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ぼくの企画書は、ちゃんとラブレターになってるか。


分析じみたことは野暮だし、しないほうがいいと思うのだけど、1ヶ月ぐらい感動しつづけてることがあるので書きたい。


・・・


ぼくは、深夜ラジオをいくつか聴いている。その中で、特に面白いと思う番組がある。それがニッポン放送で水曜(日付かわって木曜)深夜3時からやっている『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』だ。

番組では、テレビ東京のプロデューサーである佐久間宣行さんが、テレビの裏側や、最新エンタメを語る。毎週、ガハガハと笑ってしまう内容や、興味深い映画や舞台の話が聴けるので、水曜日だけは一度睡眠してからモゾモゾと起きて番組を聴いている。




で、感動しつづけてる話をする。

ぼくは、この番組でやっている『企画書はラブレター』というコーナーが大好きだ。リスナーが、テレビや漫画など、とにかく色んな企画を考えて、佐久間さんにぶつけるという内容なのだが、とにかく自由度が高い。

「まじでやったらええやん」と思うようなテレビ番組の企画や、「そんなもんできるかぁ」と思うようなお下劣な企画まで、あらゆる企画書というラブレターが毎週届く。

佐久間さんは、それをただ読み上げるだけではなく、『なぜ、それが面白いと思ったのか』『もっと面白くするには、こんな広げ方がある』といったコメントをガハガハ笑いながらコメントする。

余談だけど、このコーナーを通じて、ぼくは『面白い企画』の法則を解き明かそうとしている。受験生でもないのに、深夜3時に勉強をしているのだ。


2月の特別ゲストは、はんにゃ金田さんと、フルーツポンチ村上さん

佐久間さんがプロデューサーを務めた番組『ピラメキーノ』に出演していた芸人さんを2人呼んだ回。いつものように、『企画書はラブレター』のコーナーは開催された。

縛りはひとつ、「金田さんと村上さんが出演する企画をつくること」。


コーナーの最初、送っていた自分の企画が読まれた。

以下、送ったものそのまま。


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高卒なのに大学生ノリのはんにゃ金田と、大卒なのに中2ノリのフルポン村上が、今どきの大学生はどんな感じなのかを、1週間大学に通うことで学ぶ企画。

「おれたち芸人留学生」

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普通にいい企画が来た、と佐久間さんもゲストの2人も言ってくれた。でも、このコーナーの魅力は、ここからのコメントにある。

話題は、大学生みたいなノリなのに高卒という金田さんのキャラクターへ向く。もちろん、ぼくもそれを分かった上で送っているので、聴きながら「うまく企画にできてよかったぁ〜」とホッとする。


そんな中、佐久間さんが村上さんに話をふる。


「村上はあれでしょ、中2ノリだから、中学のそういうとこに行くんでしょ?」


「え、どういうこと?」といった感じで、一瞬、村上さんが答えにつまる。聴いている自分も、まったく同じリアクションをしていた。

時間があれば、さっきのメール本文を見直してほしい。

ぼくが考えた企画は、金田さん村上さん、2人ともが大学に通い、今どきの大学について学ぶという内容だった。メールの文面もそうだし、聞いていた村上さんも、自身が大学に通うと思っていたようだった。


スタジオに「?」が充満し、一瞬流れが止まりそうになる。

その空気を察してか、佐久間さんはすぐにコメントを引っ込めた。なんとなく、ややこしい話にすることを避けたような気がした。そして、村上さんが「行くんなら、芸大みたいなギラギラしたところがいい」と、中2全開のコメントを残して次のメールへうつった。


番組はつづく。でも、ぼくはどうして佐久間さんが「村上さんは中学へ行く」とコメントしたのか気になって仕方なかった。


そして深夜4時半に「ハッ」とした。


そっちのほうが、ずっと企画が深くなるのだ。

高卒の金田さんが、大学に通うのは意味がある。でも、大学を知っている村上さんが、大学に通う意味は金田さんほどない。

ぼくが、中2ノリというワードをメールに入れたのは、金田さんだけの企画にしたくないという思いと、「高卒なのに大学ノリ」「大卒なのに中2ノリ」という対句を作りたかった意味合いが大きい。

だから、考えれば考えるほど、村上さんの存在感が浮いてしまう。


推測だが佐久間さんは、都合が生んだ小さい違和感を読み取ったのだと思う。

だからこそ、「中2ノリの村上さんは中学へ行く」になるのだ。

両者の行動に、同等の意味をもたせる。こうすることで、企画がグッと深くなる。一方通行の企画ではなく、ふたりが別々のフィールドへ向かうほうが、面白いものに出会う可能性がずっと高くなる。


きっと佐久間さんは、そう思ったのだ。でも、良い感じで盛り上がっている番組の流れを止めないように、サッと引いたのだ。この判断が、またすごい。


テレビの企画をずっと考え続けてきた人の思考の深さ。スタジオのフロアで「このカンペを出すべきか、出さないべきか」を判断するバランス感覚。

その両方を見た瞬間だった。あの日から未だに、ぼくはその1分そこらに感動しつづけている。



先日、番組改編の発表があった。うれしいことに、佐久間宣行のオールナイトニッポン0は無事に来年も放送される。

これからも深夜3時に起きて勉強できる。企画の通信教育を受けられると思うと、ワクワクしてたまらない。


ぼくの企画書は、本当にラブレターになっているのか。作り手のご都合主義が見え隠れしていないか。

本来の趣旨と合ってるかどうか分かんないけど、これからも考えながら、番組にメールを送りたいと思う。





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