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USMLE STEP1 の振り返り

はじめに

 2024年7月現在、PGY9の小児科医が昨年USMLEに挑戦した記録を残しておこうと思う。誰かの、特に所謂old PGYの参考になれば嬉しい。


USMLE受験を決意するまで

 USMLEとの最初の出会いは大学生の時。FIRST AIDを購入したのだが大したモチベーションもなく数回開いただけで終わってしまっていた。研修医の時も同じようにFIRST AIDを買うのだが、タンスの肥やしになったのは言うまでもない。
 その後、長い月日が経ち、大学院へ進学した2022年。もう1年が終わろうかという頃、自分のこれからの人生を考えた。専門分野についてより高度な、そして日本では少し出足が遅れるであろう領域について深く学びたい。留学するしかない。
 2人目の子供が生まれたばかりだったが、妻に「海外留学したいって言ったらどう思う?」と尋ねると、「もっと歳重ねてからやっぱりやっとけば良かったじゃ間に合わんもんね。じゃあ、私も英語もっと勉強しなきゃ」と思いの外、受け入れは良好だった。
 その時点でPGY7。もう立派なold PGYの私だったが、一念発起してUSMLE受験を決めた。取り合えずFIRST AIDとQ&Aを購入してざっと眺めながら、Xやnoteを駆使して情報収集をした。結局UWorldにつきる。こう結論づけた2023年1月から私の本格的なUSMLE Journeyが始まった。

基本スペック

 勉強の記録を示す前に私の基本スペックを。
 ・学歴:地方国立大学医学部卒 受験時卒後8年目、大学院2年生
 ・留学:学生時代に米国の病院で1ヶ月のObservership
    (文字通り本当に見学、カンファも回診もニコニコしてたら終わってた)
 ・英語:日常会話に困るレベル
     英検 準2級(中学生)
     TOEIC 720点(大学1年生)→930点(大学院1年生)
     TOEFL-ITP 610点(大学院1年生)

勉強の流れ

勉強の流れは以下の通りである。
2023年1月  UWorld(1年契約)を開始
 最初は10問/日くらいで開始し1ヶ月で10%がようやく終わるペースに焦りを感じる。少しずつ問題を解く速度は上がってくるが学会やら本業の研究やらで忙しくなかなか解き進まない。
2023年5月 UWorld 50%:正答率60%程度
 このままのペースでは今年中に受けられないぞと思うようになり、トイレや移動中、実験の待ち時間はアプリでUWorldをひたすら解くことにした。
2023年6月初旬 UWorld 80%:正答率50%台後半
 怒涛の猛追で1ヶ月くらいで1000問以上解き終えた。隙間時間はほとんどUWorldしてたように思う。
2023年6月下旬 UWorld 1周目終了:正答率 55%
 振り返ってもとんでもないペースで問題解いてる。ぼちぼちNBME模試を受けることにきめる。とりあえず不正解だった問題を解き始める。
2023年7月1日 模試① NBME Form29:正答率 59%
 1周したくらいでは太刀打ちできないことがわかった。とりあえず不正解問題とフラッグつき問題を全て正解するまで解き続けることにした。
2023年7月末 UWorld リセット
 どうやら1ヶ月で4000問近く解いたらしい。1周を終えるのに半年くらいかかってしまったが、問題を解くコツを掴んできた感じがあった。
 これまではひたすら解くことに集中していたが2周目なので、「なぜこの答えなのか」を意識して解説を読むことにした。正答率の低い問題については2番人気だった選択肢の解説も読み、間違えやすいポイントを押さえるようにした。
2023年8月1日 模試② NBME Form30:正答率 70%
 1か月の追い込みが効いたのか、正答率が伸び、1週間以内の受験で99%受かるというコメントをみて自信がつく。朝1ブロック、隙間時間1ブロック、寝る前1ブロックくらいのペースで問題を解けるようになっていた。
2023年8月中旬 IWAの登録開始
 もっと早くするべきだったと後悔。結局受験日を決めるのは1か月後になった。
2023年9月初旬 UWorld 2周目終了:正答率 83%
 40日で解き終えたので1日100問弱といていた計算になる。とりあえず1周目と同様に間違えた問題とフラッグ付きの問題を解き直す。
2023年9月7日 模試③UWSA1:正答率 69%, 3 digit 237
 この1か月であまり成長はないが、安定した成績が取れるのだと言い聞かせる。
2023年9月中旬 受験時期を11月に決定
 飛行機での移動が必要であることや平日あまり休めないことから選択の余地があまりなく、11月に東京会場で受験することとした。
 このころにはUWorldの2周目、不正解・フラッグ付き問題を消費しランダムで問題を解く日々。少し勢いが落ち、学会発表も重なったので中弛みした。
2023年10月28日 模試④NBME Form31:正答率 72%
2023年10月29日 模試⑤Free120:正答率 78%、UWSA2:正答率 66%

 これ以上点は伸びないと悟る。そして7ブロック分の模試が体力的に相当きついことを知る。受験を1週間後に控えていたので妻にお願いして帰宅を遅くさせてもらい図書館に篭って勉強した。
2023年11月6日 本番当日@ソラシティ
 微妙だと感じた問題にフラッグをつけながら解いた。結果45%くらいの問題にフラッグがつき、モヤモヤしながら1日が終了。
2023年11月22日 結果発表:Pass!
 試験からしばらく不安だったが、だんだん開き直ってきてSTEP2CKのUWorldを契約。無事に合格しており、基礎医学の勉強とサヨナラできる喜びに浸った。

勉強法のポイント

 n=1の観測データのみなので参考になるかは分からないが、こうすればよかったという点も含めてSTEP1合格へのポイントをまとめてみる。
 ①UWorldだけで合格には十分
  特にPass/Failになった今、高得点を狙う必要はないので、UWorldをやり込めば合格には間違いなくこぎつけられると思う(臨床経験が一定年数あれば特に)。
 ②1周目は細部に拘らない
  まずは全体像を捉えることが重要だと思われる。どういう疾患が出るのか、どういう知識が求められているかを把握し、国試対策で得た知識を掘り起こしていく作業をさっさと終えてしまうことが大事。私は結局5か月かけて1周を終えたが、もっと早く解いていればと後悔している。
 ③2周目はキーワードを拾いながら解く
  2周目はどのキーワードで答えが導かれるのか、逆に引っ掛けようとしているのかを意識しながら解くと1周目で得た知識のアウトプット作業に有用であったと感じている。最終的には年齢、性別、主訴から鑑別を思い浮かべつつ、問題文の最後、選択肢を読んで問われていることを確認し、問題文を頭から読みながらキーワードを押さえていき答えを選ぶ。という流れで問題を解いていた。
 ④Ankiと同じように反復学習で知識を定着させる
  Xで知る先人には1日1400問近く解いた先生がいた。そこまでは到底無理だが短期間で繰り返しアウトプットをする、知識の復習をするという意味ではひたすら反復学習することが肝要で、AnkiさながらUWorldを回すのは個人的には有用だったと思っている。
 ⑤模試で2回連続で65%を超えるなら受験する
  実力の評価に模試は非常に有効で、65%はあくまで私見だが2回連続で超えれば合格は固い(と思う)。先述の通りPass/Failなので思い切って受験日を決めてしまうとより身が入って合格は確実なものになるだろう。

まとめ

 長い勉強期間、モチベーションを保つのは難しい。私の場合は、学生時代の友人がフェローをしていた縁もあり、海軍病院のOpen Houseに行き、たくさんの刺激をもらった。また、米国でレジデントをしている先生や臨床留学経験のある先生とZoomでお話をさせてもらうことで、モチベーションが高まり、勉強を続けることができた。妻や子供の支えがあったことは言うまでもない。
 USMLEはあくまで手段であり、ゴールではない。最終的に自分の目指す目標に少しでも近づけるように日々努力を続けたいと思う。
 私も道半ばではあるが、多くの人が夢を追いかける時に参考にしてもらえたら嬉しい。


ここからはおまけ。

おまけ:受験申請のタイムスケジュール

8月21日 ECFMG identification number 申請
8月22日 ID, password発行, Form186届く
8月25日 Online公証
8月30日 Form186受理, STEP1受験申請, 大学にForm183提出依頼
8月31日 成績証明書, 学位記をupload
9月11日 ECFMGに書類到着確認
9月15日 Form183 Accepted
9月21日 Scheduling number発行

おまけ:受験日前日から受験まで

11月5日:東京へ現地入り。ホテルは会場から目と鼻の先にある。お茶の水ホテルじゅらくを選んだ。荷物を置いてプロメトリックの入り口まで会場の下見に行き、ソラシティのスタバでざっと模試の解説を見直した。近くのファミレスで夕食を済ませ、コンビニで翌日の食料調達。
おにぎり4個、サンドイッチ、ウィダー、飴、水(透明なボトルの1Lくらいのでかいやつ)、お茶だった気がする。
ホテルのお風呂に湯を溜めてしばらく体を休め、22時半には就寝した。
11月6日:当直で鍛え上げた、いつでもどこでも寝られる身体のおかげで熟睡だった。朝ごはんにサンドイッチを食べ、軽くお腹を満たしたら身支度をして会場へ。
初めての受験でどきどきしたが、となりの外国の方が持っている書類がちらりと見え、Family Medicineの専門医試験を受けるようで、東京でも受けれるんだ!と静かに感動した。ロッカーが結構狭いのでカバンの選択は大事だと思った。
試験場内にはその場で借りられるボードとペン、耳栓、水を持ち込んだ。
意外に知られておらず、私もXで知り合った先生に教えていただいたが、水は会場内に持ち込みできるので膀胱に自信のある人は持ち込みをお勧めする。
試験は各ブロック10-15分程度残るくらいで解き終えた。経験上見直しても悩むだけで、直感で選んだ答えの方が合ってることが多いので、明らかな選択ミスを探すくらいの見直しとした。休憩中にスタバでコーヒーを飲んだり、少し散歩したりしてリラックスして試験に臨めたのはよかったと思う。あと、会場内で靴を脱いで椅子に正座して解いてたら怒られたので皆さんはどうぞお気をつけて。
9時過ぎに試験を始めて16時くらいに試験を終え、近くの居酒屋で一人打ち上げをして空港へ向かった。

長い試験だがSTEP2CKはさらに長い。体力的な不安はあるがこれを乗り越えなければ留学は遠い夢。今年中に受験できるよう頑張りたい。

STEP2CKに合格できたらまた体験記書いてみようかな。

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