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あ・い・う・えっせい

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#東京

江ノ島の桜、たくあん干し

 田舎者にとって東京の地名ほど非現実的なものはないし、真綿色したシクラメンほど清しいものもない。ここでいう東京とは、「広義の」東京である。テレビでよく見聞きする場所が現実に存在していて、そこに人々の営みがあるなんて夢にも思わない。吉祥寺はゆずの歌で初めて耳にしたし、江ノ島はアジカンの歌でしか馴染みがなかった。御茶ノ水は地名としてではなく、鼻の大きな博士の名前としての知識しかなかった。新宿や渋谷なんて、ゴッサム・シティと同じである。高校を出て上京したての頃、これらの地名が実在す

なすび、ビーナス、なすびーなす

 面白い奴がモテた。つまらない奴より面白い奴の方がいいに決まっている。関西では話せばオチを求められる、という噂をきくが、マイ・ホームタウン岡山でもその傾向はあった。面白くない奴に話す権利はない──大げさに言えばそのような文化の土壌があった。かっこつけていいのはキムタクだけで、我々一般人には、かっこいいことよりも面白いことが求められる。たとえ二枚目の男だって、面白くなければ異性にも同性にも相手にされなかった。  上京したとき、いくつかカルチャーショックを受けたが、以下の話もそ