シンプルながらもインパクトのあるフィルが曲の要所を締める。
ミックやキース、ロニーのパフォーマンスを決して邪魔しない。
思えば、長年の相棒だったベースのビル・ワイマンもクールで落ち着いたプレイヤーだった。

ミックとキース、ロニーがフロントに映るシーンのバックには、必ずチャーリーがいないと絵にならない。
ベースのビルがダリル・ジョーンズに代わっても、それがローリングストーンズの姿だ。
歴史あるバンドのバックを務めるチャーリーは、目立たず、いつもクールにキメるカッコいい「大人」の姿そのものだった。

今年、ストーンズがアメリカでツアーを回ることは聞いていたが、チャーリーが体調不良のため不在だと今日知った。
代役はスティーブ・ジョーダン。NYを代表するセッションドラマー。
彼のプレイするストーンズも見てみたいのだが、やはり寂しさも感じる。
コロナ禍が過ぎたら是非もう一度来日して欲しいけど、そこにはチャーリーはいない。
彼の追悼の意味も込めて、もし来日してくれるなら是非見に行きたい。

天国に着いたら、ようやくブライアンとゆっくり当時のことを話すことができることだろう。
少年の頃に憧れ、ドラムの楽しさを教えてくれたチャーリーに敬意を表して。

心よりご冥福をお祈りします。
R.I.P, Charlie.

※画像はThe Rolling StonesオフィシャルTwitterより。
 チャーリーの誕生日を祝うツイートでした。
 両手でスティックをクルクル回しているところですね。


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