改正企業結合会計基準の概要(2019/1改正)

1.はじめに

「企業結合に関する会計基準」(以下、「企業結合基準」という。)及び「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下、「企業結合適用指針」という。また、企業結合基準とあわせて、「企業結合基準等」という。)の改正が2019年1月16日に公表されています。
これまで、将来の業績に依存する条件付取得対価は追加的に交付される場合のみが定義されていましたが、将来の業績等が目標に到達しないケースにおいては、売手が受け取った支払対価の一部を買手に返還する場合も含まれることが明記されました。また、このようなケースの会計処理が明確にされていませんでしたが、追加的に交付または引渡しを行う場合と、基本的には同様の処理を行うことが示されました。
また、この改正にあわせて「事業分離等に関する会計基準」と企業結合適用指針の記載内容の相違についても整合するように修正されています。
そのほか、分割型会社分割のみなし事業年度が廃止されているため、関連する定めが削除されております。

2.条件付取得対価とは

企業結合基準第27項で以下のように定義されております。

条件付取得対価とは、企業結合契約において定められるものであって、企業結合契約締結後の将来の特定の事象又は取引の結果に依存して、企業結合日後に追加的に交付される若しくは引き渡される又は返還される取得対価をいう。

3.対価の返還が行われる場合の会計処理

<前提>
x1/9/30、A 社(3 月決算)は B 社(12 月決算)の株主と、A 社が現金を対価とする株式の取得により B 社を完全子会社化することについて合意した(株式の譲渡日は X2 年 4 月 1 日)。企業結合日において認識されたのれんの金額は 150 であった。
株式譲渡契約において、取得対価の支払は X2 年 4 月 1 日に行われるものの、B 社のx2/12/31終了事業年度の経常利益が 1,000 を下回った場合には、A 社は B 社株主に支払った当初の取得対価の金額から 100 の返還を現金で受ける条項が含まれている。
x3/3/31に、B 社のx2/12/31終了事業年度の経常利益は 500 となることが確実
となったため、A 社は旧 B 社株主から100の返還を受けることとなった。その後、A 社はx3年4 月中に100の返還を受けた。
なお、のれんの償却期間は 10 年とする。 

<x3/3/31のA 社の連結財務諸表上の会計処理>
(未収入金)100  (のれん)         90
         (のれん償却) 10
A 社は、条件付取得対価の返還が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、返還される対価を取得原価から減額し、のれんを減額する又は負ののれんを追加的に認識する。追加的に認識する又は減額するのれん又は負ののれんは、企業結合日(x2/4/1)時点で認識又は減額されたものと仮定して計算し、追加認識又は減額する事業年度以前に対応する償却額は損益として処理する(第 47 項(1)参照)。

4.適用時期

2019年4月1日以降開始する事業年度の期首以降実施される組織再編から適用されます。この結果、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計方針の変更として取り扱われます。また、2019年3月31日より以前に行われた組織再編については、従前の取扱いが継続されます。

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