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政策起業とロビイングの違いについて(4)

日本になぜ政策起業家が求められるのかの理解を助けてくれる良書。

現在の日本の政治状況や官僚主義から官邸主義への流れ、
政治の意思決定が「利益の再分配」から「不利益の再分配」をしなければならなくなっている社会情勢、官僚と国会議員の思考方法やロジックの違いなどを丁寧に解きほぐしながら、日本の政治のあり方や政策起業家的な活動をする人の必要性を書いてある本です。よければぜひ読んでみてください^^

さて、「旧ロビー活動」は「あまりに私益だけ」を求めすぎたがあまりに、1980年〜90年ごろに批判にされてきたことから「新ロビー活動」が生まれてきました。しかしあくまでもロビー活動は「私益」が出発点であり、政策起業は「公益」が出発点であることが大きな違いであると整理をしました。

今日は定義の難しい「公益」について少しだけ深めてみたいと思います。

「公益」を定義することは非常に難しいのですが、こちらの本が非常に参考になります。

「社会的共通資本」とは、「一つの国ないし特定の地域にすむ全ての人々が、豊かな経済生活を営み、優れた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する」とされ、
具体的には、3つあり、
(1)自然環境(大気、森林、河川、水、土壌など)
(2)社会的インフラストラクチャー(道路、交通機関、上下水道、電力、ガス
(3)制度資本(教育、医療、司法、金融制度など)
とされています。
統一的なものはなく、「それぞれの国ないし地域の自然的、歴史的、文化的、社会的、経済的、技術的諸要因に依存して、政治的なプロセスを経て決められるもの」とされています。
重要なのは、「利潤追求の対象として市場的な条件によって左右されてはならない」という点であり、このことが「新ロビー活動」と「政策起業」の大きな違いの一つであると考えます。

またソーシャルイノベーションの専門誌であるこちらの「誰が市民社会の基盤を守るのか」にはこのような記述があります。

 フィランソロピーが解決しようとしている社会課題のほとんどは、予測不可能で、無数の変数が存在し、対照実験の条件が揃わず、期間を区切った取り組みにそぐわないものだ。
資本主義的な科学的アプローチ、功利的なアプローチと対立する。
公教育の改善、若者の育成、コミュニティの組織化、高齢化対策、芸術、政策アドボカシーなど。

市場的な条件に左右されてはならないものが、市場に組み込まれてきたことで社会課題化してきた背景があることが窺えます。
そのようなものは市場原理では解決し得ないことから、
政策起業が求められていると考えると、政策起業の領域は、ある程度限定されることが想定されます

次では、パブリックアフェアーズやアドボカシーとの違いなども整理をしていきたいと思います。

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参考

宇沢弘文(2000)『社会的共通資本』岩波新書

SSIR Japan(2022)『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本語版01-ソーシャルイノベーションの始め方』英治出版

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これまでの政策起業家に関する記事一覧はこちらになります。

また、政策起業家の行動原理など、海外の30年間の研究蓄積がまとまっている書籍の翻訳本の出版を行います。30年分の差を、この1冊で埋められるとは思っていませんが、少しでも日本で早く「政策起業」が拡がればという思いでいます。

最後までお読みいただきありがとうございます。
日本では「政策起業家」に関する研究が非常に遅れています。
研究を応援いただける場合には、
「サポート」していただけますと大変嬉しく思います。
サポート資金は全額、「博士後期課程」への進学資金にさせていただき、
更なる政策起業家研究に使わせていただければと思います。
どうぞよろしくお願いします。

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