僕の思考の種を、AIはどう読むのか
超領域リベラルアーツという授業で。
常に適当な言葉の吐き口で使っているnoteですが、今回初めて大学の課題にnoteを持ち込みました。
その名も超領域リベラルアーツ
超領域でどの領域にいくのか。
リベラルアーツとはそもそもなんなのか。
わからない+わからないで選んだ月曜5限の授業です。
授業概要はこちら。
どうやら、記号創発システム科学という新しく、複雑で、おそらくトレンドに乗った。そんな学問を、たくさんの専門分野から見ていこうじゃないかということ。この未知さにひかれ今日まで受講してきたわけです。
ちなみに教科書は、これ。
記号創発システムという結局あまりわからなかったもの。
記号創発システムというものがこの授業の軸に置かれています。足りない僕の頭と、これまでの授業内容からどういうことなのか説明を試みます。笑
これは授業中でも、そして書籍でも、何度も取り上げられてきた記号双発システムの概念図です。
この世界にはたくさんもモノや人、コト、事象、ありとあらゆるものが存在しています。それらが絡みあい、ぐちゃぐちゃになり、変化しあい、そしてある時に「なんとなくまとまる」ということがあります。それらは上位の概念となり、その概念はまた個々のモノや人、コト、事象…それらに対して何らかの制約を与えます。
こんなにも言語化が難しいことは久しぶりです。自分の中ではかなりかみ砕けているのですが、なんとも言葉にすることは難しい笑
でも「このシステムが人間のコミュニケーションそのものを表している。」このことは僕の中で腑に落ちていることです。
仲間内のノリ、みたいなときにおそらくみなさん感じたことがあるかと思います。
変なあだ名
その場のノリで「●●」っていうとオモロイ
みたいな。
少し古いですが、僕ら21歳世代が中学生時代に一世を風靡したお笑い芸人8.6秒バズーカの「ラッスンゴレライ」
あれなんてまさにそうだなと思います。
「ラッスンゴレライ」自体には面白みも意味も何も持たせていないけれど、あのコンビが音で、文脈で、なんとなく形を作っていき、そのプロセスにお客さんの笑いが参加し、会場の空気が温まる。この時点で「ラッスンゴレライ」は何か上位の意味として繰り上がり(組織化)、それ以降はすべての人間が「ラッスンゴレライ」という音と名詞に制約を受けながら引っ張られ、面白くなってしまう。成り立ってしまう。
教科書でもある「心を知るための人工知能(共立出版)」でも、谷口先生は次のように述べています。
ここでいうそれぞれの名刺は
各エージェント:「ラッスンゴレライ」」
環境:芸人、お客さん、空気、ネタ
内的表彰系:「ラッスンゴレライ」」=●●なもの(おもしろい)
だと思っています。
どうやら私たち人間は言葉を創りながら、言葉に支配されて生きているようだ。というのが、今のところの僕が考えた記号創発システムです。
僕が考えた「おもしろい」
話が打って変わって、僕の興味はどこか。
僕としては「身体経験がないロボット(AI、Chat-GPT、etc…)が人に対して経験価値を提供する」という点に今回の授業を通して考え続けています。
先ほどの記号創発システムは記号創発ロボティクスとして、実際にロボットを作るときに応用されます。そこでどうしても引っかかるポイントが「ロボットはいろんなことを考えられるけど、100%人間的な自我を持ったロボットが五感を通して感じたものを具現化できるのか?」という問いです。そもそも自我があるのか、自我の定義は何なのか、五感に代わるなにかを兼ね備えれば可能なのか、など問いは尽きませんが、ひとまずこの問いがとてもホットです。
そこで今回は既存の企画書と比較検討してみることにしました。
私がイベント会社で約2年と半年働いているものですから、そこの企画を使って、AIが人に対して価値提供をするということを考えてみたいと思います。
僕が実際に企画提案をして、予算を組んで、ひとを集めて開催している一味変わった就職活動における合同説明会、「はたらく人」の展示会。
企画書作成から、AIによる価値提供の1歩目を観察し、そのうえで記号創発システムと企画の関係性について述べてみたいと思います。
「はたらく人」の展示会、という企画
従来の合同説明会に対して、
「形式的や過ぎないか」
「コミュニケーションが少なくないか?」
そんな問いから、「はたらく人」との対話を問いとした合同説明会を企画しました。
中小企業にあるような
学生にもつねにどこかある
そんな両者が「今」はたらくに対して思うことを表に出して語り合う場づくりとして「はたらく人」「はたらく」を前面に押し出しています。
15社程度の「はたらく人」と100名程度の学生が島に分かれて話すセッション形式。1セッションは40分で進んでいき、おおむね5セッション進めていく半日がかりのイベントです。これまで2回開催し、3回目、4回目の企画を進めています。
今回は一部黒塗りをした企画書の数ページを添付します。
AIに作らせたらこうなった
まずはAIに作らせた企画書を添付します。
ポイントは
・「はたらく人」の展示会、というイベント名
・アウトライン
の2つの情報のみしかAIに与えていないという点です。
それを踏まえてご覧ください。
基本的に文字ベースの説明文章+生成系AIによるイメージ画像のパターン化されたスライドで、読む人の脳内を想像したようなクリエイティブなスライドを少し期待していた分少し拍子抜けです。
感じた点についていくつか書きます。
①「はたらく人」と鍵かっこ付きで強調した点が企画に反映されている
従来の合同説明会と一線を画し、「はたらく人」の想いに触れようというコンセプトが含まれている点が、シンプルにすごいと感じました。
特に、3枚目のスライド「立ち上げの想い」のスライドでは
という一文が組み込まれていました。この問題点の感じ方とアウトプットくをAIにされたのは少し悔しいところ。イベントタイトルに日本語における鍵かっこの意味を独自に見出し、コンセプトから企画を想像するといった提案がなされているので、タイトルと中身がかけ離れている、薄い、なんてことがないように感じます。「はたらく人」という名称に何らかの意味を持たせ、人を説得しようとしたのかなという想像が働きます。
②学生側のターゲット設定が甘い
就職活動における場づくりイベントや採用サービスなどが乱立している昨今で、ターゲットとなる参加学生のニーズをとらえきれていないと感じました。
出身大学、課外活動の有無など、所属するコミュニティによって就職活動への考え方は大きく異なります。
特に合同説明会イベントは大手のナビサイトが主催している大規模なものが、大学を通して案内されるためセグメンテーションをより詳細に行うような指示が必要です。
ネット上レベルでも言われているような業界の大きな流れや基礎知識にあたる部分ですが、これらを踏まえて企画提案を行うリサーチ→作成があまり得意ではない印象です。
③企業のニーズ把握が甘い
新卒採用市場における企業の考え方は複数あります
採用実績が多く、比較的採用費を潤沢に用意できる企業は認知拡大のために合同説明会に出展し、母集団を形成する目的で出展を考えます。
これは今回AIに対して「ターゲットそのものから考えてね」という建付けになっているので、ターゲットを指定していないというポイントはあります。
だから一概に評価はできませんが、AI提示しているメリットは間違っていない。だけど、より細分化が必要だよね、といった感じです。
④私とAIの身体感覚の違い
まとめると、基本的には
・イベント名から背景とコンセプトを一定レベルまで作り出すことはできる。
・個別の設定や想定、リサーチまで汲み取ることはできない
・日本語の意味を100%理解していない
・制作業務や費用、時間などの詳細までの提案は今回は見られなかった。
・こちら側の指示の技術が必要
といったところに集約されるのかなと感じました。
それでも、
・「はたらく人」の展示会、というイベント名
・アウトライン
の2つの情報のみしかAIに与えていないという点を強調すると、企画のたたき台はここまで簡単に出来上がるのか…というところが正直なところです。おそるべし。
AIの企画書を人がどう感じたのか
以上の企画書2つを、人・AIどちらが作成したかを明らかにせずに現役の就活生やイベント企画経験者9名に見せ、
・イベントコンセプト
・イベント内容
・企画書構成
・おもしろい、やりたい、参加したいと思ったか
について5段階のリッカートスケールで回答してもらい、それぞれの企画書に関して感じたことを自由記述してもらいました。
結果は以下の通りです。
母集団が少ないのと、おそらく計測の仕方が適切でなさそうなので、この結果が有意であるのかないのかといった判断ができません。ただ、ポイントの上では人が創った企画書に軍配が上がっているものが多いです。微々たるものですが。
コメントがおもしろかったので、ざっくりと共有します。
〇AIスライドに対しての意見
文字の多さやデザイン性、絵の好き嫌いなどが悪さをして、伝えたいことが伝わっていない印象が見受けられましたね。
企画書はプロジェクトスタートにおけるすべての出発点。
共感を生む構成と内容、それを助けるデザインが必要ですが、AIが創った方は共通言語があまり生まれていないのではないか?と感じました。おそらく、上記で羅列した企画書すべてにじっくり目を通された方は少ないのではないかと思います。まずは読んでもらい、話を始める種を蒔くこと。そして相手をワクワクさせることを念頭に企画書は作成していかなければなりません。
その点では、
AIは就活をしたことがないし、する必要もない。
これから直面する予定もない。
そういったイベントに参加したこともないし、友達と「就活どうする~」という会話になることもない。
就活をするときの焦燥感を味わうことはなく、改めて自分について深く考えるという経験もきっとAIはないことでしょう。
欠けているのは圧倒的に「当事者意識」で、共通言語を創りにいくような人間的で積極的な感情が先行した共感ドリブンの思考には至らなさそうです。まだ、企画提案を行う能力はAIの分野ではなさそうです。
記号創発システムは、人のコミュニケーションがあるところにすべて存在する。
こと記号創発システムにおいては、物事様々な要素が絡み合って、上位概念に組織化し、またその上位概念が下位概念を制御するといった仕組みがありました。
企画はまさにアイデア勝負です。
企画やブレストなんかでよく紹介される名著、アイデアの作り方では
と語られます。
この態度は、記号創発システムととても密接にかかわっている気がしてなりません。
アイデアAとアイデアBが組み合わさってアイデアCがうまれる。(組織化)
ではアイデアAとBにはもう用なしかと問われれば、それらは頭の中で、会議の中で、またコミュニティの中で生き続け、新しく生まれたアイデアCという概念によって制御を受けます。
この時アイデアA,B,Cには「企画」という枠組みの中では共通言語として認知され、この辺りから「コンセプト」がうまれるのではないかと思っています。
「アイデアAってここが面白いよね」
「じゃあアイデアBはどう?」
「結局それって●●だよね(アイデアC)」
「じゃあアイデアCでいこう!」
このように積み重なるコミュニケーションは常に記号創発システムに則っています。
つまり企画を考えるというプロセス(今回はイベント企画が題材ですが)もまた、記号創発システムを踏襲することで語られると感じました。
ただやっぱり、身体経験がないAI、指示された内容の範囲でしか提案をしてこないAIでは、まだ人間を凌駕する体験価値を提供できないというのが僕の結論であり、結論でありたい。といったところです。
今回、AIと人間が同じ企画について思考をし、利用しあうというプロセスを今回若干踏んだことで、生成系AIの強さと人間の強さが改めて理解できた気がします。
<今回スライド作成した生成系AI>
<企画元>
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