キラキラと輝く名前を持った君たちへ
これは、少しだけ、
ほんの少しだけ未来のお話。
「みんな、卒業おめでとう。
君たちの名前を最後に読み上げることができて、先生は光栄に思います。」
「愛舞(いぶ)」
「彪雅(ひゅうが)」
「茶彩羅(てぃあら)」
「陽翔(はると)」
「乃絵瑠(のえる)」
「来夢(らいむ)」
「頼音(らいおん)」
「苺愛(いちあ)」
「七音(どれみ)」
「楽園(らあん)」
「夢露(めろ)」
「奇跡(だいあ)」
「星影夢(ぽえむ)」
「京凛(みやり)」
「絆希(ばき)」
「月雫(るな)」
「詩空(しえる)」
「心韻(ろい)」
「会心(えこ)」
「波亞(なろあ)」
「・・・これで、全員か。」
「えー、少し前まで、読みづらかったり、斬新な名前を持った子供のことを、『キラキラネーム』と揶揄されることがありました。
当時の人たちは、恥ずかしいとか、可哀想とか、改名したほうがいいとか、言いたい放題言っていました。
先生はその時から、どうして、人の名前だけを見て、その人のことを何も知らずに、そんなことを言えるのか不思議でなりませんでした。
皆さん、こんな話を知っていますか。
明治維新が始まった頃生まれてきた男の子には、半分近くの子が名前に郎がついていたそうです。
加えて昭和では、およそ40年間名前に子がついている女の子が5割を超えていました。一番多い時では、80%近くまであったことも。
でも、今はそんなことはありませんよね。
日本は戦国時代から戦争、高度経済成長を経ていく中で、人の名前も変わっていきました。
それは、これからも同じです。
みんな、自分の名前がどうして、その名前になったのか知っていますか。
お父さんとお母さんが、どうしてその名前をつけたのか、知っていますか。
君たちは、愛されて生まれてきました。
賢く育って欲しいとか、健康な強い体になって欲しいとか、人に愛されて生きて欲しいとか、そんな風に、願いを込めて、お父さんとお母さんは名前をつけました。
両親は、一生に一度しか書くことのできない短冊に、君たちの名前を書き込んだのです。
そんな名前を、赤の他人が馬鹿にしていい道理など、決してありません。
自分の名前を、愛してください。
自分のことを、愛してください。
ありきたりなことを言うようですが、皆さんは私たちにとって、日本にとっての宝です。
なぜなら、あなたたちが、新しい名前を持ったあなたたちが、時代を新しくしていくのですから。
それでは。
私の話は終わりです。
卒業、おめでとう。
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