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【イルカに学べ♡】

20代から30代にかけて、スキューバダイビングにハマっていた時のこと、ボートの上から野生のイルカたちを見てすごい衝撃を受けた。

なんて生き物なのだろう!

あの美しい流線形の姿にも惹かれるが、
何より興味を抱いたのは、彼らと遭遇すると、誰もが不思議と笑顔になってしまうような平和で、楽しいエネルギーを持っていることだ。

その不思議な魅力の理由が知りたくて、イルカに関する本を読み漁ったり、「イルカ・クジラ会議」に参加したこともあった。

そこでわかったことは、イルカには「恐怖心」が無いということ。その代わりに発揮されるのが「好奇心」。面白いことや楽しいことが大好きで、「一緒に遊ぼう!」と興味関心を持って相手に近付いていくのだ。彼らは人間より大きくて皺のある高等な脳をもっているのだが、イルカと相対してみると、まるでこちらの事は何でもお見通しの様子で、悟った聖人のようであり、自分たちを生かしているものと調和していて、氣持ちの良い開放感のあるエネルギーでコンタクトしてくる。

イルカのことをもっともっと知りたくて、バハマに野生のイルカと泳ぐ「ドルフィンスイム」に行った時のことだが、食事担当のシェフが乗り込む中型のボートの上で一週間、洋上で寝食を共にしながら、野生のイルカの群れを探して移動するツアーに参加した。

視界360°全てが海で、お天気にも恵まれて最高の氣分であったが、何せ相手は野生のイルカ。大海原で必ず遭遇できる保証は無いし、よしんば、イルカの群れと遭遇できたとしても、一緒に泳いでくれる保証も無い。

旅の前半では、双眼鏡片手に船長がイルカの群れを見つけられても、ボートで近づくと、どこかへ行ってまうという事が何回も続いた。勿論、一度も見つけられない日もある。

後半に差し掛かってくると、「このままイルカと一緒に泳ぐこと無く、日本に帰ることになるのかなぁ…」と諦めの氣持ちも出て来て、「まぁ、その時はその時。縁次第だから。」と落ち込みそうな心を建て直していた。

滞在期間残りあと二日。ある時、船長が腕を伸ばして、イルカの群れが見える方向を指し示す。静かだったボートの上でわぁーと歓声が上がった。注意深くボートを走らせて距離を縮めていく。逃げる気配は無い。いつしか歓声は止み、息を呑むような静けさとなった。そして、いつでも海の中に入れるように黙々と手際よくシュノーケルとフィンの準備をする。

イルカの群れはもうすぐそこまで迫り、ボートのエンジン音が止んだ。チャプチャプと波の音がよく聞こえてくる。程なくすると、「O.K.」「Go!」と船長の合図が出た。

イルカたちを驚かさないように、ボートの後ろにあるステップから、みんなが静かに海の中に入っていく。私も心の中で「お邪魔します。」と言って、高まる氣持ちを抑えながら後に続いた。

今回のイルカたちはとてもフレンドリーなようで、逃げることも無く、私たちを歓迎してくれた。泳ぎの上手い人たちは、早々に群れの真ん中まで行って、水中に潜っては、野生のイルカと一緒にくるくると回って遊んでいる。

「あぁ、私も一緒に潜りたい!」と思うが、泳ぎの苦手な私は、シュノーケルでは殆ど潜ることが出来ずに、水面でパチャパチャと移動するだけで、水中の様子を見て楽しんでいた。

とその時、背後に気配を感じたので、誰か仲間が近くに居るのかと思い振り向いてみると…そこにいたのは一頭の野生のイルカだった。至近距離だ。かなりびっくりしたが、イルカの優しい眼差しに安心して、そのままアイコンタクトをしてみた。

「一緒に遊ぼう!」

「そうか、キミは潜れないんだね。ここで一緒に遊ぼう」と言われたような氣がした。イルカはそのまま水面で、私の周りをゆっくりと泳いだ。手を伸ばせば届く距離だ。私はアイコンタクトを外さないように、夢中でその場をくるくる回ってイルカの動きに合わた。
4、5回位周ると、イルカは「じゃあね」とスッと潜って、あっと言う間にどこかへ泳いで行ってしまった。ボートに上がってからは、頭の中は空っぽで、しばらくは放心状態だった。

これが私の野生のイルカとのEncounterだ。
彼(彼女?)は、私の全てを見透かしていたような感覚だった。身体だって人間より遥かに大きいし、大きな口には鋭い歯が生えている野生の動物なのに、恐怖を抱くことは一切なく、平和で、友好的な優しいエネルギーに包まれていた。本当に不思議で、幸せな体験だった。

この体験を通して、自閉症の子どもたちの治療にイルカが使われるのもよくわかるし、イルカと一緒に水中で出産をする女性が居ると言うのも頷ける。

いろいろ面倒なことがあると、私たち人間もイルカのようになれたらいいのにと思う。平和で、開放的なイルカから学べることはたくさんある。

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