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個人ゲーム開発者向け 初めてゲーム展示イベントに出展するときの準備あれこれ

今回は表題の通り、イベント出展を考えている個人ゲーム開発者の方向けの記事となります。

ここ最近のインディーゲーム熱の高まりやコロナ禍の落ち着きなどで、リアル会場でのゲーム展示イベントが徐々に増えてきました。個人ゲーム開発者でも気軽に出展できるような環境になった一方、イベント出展の経験がなくどのように準備をすればいいかわからないという方も多いと思います。
これまで7-8回のゲームイベントに出展した経験から、事前の準備方法やお役立ち情報などを書いていこうと思います。出展を考えている方々の参考になれば幸いです。

ボードゲームやカードゲームといったアナログゲームの展示イベントも多数ありますが、今回はデジタルゲームに絞ったお話となります。ただ、設営や備品などイベント全般に応用できるノウハウはあるかと思います。

そもそもゲーム展示イベントってどんな感じ?

BitSummitの様子(公式サイトから引用)

ゲーム展示イベントは一般的に発売予定ゲームの試遊やプロモーションの場で、お客さんが自由に展示されているゲームを遊び回れるようになっています。出展者はブースに待機し、お客さんの試遊を案内するのがメインの動き。またイベントによってはグッズなどの物販もできます。PR方法が限られている個人ゲーム開発者にとってはゲームの魅力を直接伝えられ、その場でユーザーのフィードバックが得られる貴重な機会といえるでしょう。

イベント出展前の準備

どのイベントに出展するかを決める

個人ゲーム開発者が参加できるゲーム展示イベントは多数あり、それぞれ特色があります。可能なら実際にお客さんとして参加してみて雰囲気をつかみ、自分のゲームに合ったイベントに出展してみるとよさそうです。
以下、いくつか国内のゲーム展示イベントを紹介します。(情報は2023年5月現在のものです)

東京ゲームショウ
出展料:無料(審査あり)/200,000円~
日本最大級のゲーム展示イベントで、多くの企業が参加します。その中でも個人ゲーム開発者が出展できる枠があり、出展できれば大きなPR効果が見込めます。出展料も相応に高額なのですが特定の条件で無料出展できる枠もあり、狙ってみる価値はあると思います。

BitSummit
出展料:33,000円(学割あり)
毎年京都で開催されるインディーゲームの展示イベント。インディーゲーム中心のイベントとしては日本最大級です。

TOKYO SANDBOX
出展料:20,000円
海外からの出展が多く、パブリッシャーも多く参加する印象のゲームイベント。サイドイベントとしてクリエイターの講演やゲーム大会の開催など、一風変わった施策が特徴です。

デジゲー博
出展料:7,000円~(学割あり)
秋葉原で開催される、同人ゲーム・インディーゲームオンリーの展示イベント。グッズ販売なども多く、他のゲームイベントとは違った独自の雰囲気があります。

東京ゲームダンジョン
出展料:3,300円~
2022年から始まったインディーゲーム展示イベント。出展料の安さやスペースの大きさが魅力で、個人運営ながら注目のイベントとなっています。横浜ゲームダンジョンという姉妹企画もあり、そちらはなんと出展料が無料!

全国エンタメまつり
出展料:無料
岐阜県で行われる、ゲームを中心としたエンターテインメントイベント。商店街アーケードや公園での開催など、かなり他の展示イベントと趣が異なります。

基本的にはイベント開催日の2~3か月程度前に出展の募集が始まります。申し込み後選考があったり抽選だったり、はたまた先着順のイベントもあるため各種イベントの申し込み開始日はしっかりチェックしておきましょう。

イベント当日までに用意するもの

出展予定のゲーム
当然ではありますが、まずは出展するゲームがあることが前提です。イベント申し込み時に出展できる状態にまでなっている必要はなく、むしろイベント開催前まで開発を進めたりブラッシュアップを続けたりというのが普通かと思います。

ブース設営に必要な備品
当日、会場で用意してくれるのは机と椅子くらいでそのほかの設営は自分で行うことになります。
ブースの設営にはゲームの雰囲気やPR方針によって異なる見せ方があるので正解があるわけではありませんが、未経験の方向けに一般的に必要な備品や予算感をまとめました。

PC向けゲームの展示を想定していますが、スマートフォン向けなど他媒体でも応用はできるかと思います。

上記のレイアウトは机スペースにわりと余裕がある場合の配置であり、狭小スペースの場合はもっと備品を削ったほうがいいでしょう。
以下、優先度順に補足説明です。

PC
最悪でもこれだけあれば試遊やPR動画の再生などはできます。基本的にノートPCが推奨ですがまあ……デスクトップPCでも無理ではないとは思います……。(個人で持ち込んでる人いるのかな)
サブPCなど、ゲームの動作に問題なければスペックは特にこだわる必要はありませんが、いつもの開発環境は入れておくとよいでしょう。イベント当日にバグが見つかりその場で修正・ビルドという光景はわりとマジで見かけます。

モニター
ノートPCの画面だとどうしても遠目で目立ちませんが、モニターがあれば遊びやすく、またプレイ中以外のお客さんも画面を眺めることができます。さらにノートPCを内側から見えるように配置して画面を同期しておけばお客さんのプレイを見ながら開発者がアドバイスをする、といった動きもしやすくなります。
15-16インチ程度のモバイルモニターなら比較的安価ですし、20インチ程度あればかなり目立つ展示にできると思います。搬入がやや大変なのがネック……。

テーブルクロス
これがあると一気に展示会らしくなります。素材や柄にこだわってゲームに合わせた雰囲気づくりをしている出展者も見かけますし、あるいは布をそのまま敷くだけでも高い効果が得られます。手芸店などで購入し、机のサイズに合わせた長さにカットしてもらって使うことになるでしょう。
展示会で一般的な長机(幅1,800mm×高さ700mm×奥行600㎜)だとだいたい幅1400mm×長さ3000mmくらいの布が適切なようです。(参考)
東京ゲームダンジョンなど、机が大きいイベントではあらかじめサイズを確認しておくとよいですね。

チラシ・ポスター・名刺など印刷物
配布物は必須ではないのですが、やはり持ち帰れるものがあると後々までチェックしてもらいやすくなります。特に名刺は開発者同士の交流やメディア取材など、あるといざという時に困りません。
チラシは何部くらい刷ればよいか?というのは悩むところですが、ざっくりと「1プレイ5分とするとイベントの6時間で最大72人が試遊できるので100部は必要」のように考えれば概算できます。
イベント会場にチラシを置けるスペースがあったりチラシだけもらっていくお客さんなどもいるかと思いますが、おおむね200部あれば1回のイベントで足りなくなることはないかと思います。

その他細かい備品
POPスタンドやチラシのトレーなど、細かいものはだいたい100円ショップで揃うことが多いです。とはいえ準備している間にあれもこれも必要なことに気づき、100円ショップに何往復もすることにはなりがち……。事前に家で設営の練習をしてみるなどで足りないものをリストアップしておいてまとめて買うとよいでしょう。
また、消耗品やケーブル類などは普段の生活で使っているものを流用してもいいのですが、イベント専用に買っておくのもおすすめです。イベント用の荷物は一度準備すれば次回以降も使いまわせるので、段ボールなどに詰めておいてイベントの時に開けるだけで準備完了という運用もしやすくなります。

荷物の搬入・搬出について

基本的にどのゲームイベントも事前に会場に荷物を配送したり、イベント終了後に会場から自宅に荷物を配送できるサービスがあります。
キャリーケース1台に収まる程度の荷物でもイベント帰りには大変な疲労になるので、予算に余裕があれば積極的な利用をおすすめします。モニターなど大型の荷物がある場合は特に利用したほうがよいです。
配送サービスを利用する場合は1荷物につきおおよそ2000円-3000円程度かかります。

荷物の事前発送
たいてい各イベントの参加案内に事前の発送方法が載っています。
多くはイベント会場の倉庫スペースに一時的に保管する形となり、イベント日の1日~2日前には必ず到着している必要があります。またイベント会場の提携の関係で特定の配送業者でしか受け付けしていない場合が多いです。
各配送業者のウェブページなどからイベント会場に日付指定で発送する送り状を作成し、自宅に集荷に来てもらうことになるでしょう。

会場から自宅へ荷物の発送
これも各イベントの参加案内に載っているか、イベント中もしくはイベント終了後に案内があります。
会場で送り状が配布されるので自宅の住所を記入し、梱包した荷物を発送することになります。
支払いは現地支払いのみだったり着払いが選べたりいろいろ。イベント前にお財布に余裕を持っておきましょう。

もし会場からの発送が間に合わなかった場合などは、ヤマト運輸ではコンビニなどから荷物を発送できるサービスを行っています。(参考)
スマホから自宅の住所を入力・決済し、コンビニに荷物を持ち込むとそのまま宛先に配送してくれます。
コンビニでは預かれる荷物のサイズに上限がありますが展示会に持ち込む程度の荷物であればおおよそ問題ないと思います。


イベント中に気を付けること

体力に注意

だいたいのイベントは設営・撤収を含めると7~8時間程度と長丁場で、慣れないうちはペース配分を見誤りがちです。可能であれば手伝ってくれる方を手配し、イベント中に一時的に代わってもらって休憩や離席ができるようにしましょう。もしどうしても一人で対応しないといけない場合は一時的に離席していることを知らせるパネルなどがあると便利です。

お客さんのフィードバックを記録

もし出展の目的が「今後の開発の参考にお客さんの反応を見たい」ということであれば、プレイ中の反応をしっかり記録しておくことが大事です。どういうユーザー層が遊んでくれているか、楽しそうにしているかなどはもちろん、開発者の意図と違う動きをしていればチュートリアルやゲームデザインの修正が必要だとわかりますし、想定プレイ時間と大きく乖離しているようなら難易度調整が必要かもしれません。
応対しながらこれらを記録しておくのは大変なので、数値でわかる情報はゲーム中に自動保存しておくような仕組みを作っておくとよいと思います。たとえばイベント中の総プレイ回数・クリア率・平均プレイ時間・ゲームオーバーとなったポイントなど。
あるいは直接お客さんにプレイ後アンケートなどで意見をもらってもよいですね。ネガティブな反応はなかなか開発者の前ではしづらいものなので、正直な感想が欲しい場合はQRコードでアクセスできるGoogleアンケートフォームなどを用意するのもよいかもしれません。


イベント用のデモ制作方針

少し方向性の違う内容になりますが、展示するゲームについてもイベントを意識したつくりのデモにするのがよいと思います。
多くのお客さんはあまりそのゲームを知らない状態でやってくるうえ、他にも数多くの出展があるため1つのゲームにかけられる時間はそう多くありません。もちろん出展の意図によって見せたい内容が変わってくるので一概には言えませんが、「どんなゲームなのか」「このゲームの魅力はなにか」がプレイしてすぐ伝わるようなデモが望ましいかなと個人的に思います。
また、お客さんに「自分には合わなかったけど途中でやめづらい」「思ったより長い……」などと思わせないよう、遊ぶ前からある程度内容がわかるような工夫があるとよいですね。たとえば待機中にはオートプレイデモを流しておく、ポスターやPOPで明確にゲームのコンセプトを伝える、おおよそのプレイ時間を掲示しておくなど。このあたりは自分自身がお客さんとして展示イベントに参加することでも見えてくるものがあると思います。


おわりに

以上のようにゲームイベントの出展についてまとめました。ゲーム以外の展示イベントとは少し勝手が違うこともあり、慣れないうちは戸惑うこともあるかと思います。この記事が少しでも出展の助けになれば幸いです。


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