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日本の近代政治と政策起業家(後編)

内閣府から先日、
「地域の新たな担い手としての移住起業者に関する分析 -実態と課題、地域活性化への影響について-」というレポートが出されました。
私も「移住起業者」の事例としてPDFの102ページで紹介していただいているのと、個別ヒアリングの項目でコメントを掲載していただいています^^

私の場合はそこから政策に関わるということをして、政策起業家としての起業者だと捉えています。またそれは複数名、この東北の地にはいます。

地方では特にプレイヤーが不足しています。少子高齢化の影響で、従来の自治機能が機能しなくなり、若手人材が求められていることもあります。
議員の成り手がいない中で政策人材が育つ土壌がないのが事実だと思います。そのような中で、東日本大震災をきっかけに移住した若者が私も含め、ある一定数いました
彼らがプレイヤーとして行政と繋がり共創し、その結果政策リテラシーが高まり、様々な政策を提案、行政とともに実施しました。
基礎自治体の予算だけでなく、広域自治体、国の政策や予算をも把握し、基礎自治体の行政職員に情報提供、ディスカッション、提案を行って政策起業を実現していったのだと思います。

この東日本大震災で生まれた教訓や萌芽を、日本の社会変革へと結びつけていければと思っています。

さて前回までに「威」の時代、「富」の時代を見て、そして現代「知」の時代に突入してきていることを記述しました。
「知」の時代における政策評価法の登場とEBPM(Evidence Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)を整理してまとめていきたいと思います。

政策評価の法が施行されましたが、「スキームは法律によって義務づけされ、安定的なものとなっており、評価対象も各行政期間の政策を広くカバーされている。しかし、その運用-目的と手段の論理的関係を整理して政策の設計図を作るプロセス、そして客観的なデータに基づいてそれを検証する効果検証の手法-については、まだまだ不十分で道半ばと言わざるを得ない」とされています。
つまり、2002年に法律が制定されたのですが、社会実装がなされているかというとまだまだだと言わざるを得ません

このような中で、EBPMへの注目が高まります。

 そもそもEBPMはイギリスのブレア政権(1997年〜2007年)時代に推進されたことから世界的に広まりつつあります。イギリスでは、1930年代の福祉国家時代は経済の力が削がれました。その後サッチャー時代の新自由主義の結果、経済的に復興しましたが、貧富の差の拡大が問題視されるようになリマした。その両立を目指す目的でEBPMが推進されたのです。つまり、新自由主義的アプローチで経済の活力を維持すると同時に、熾烈な経済競争に対する手当としての福祉国家的な社会的セーフティーネットも充実させることを狙ったのです。

 アメリカではオバマ政権期(2009年〜2017年)に推進されました。オバマ政権発足時にOMB(office of Management and Budget)(財務省的な)が各省庁に対して、「既存のエビデンスの棚卸しとウェブでの公開」「省庁横断のEBPMワーキンググループの設置」「新規エビデンス創出に向けた新プログラムの募集・別枠予算の用意によるインセンティブ付け」を行なったことは有名です。

このような世界の流れとも相まって、日本においては、「2016年ごろからエビデンスに基づく政策立案、EBPM(Evidence Based Policy Making)が政府や与党の文章に登場するようになり、自民党の行政改革推進本部で提言などがなされるようになっている」のが日本の流れです。

 このように日本の政策決定の外部環境は変化をしてきており、現代においては「知」がコアとなり、縦割りネットワークを横断することで寡占的体質が大きく変化せざるを得ず、より多くの意見(不満)が出るようになる中で、エビデンスに基づく政策立案が思考されてきています。また、「人口減少社会、少子高齢化社会の中で『全ての人に不都合のない意思決定』ができない問題が山積している」のが現代社会であり、その中で政策決定のプロセスや方法も変化を求められています。

 この状況はまさに政治や政策にイノベーションが必要になっていることを物語っています社会課題は複雑化し、課題の当事者も多様である中で、現場で活動し、その声を政治に届ける、そして現場で形にし、影響を拡げていくというサイクルを構築できる政策起業家の存在は注目に値するのではないかと思うのです。

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参考文献

小倉將信(2020)『EBPM[エビデンス(証拠・根拠)に基づく政策立案]とは何か―令和の新たな政策形成』中央公論事業出版

千正康裕(2021)『官邸は今日も間違える』新潮社

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これまでの政策起業家に関する記事はこちらから見ることができます。

また、政策起業家の行動原理など、海外の30年間の研究蓄積がまとまっている書籍の翻訳本の出版を行います。30年分の差を、この1冊で埋められるとは思っていませんが、少しでも日本で早く「政策起業」が拡がればという思いでいます。

また、2022年4月21日にABEMAニュースにて、書籍の紹介をしていただきました!12分にまとめっていて非常にわかりやすいのでよければぜひご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございます。
日本では「政策起業家」に関する研究が非常に遅れています。
研究を応援いただける場合には、
「サポート」していただけますと大変嬉しく思います。
サポート資金は全額、「博士後期課程」への進学資金にさせていただき、
更なる政策起業家研究に使わせていただければと思います。
どうぞよろしくお願いします。

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