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【みんなちがって、みんないい♡】

2週間ぶりに吉祥寺での指導の日。朝早く起きて、青い空の下、キラキラな朝日を浴びながら、V-Netへ向かう。今日は、4月最後の土曜日で、GW前だったからか、男子三人、女子二人の賑やかな音読・サイコロ道場となった。

「音読」する古典は『伊勢物語』で、初冠(ういこうぶり)した若き貴族の在原業平と思われる主人公が、狩りに出かけた先で美しい女の子を見つけ、狩衣の裾を切って、愛の告白の歌を書いて送る一節だ。O先生が「みんな好きな人はいるかな?告白したことある?」と小3〜中一の子どもたちに質問すると…みんな口々に「好きな人はいるよ。従兄弟の男だよ。」(男子)、「好きな人はいない。」(男子)、「私、好きって言ったことあるよ。」(女子)とニヤニヤ笑いながら答える。どうも男子は、恥ずかしがり屋さんが多く、歯切れが悪く、女子の方が積極的だ。
「じゃあ、好きって言われたことある?」と先生の質問が変わると、男子も女子も一様に首を横に振る。と、一人の女の子が「あるよ。もう少ししたらね。」と、当てがあるのか、それとも未来を想像して言っているのか?女の子の方が常に一歩リードしている。(笑)
意識があっちこっち散漫になりがちな子供たちを、O先生は上手に興味づけしながら、何とかみんなで一緒に「音読」する。

「音読」の後は、男子チームと、女子チームに分かれて「サイコロ暗算」だ。私は、女子チームを担当した。それぞれが、3つのサイコロを転がして、3つの目を掛け算する。小3と小4の女の子で、小3の女の子の方が幾分コツ掴んでいて、どんどん暗算で答えを出していく。すると隣りの小4の女の子は、だんだん心が沈んでしまう。自分の方が一つ学年が上なのに、中々答えを出せないのが許せないのだろう。「大丈夫。そこまで出来たらあと少し。隣りは氣にしないで。最後まで一緒にやろう!」と励まして、暗算に集中するように促す。悲しそうな目を向けてくるが、笑顔で返して一緒に計算をする。「252?」「そう、大正解!出来たね!!」と褒めると、彼女の目に輝きが戻った。そこから自分の暗算に少しずつ集中できるようになって、簡単なサービス問題が何問か続いて即答で正解できると、沈んだ心が浮上してきて、少し自信を取り戻せたようだ。
隣りの小3の女の子は、順調に暗算をこなしてゆき、升目が書かれた記録用紙に暗算の結果をスラスラ書き込んでいた。表の升目が全部埋まったので、二枚目の紙を求められたが、O先生から「ごめんね。予備の紙がないから裏面を使って。」と言われ、真っ白な裏面の紙に、自分で定規を使って几帳面に升目を書き込み始めていた。
それに少し遅れて小4の女の子も表の升目を全部埋められたので、同じように紙の裏面に定規を使って升目を書き始める。ここで二人の形勢が逆転する!小4の女の子が手際よく、「こうやったら簡単に書ける。」と言って、あっという間に升目を書いてしまう。今度は小3の女の子が焦り始め、小4の女の子の書き方を見て真似をした。小4の女の子は、満更でもない様子だった。
得意な分野は人それぞれだ。一点のみを比べて、優劣に一喜一憂してもあまり意味はない。相手のいい所で真似できる所は取り入れて、お互いに良い刺激を受けながら、自分の伸び代を伸ばして成長すればいいのだ。二人を見ていて、これは大人にも言えることだなぁと思った。
「サイコロ暗算」の後は、30分間程の休みがあり、「カロム」のゲームをやりたい子は「カロム」をやる。女子チームはこれには参加せず、V-Netに置いてある遊び道具でそれぞれの時間を過ごした。いつもここで解散となるが、担当している一人の女の子が、振替でこの後の「作文」のクラスに初めて参加することになっていたので、私もそのまま残った。

「作文」のクラスでは、O先生が絵本を読み聞かせ、それを題材にして作文を書いてもいいし、絵本とは関係なくても、他にに書きたいことがあればそれを書くと言う自由なスタイルで行われる。絵本は2冊読まれた。

『たこきちとおぼうさん』と『おばけリンゴ』だ。両方共なかなか含蓄のある良いお話しだった。O先生は読み聞かせをしながら、時々質問を投げかける「この後、どんな風になると思う?」「もし自分が〇〇だったらどう思う?」子どもたちは、それぞれ思ったことを口にする。その答えが、たとえどんなに殺伐としたものであっても、「そうか。そう思ったんだ。」と否定せずに受け止める。何を言っても大丈夫な場なのだ。正解や不正解は無い。どう感じようと自由な場を作る。そういった場で、自分の思いや、考えを口にしてみることは、自分や周りを受け止める柔らかな感性を育てるのにとても大切なことだ。
O先生の絵本の読み聞かせが終わると、それぞれ一枚の紙が配られ、紙の真ん中に「作文」のテーマを書く。そしてその周りに、テーマにまつわる単語や短い文章を書き散らして、頭や心の中あるものを言語化して見える化する。その一枚のメモを元にして、原稿用紙に文を埋めていく。慣れている子は、堰を切ったように、凄い勢いでスラスラと400字詰め原稿用紙を埋めていく。これが「音読」の効果だ。今日初めて参加した女の子は、まだ要領を得ず、なかなかメモが進まなったが、O先生のアドバイスを聞きながら、時間をかけて、自分の感覚にあった言葉を丁寧に選んで、最後は、大きな升目の200字詰め原稿用紙一枚ちょっとの作文を書くことが出来た。やった!初体験のチャレンジをやり遂げた!!
付き添いのお母さんに出来た作文を読んでもらえてニヤリと笑っていた。
他の慣れている子どもたちの作文も読ませてもらったが、みんな伸び伸びと自由に書けていて、面白い作文だった。瑞々しい感性が羨ましい!「音読」の効果恐るべし…。

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