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第2回 私のHow to おもしろい     ~第1話 少年①~

 マンガにおける「おもしろい」とはなにか?マンガ制作を通して学んだマンガを面白くする方法を考えていきましょう!

 今回から投稿した作品の話数に応じたレポートを書いていきたいと思いますので、先に投稿した作品に目を通していただくとより今回のレポートが分かりやすくなると思います。

~第1話 少年① 目次~

①プロット おもしろさは先と先

②ネーム コマ割りと小回り

③下描き イメージと実写

④ペン入れと仕上げ まさにリクルートスーツ

⑤おわりに


①プロット おもしろさは先と先

 第1回では全体的なプロットの作り方を説明しましたので、今回は「少年編①」の制作の際に学んだ面白くする方法についてまとめていきます。

 この『雨の犯行』は群像劇であり、一番初めに作ったプロットは各人物1話でした。ですが連載形式にするのであれば作品を小出しできる形態の方がいいと考え、1話15ページという決まりで改めて制作しました。

 1つの話を3つに分割するということで、どこで物語を分割するのかが問題になります。その3分割をする際に基準としたのが「先」に何があるかです。

 今回の場合の「先」は始まりでもあり終わりでもあります。分割する際、分けた物語の冒頭と終わりにヒキ(惹きこむもの)になるものを入れて次の話が気になってくれるように分けました。

 ちなみにマンガは一番最初の掴みがとても大事で「5ページ以内に最初の掴みを入れなさい」とよく言われています。読者は審査員や編集と違って作品を隅から隅まで読むことを前提としていないので、少し読んで面白さを感じなければ読むのをやめてしまうのです。

「少年①」の場合は始めのヒキに3.4ページの犯人バラし、終わりのヒキでは前原が言っていた「もっと刺激的なことしよう!!」がそれに当たります。

 ヒキは大事でこの後の話でも意識してやっています。そしてもう一つ「ある図」がプロット制作での大きな参考となりました。

それがこちら

これは物語大筋の伏線の出し方を表しています。

少年①にあわせるとこんな感じ

 このように謎を冒頭で示し、その謎を物語後半で明かして別の謎を入れるというやり方です。少年①はこのやり方を土台に物語を進めていきました。型を覚えればどんな話にも応用できる技術です。

 この型を頭にいれ「第一回のプロット編」での手書きプロットを組み合わせれば、よりおもしろいマンガができるでしょう。


②ネーム コマ割りと小回り

 ネームで一番悩むのはコマ割りだと思います。

私もコマ割りを考えるのが苦手で単調なコマ割りになりがちです。1話目は3回ネームを直したのですが1校目のネームと最後のネームでは大きくコマ割りが変わりました。最初のページをみていきましょう。

左が第1校、右が第3校です。大きく変わったのは一目瞭然でしょう。

どうしてここまでの変化が起きたのか、その答えは…

担当教授の直したコマ割りを丸パクリしたからです!

 コマ割りに関してはパクリというか模倣はとてもいいやり方です。もちろん何も考えずに真似をするのは良くないですが、頭を使い「なぜこの場面でこのコマ割りをするのか」をよく考えて真似をすればそのコマ割りは「自分の新しい考え方」に繋がるのです。3校のネームには担当教授の意図を文字で書きました。この意図をしっかりと理解し自分のものにしていくのです。

 コマ割りによってマンガはたくさんの魅せ方が可能になりますが、コマ割りの引き出しを大きくするやり方の1つに模倣はとても良いです。コマ割りは一日で良くなりません、何度も描いては消してコツコツ良い物にしていくものだと思います。


③下描き イメージと実写

 さてネームから下描きにしていきましょう。下描きはそのままペン入れへ繋がるのでしっかりやっていきます。

 私は去年まで阿呆な考えを持っていました。それは…

「初めから資料をみないで描けたらその後も資料なしで描けるじゃん」

…馬鹿ですか? 実際このような考えを持つ漫画家志望は多いらしくプロの漫画家のほとんどが口を揃えて「漫画家になれなかった人の思考」として例に挙げます。

 資料を使うことは何も恥ずかしいことではありませんし皆がやっていることです。『グリム・ドラックス』を制作した頃には資料を参考にするようになり、今回『雨の犯行』ではロケーションハンティングもしました。

 『雨の犯行』では実際の舞台を決め、写真をとって背景の参考にさせてもらった場面が多くあります。ネームを考えている時もそうですがしっかりした舞台があるとイメージが湧きますし、背景を描く際にとても役に立ちます。

 話はイメージですが実写の世界とリンクさせることによって私は「キャラクターはここにいる」という強い自覚が芽生えた気がします。


④ペン入れと仕上げ まさにリクルートスーツ

 ここまでは読者が見ることがなかった完成までの過程のことを書いてきました、ペン入れと仕上げはその過程を踏まえた集大成作品を日の目に出すときの格好にさせます。いままでが良くてもここでのミスは1番結果にでてくるのです。

 さて表題に「ペン入れ」と「仕上げ」と書いたものの、この2つは練習と経験あるのみだと思うので先ほど書いたことを頭にいれて作業するしかありません。プロットから想像していたイメージが実際に完成された時どう思うでしょうか?私はまだまだだと毎回自分の技術不足を痛感します。今回『雨の犯行』の連載を続ける中で技術向上を狙っていきたいです。


⑤おわりに

 第2回はこれにて終わりです。マンガを描く人にとっては当たり前の事を書いていたかも知れませんが、「新しい考え」や「自分とは違う考えだ」など何かしら思うところがあったら嬉しい限りです。

「おもしろくするための方法をまとめていく」と銘打って「How To おもしろい」を書いてますが、書き終えてみれば制作過程を書いているような気もします。でも私にとっては『描き終え過程を振り返ることも「面白い」に繋がっていく』と思っています。


すずき野


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