サイドキック小説

sidekicknovel@gmail.com

サイドキック小説

sidekicknovel@gmail.com

最近の記事

不眠症の6歳児〜2分間小説〜

息子が6歳になった頃、突然奇妙な現象が起きた。 「パパ、これなに?」 「パパ、なんで空は青いの?」 「パパ、なんで会社に行くの?」 息子は寝ることをやめ、24時間休みなく質問を投げかけてくるようになった。最初は可愛らしく思えた息子の好奇心も、3日目になると私の精神は限界に達していた。 営業部長として数字に追われる毎日。睡眠不足で頭が朦朧とする中、ふと思った。「そうだ、自分も『なぜ』を探してみよう」 その瞬間から世界が変わった。 「なぜ俺は残業するんだろう?」 「なぜ

    • 40年の待機時間〜2分間小説〜

      ある哲学者が、「愛とは何か」という問いに取り憑かれた。 大学での研究、フィールドワーク、歴史的考察。あらゆる手法を駆使して愛の本質に迫ろうとした。妻は黙って彼の研究を支え続けた。研究室に籠りきりの夫のために、毎日お弁当を作り、部屋の掃除をし、新しい参考文献を探してきた。 「もう少しで完璧な定義にたどり着けるんだ」 彼はそう言い続けて、40年が過ぎた。 ついに、その日は来た。長年の研究の集大成となる「愛の完全なる定義」を書き上げた夜のことである。達成感に満ちた帰り道、玄

      • 親子の人体実験〜2分間小説〜

        その男は、子どもを持つべきではないと思っていた。 幼い頃の記憶がすっぽりと抜け落ちていたS氏には、両親との温かな思い出が一つもなかった。どこかに遊びに行った記憶も、一緒にご飯を食べた記憶も、何もなかった。だから結婚しても、子どもは要らないと決めていた。しかし妻の熱心な願いを、ついに十年目で受け入れることにした。 「パパ、こうやってグルグルってやるんでしょ?」 息子が不思議な手つきで折り紙を折っている。S氏は首を傾げた。見たことのない折り方だった。 「どこで覚えたの?」