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すでに失われ始めていた風景 岸田劉生『道路と土手と塀(切通之写生)』

東京国立近代美術館に収蔵されている、岸田劉生『道路と土手と塀(切通之写生)』。
代々木あたりの開発風景を描いている。
国木田独歩がウロウロしていた渋谷ともほど近い。
この抉られた赤い土が関東ローム層だったとは、初めて観たときは考えもしなかったな。


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『武蔵野』は1898年、『道路と土手と塀』は1915年。17年の開きがある。
絵の端に微かに描かれた雑木林は、この地においてその役割を終えつつあることを暗に示しているようだ。国木田の時代ですら、すでに失われ始めていたのだ。

しかし、この絵を観たいと思って、実際に観に行けてしまうというのは、まことに不思議なことと思う。

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