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楽天Gの繰延税金資産の取崩しは終わりの始まり?いや、私は今回のケースはこう考える!

先日X(旧Twitter)を見ていたら、こんな言葉が流れてきた。
「あちゃー、これはもうあかんかもしれんね」
何かと思ったら、楽天の連結会計での繰延税金資産の取り崩しのお知らせだった。

そのポスト(ツイート)のツリーを見ていたら、「どういうことか分からない」というようなコメントもあったので、今日は(珍しく)会計士らしくこの内容を取り上げようと思う。

まず繰延税金資産とはなにか?それを理解してもらうために、まずは会計と税務の差異を説明しよう。

会計上(決算書上)は経費になるけれども、税務上は経費にならないものというのがある。例えば交際費の否認や減価償却費の会計上と税務上認められる金額の差異


会計上認められる経費と税務上認められる経費では差が生じる

交際費が否認された分は税務上未来永劫、税務上経費とされることはない。これを「永久差異」という。

しかし、減価償却費の差異、例えば100万円で買った機械を税務上は10年で償却(経費化)しなさい、でも会社としては5年しか使えないと思っているので、5年で償却(経費化)しようとすると、その金額に差異が生じる。

定額法を前提に考えると
・税務上:100万円÷10年=10万円
・会計上:100万円÷5年  =20万円
ということで、毎年10万円ずつ差異が生じてきて、税務ではその差の10万円は税務上の経費と認められない。

しかし、会社の思惑が外れて6年目以降もその機械を使っていたら?会計上は全額経費化されて経費になる分がもうないのに対して、税務上はまだ経費化できる部分がある。その部分を6年目以降税務上の経費として認める(認容)するという処理になる。

つまり一時的に差が生じている状態だ。こういうのを一時差異という。この「一時差異は将来税金を安くする効果を持っている」ので税率を掛けた分を資産(会社の財産)としてみなそうというのが繰延税金資産だ。

ここで、税金というのは黒字の時に発生するが、マイナスになっても(原則)還付されることはない。つまり…
将来(税務上の)利益が出なければ税金下げる効果もない
赤字で追加の経費を引いても赤字が広がるだけだからね。その分税金が返ってきたりはしない。

繰延税金資産の話をしたところで、冒頭の楽天の話に戻ろう。繰延税金資産が「取崩し」されるということは…
将来十分な(税務上の)利益が出ないと判断した
ということになるのだ。

これで「あかんかもしれん」と言った人に言葉が分かる。「十分な利益が出ない」と会社が(監査法人かもしれないが)言っているようなものなので。

なんか業績が急にダウンする要素が出た!?
とか思うよね。

そう私も思ったので簡単に調べてみたところ、こんな記事があった。

(理由の全てか分からないが)今回の取り崩しの理由が、
楽天銀行が上場に伴ってグループ通算税制(旧連結納税)から抜けるため
ということらしい。

グループ通算税制は簡単に説明すると、税務上グループとみなされる企業間の損益を通算できる制度。例えば楽天のEC会社が黒字でモバイル会社が赤字なら合算して税金を計算できますよ、ということだ。

楽天モバイルが相当赤字のようだが、それを他社の黒字で補填してグループ全体で将来十分な(税務上の)利益が出ると考えていたところ、楽天銀行の上場に伴ってその十分性が一部崩れたということだろう。

楽天の前期の決算書を見ると、今回取り崩す700億円は繰延税金資産の一部であり、まだ相当金額残ることになりそうだ。

それに、元々厳しいと思われる一時差異を繰延税金資産としては計上していないようで、(一部の)繰延税金資産が計上できないという状態は元からあったことだ。

楽天モバイル中心に、楽天グループが厳しいのはその通り。赤字幅が前期よりは縮小しているようだが、楽観視できる状態ではない。黒字予想もまた遠のいているようだしね。

だけど、少なくとも今回の繰延税金資産の取り崩しは、突発的な悪影響が起きたわけではないということではないだろうか。

まあ、厳しいのは変わりないんだけどね。
楽天モバイルへの投資はかなり厳しかったのでは…と思うが今後楽天さんどう巻き返しを図るのだろうか?注目していきたい。

最後まで読んでくれてありがとう!!
vol.2077


意思決定インストラクター
FSAコンサルティング株式会社 代表取締役 谷川俊太郎

まずは経理情報を経営の羅針盤情報に
そして経営をシンプルに考えられる理論
・佐藤義典先生の戦略BASiCS
・MG(マネジメントゲーム)
・TOC
この3つのシンプル経営理論を駆使し企業改革の後押しを行う「意思決定インストラクター」として福井で企業をお手伝い中!

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