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【転載】Empty Dressyのシステムと思考の変遷

2018/1/1に正式リリースしたEmpty Dressyは、3年の運用を経て、2021/2/21にフルリニューアルしたことを機に、ノーコードツールで自動化されたレンタルドレス店舗Empty Dressyのシステムや思考の変遷をご紹介します。

※ この記事は別サイトで2021/3/18に投稿されたものを、2021/10/17にnoteに移行したものになります。

Empty Dressy

Empty Dressyは、渋谷にある無人のレンタルドレス店舗です。

結婚式のゲストや謝恩会、その他パーティーに最適なドレスをレンタルしていて、無人ならではの特徴があります。

・無人だから、1週間一律3,480円
・無人だから、年中無休で24時間営業
・無人だから、何度でも試着可能

先を読み進めるに当たり、基本的な流れを解説する動画を事前にご覧いただくと、理解が捗るかと思います。

v1.0(2018/1/1)

エンプティ株式会社は2017/10/20に、知人女性と設立、無人のレンタルドレス事業を開始し、2018/1/1に正式にリリースしました。

当初はさくらのレンタルサーバーを使い、WordPressでWebサイトをつくり、Stripeのプラグインで決済を受け付け、注文情報はメールとエクセルで管理をしていました。

Google Sheetsすら使っていませんでした。

ただ、さくらはあまりにも遅かったので、すぐにエックスサーバーに移ります。

私自身Web系の会社に新卒で入社し、基本的なHTMLやCSS、SQLには触れていたのですが、一般的なWebサービスがどのように成り立っているかも知らず、全てが手探りでした。

サーバーの移転にいたっては、もはや一世一代の賭けのような心地でした。

いつか自動化しようと思いつつも、しかたは全く分からない、でもとりあえずやってみようということで、そんな状態でEmpty Dressyは始まりました。

v1.1 注文情報がDBに(2018/2/6)

2017年末には同期の友人エンジニアを誘い、エックスサーバー上に管理システムをつくり始め、2018/2/6にリリースしました。

ユーザーにWordPressで入力いただいたカレンダー情報等をStripeのWebhookで受け取り、それらがDBに自動的に保存されることで、今までメールを確認し、手作業でエクセルにコピペしていた作業がなくなりました。

管理システムは、エンジニアが開発経験の多かったCakePHPで開発されることになります。

phpMyAdminから注文情報を確認できたときは、ただそれだけなのに、なんだかとてもすごいことをしている気がしました。

リリース後は自動的に鍵が発行されるようにしようと思ったのですが、当初使っていたQrioはAPIを提供していなかったため、他のスマートロックを探すことになります。

この辺りで、エンジニアに頑張って説明してもらって、APIやWebhookという言葉をようやく脳で感じることができるようになりました。

v1.2 鍵を自動発行(2018/3/19)

スマートロックについては、Qrioの法人向けサービスのカギカンやアメリカのRemoteLockというサービスが検討対象に上がりました。

RemoteLockはドアに初期工事が必要なため不安もありましたが、ユーザーがアプリやブラウザを開かなくても物理的なボタンから解錠が可能なことや、日本の代理店のレスが早かったこともあり、導入を決めました。

RemoteLock導入直後にカギカンはAPIの提供を止めており、一方、RemoteLockは新しいハードウェアを出すなど改善を進めているので、結果的に良い選択となりました。

2018/3/19、管理システムをアップデートし、StripeのWebhookから、RemoteLockのAPIを通じて鍵が自動で発行され、ユーザーにメールがとぶようになります。

同時期には、DBの情報が管理システムのカレンダーを通じて更新できるようになりました。

ただ、売上は思うように伸びず、設立からちょうど半年後の2018年4月末、エンジニアと共同創業者の女性はエンプティ株式会社を離れることになりました。

当時のシステム構成は以下のような感じです。

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v1.3 CrowdWorksで細かい改善(2018/9/21)

会社は一人になったものの、顧客からのフィードバックはとても素晴らしく、売上も徐々にではありますが、右肩上がりに増えていきました。

決済から鍵の発行までは自動化されたものの、手動対応は依然と多いし、細かいところも粗だらけで、売上の拡大とともにシステムの改善が必要になってきました。

エンジニアに作ってもらったシステムを自分自身で勉強しつつ修正することも考えましたが、本業があり、Empty Dressyのオペレーションにも時間が割かれ、プログラミング経験の乏しい私には到底無理だとすぐに考えるようになりました。

そこで、改修要件を最小限に留め、CrowdWorksで発注することにします。

抜本的な回収というよりは、表示やプラスαのちょっとした機能の追加程度だったのですが、私自身がふわっと考えて、Slackで随時話しながら作ってもらったシステムには、仕様もまとまっておらず、クラウドワーカーさんとのやりとりに非常に時間がかかり、また、揉めました。

この頃から、このサービスをより良いものにしていくためには、自分自身で開発するしかないと思うようになります。

v2.0(2021/2/21)

JavaScript

Empty Dressy1.3以降、1年半もの間、売上の拡大に伴いオペレーションの改善はしつつも、システムの改善はありませんでした。

2020年1月、既にEmpty Dressy一本でも生活ができるようになり、サービスを続けつつも、自分自身で全てのシステムを作り変えるために、CodecademyでJavaScriptを勉強することにしました。

しかし、間もなくコロナが流行し、ハレノヒに着ていくドレスをレンタルしている弊社のビジネスの売上は文字通りゼロになります。

当然、生活が立ち行かなくなり、2020年8月、勉強を中断し、再度とある会社にお世話になることになりました。

Shopify

その会社では、新規事業の関係で、Shopifyを触る機会を得ました。

Shopifyの機能や拡張性に感銘を受け、メディアとしてのWordPressと、Stripeのプラグインが担っていた決済機能のそれぞれをShopifyで置き換えることができると考えるようになります。

Shopifyで置き換えることにより、Webサイトの表示速度が改善され、細かい機能も自分自身で追加したり、決済手段も増やしたりできると考え、土日を中心にShopifyを軸とした調査を始めました。

Integromat

当初は、v1.3と同等の機能をShopifyで実現させるに当たり、Shopifyのデータをいかに既存のDBやRemoteLockに繋げるられるか、を考えていました。

そこで、iPassというカテゴリーを知り、ZapierやAutomate、IFTTT、Integromat等が候補に上がります。

日本ではZapierが流行っていそうでしたが、海外のブログやYouTubeを見ると、Integromatの方が難しいけれど多機能というのが共通認識のようだったので、とりあえずIntegromatを使うことにしました。

ツールへの理解は置いておいて、YouTubeの公式動画を一通り流し見すると、JavaScript(Node.js)で勉強したことのほとんどを実現できるのではないかという想いにいたり、スコープを大きく広げ、やりたいと思えることを全て実現するという方向に切り替えました。

LIFF(LINE)

スコープを広げるに当たり、一番実現したかったことは、LINEの自動化でした。

LINEでのコミュニケーションが、ユーザーにとって支持されていたことは明白であり、それが私にとっては負担であり、ユーザー数と比例して増えてしまうことにわくわくできていなかったことも明白でした。

どのようにShopifyの注文とLINEのIDを繋げるかについて検討を重ねる過程で、LIFF(LINE Front-end Framework)と出会います。

LIFFを活用することで、最大の懸念であったShopifyとLINEのIDの連携がなんとかできそうだと分かり、リニューアルは実現しそうだという手応えを得ました。

Airtable

レンタルビジネスは通常のECとは異なり、発送後のステータス管理が必要で、実店舗が絡むと、それはより困難になります。

それらを無理やりShopifyのDBで管理することも検討しましたが、その場合には、弊社スタッフが操作するWebアプリケーションを別につくる必要があり、面倒だなと思っていたところ、Airtableを思い出しました。

Airtableは、2020年9月に25億8500万ドルの調達後評価額で資金調達を行った後ということもあり、そのニュースを聞いたときはGoogle Sheetsの劣化版と思っていたのですが、評価額がすごかったので何かしらあるだろうと思い、色々と触り始めることにします。

同じデータをカレンダーやカンバン形式で見せるビュー、全体的にお洒落、充実のAPI、権限の細かい設定、Google Sheetsの劣化版ではないことに気付き、他に良さそうな競合サービスもなかったので、AirtableをDB兼管理システムとして使うことにしました。

Webflow

上記の全てのアプリケーションが使い始めたばかりということもあり、他にイケてるサービスはないかと調査した中で発見したのがWebflowです。

元々使っていたWordPressや国産のSTUDIO、Shopifyのページカスタマイズと比べ、柔軟性や表示速等、あらゆる点が勝っていると感じ、WebflowとShopifyを併用することにしました。

以上を踏まえ考えた新しいシステム構成がこちらです。

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開発

2020年12月には、時間をかければ開発できるという実感を得ていたので、働いて半年しか経っていない会社を辞めることにし、2021年1月中旬から本格的に開発を始めました。

上記ツールは使い始めたばかりで、開発前に全ての機能を理解しているわけではなかったので、仕様書やワイヤーフレームは書かずに手を動かし始めました。

当時、頭に思い描いていたことは、下記のようなイメージです。

・WebflowのCMSでメディアをつくり
・LINEのボットアカウントに送客し
・ShopifyをLIFFで立ち上げることでLINEのIDを取得し
・そのまま決済までしていただき
・それぞれの情報はAirtableに格納し
・LINEで鍵情報をユーザーに伝え
・ユーザーが注文情報のステータスをLINEで自動的に処理できるようにする

そして1ヶ月後の2021/2/21、Empty Dressy v2.0は無事リリースされました。

ユーザーのフィードバックを参考に随時改善を重ねているところです。

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