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日本初イノベーション地区創設を目指す長岡市を見て感じた可能性

新潟県長岡市は内閣府地方創生推進事務局、東京大学連携研究機構不動産イノベーション研究センター(CREI)と研究連携協力して、日本初の「イノベーション地区」の創設を目指し3月30日、協定を締結。
「米百俵プレイス ミライエ長岡」を拠点とした中心市街地からイノベーションが波及するまちづくりを目指し、実証研究を展開しているとのこと。

そのキックオフイベントに呼ばれて講演と市内の視察に参加してきた。ちなみに新潟には全く縁がなく今回初訪問。なぜ私が呼ばれて参加したかといえば元国交省不動産建設経済局長で現内閣府地方創生事務局長青木さん、元国交省不動産市場整備課長で現東京大学CREIの武藤先生と以前からご一緒していた縁での参加。

しかし、なぜ長岡?という疑問が正直あった。新幹線で長岡駅に到着。東京から2時間弱。
小雨の中案内されるととにかく街中が茶色い。あたり一面の道路がオレンジ色。なぜかと思えば冬は豪雪地帯で1メートル近くの雪が積もる為地下水で除雪がされる。その際に地下水の鉄分が酸化して街中がさびついているような色になるそうだ。

街中に人はおらず閑散としていて古い建物も多い。おまけに道も茶色い。ここがイノベーション都市になれるのか。。そう考えながら案内されたアオーレ長岡という長岡駅直結の市役所も入る複合施設。開放的なデザインで市役所のオフィスも議会も見える。体育館や店舗もあるが人口30万人弱である長岡市でありながなんとこのアオーレには年間100万人以上が訪れる。すごい。アオーレとは新潟の方言で会いましょうという意味らしい。
人が気軽に立ち寄れるようにオープンかつ気軽に休める場所を作りそうした思想がベンチ含めて細かなところに配慮されている。地方自治体が取り組むハコモノ投資ではおそらく日本トップレベルの成功事例かと思われる。

そして現在は駅周辺の大型再開発でミライエという施設が建設中で来年竣工とのこと。ここにイノベーション地区というスタートアップやイノベーション創出の官民拠点を整備したい、ということらしい。

この手の話は日本のみならず世界各地で行われており、とにかく競争が激しい。人材の争奪戦だ。私もサンフランシスコ、シリコンバレーはもちろんパリ、ニューヨーク、ロンドン、上海、シンガポール、ルクセンブルクとあらゆる都市とスタートアップ支援施策を見てきているがとにかくどこの街でもチャレンジする人を求めている。

弊社がオフィスを構える日本橋茅場町、兜町においても再開発に合わせてFintechスタートアップの誘致を行い、この5年で街の雰囲気もガラリと変わり多くのスタートアップがオフィスを構えた。

そんな中、単にイノベーションやスタートアップ支援を掲げても人は簡単に集まらない。これは商売と同じで、拠点整備をする行政も地区としての「商品力」と「仕入れ力」を意識する必要がある。スタートアップ支援を行うのでたれば金銭的なメリットや、創業支援を行う特定領域のテーマなどなんらかの取り組みテーマが必要。また、それらのテーマに合わせてエコシステムを形成する人材を呼び込む仕入れ力が必要になる。

ハードのハコモノだけ作っても起業家やスタートアップを誘致するのは非常に難しい。観光地とはまた違うので自然的資源にばかり頼るのも現実的ではない。そんな中長岡には大きなアドバンテージがあったように見えた。長岡大学や長岡高専をはじめとする4大学1高専の存在だ。ちょうどこれらの学校の中間が長岡駅であり現在のコワーキングスペースなどの立地エリアとなる。コワーキングスペースはまだまだ学生や起業家予備軍を誘致中で、活動4年目にして少しずつ成果が出てきているということだった。

となれば東京など都心部の最先端の情報、人材と長岡の各学生を結ぶハブ的な機能を長岡市が担うことができれば面白い。東京からもアクセスが良く、優秀な理系人材にアクセスできるとなればイノベーションはさておき創業者やエンジニアの輩出は加速しそう。
市長には一つ、コミュニティマネージャーへの積極投資をお願いした。コミュニティの成功可否は結局は人が握っており、立派で綺麗なコワーキングスペースだけでは集まらない。本気の人が本気の人を呼び込むので、長岡が大好きな人を見つけてそのコミュニティマネージャーを東京、大阪、京都、福岡はもちろん各国のスタートアップエコシステムに出向かせてたくさん吸収し、かつ外部コミュニティとの橋渡しを地道に行うことが遠いようで最も近いスタートアップコミュニティ創設の道だと思う。
先の茅場町の例もデベロッパーの若手担当者が本気で熱く、地道にスタートアップ関係者と関係を構築して積み上げてきたことが大きな成功要素だと思う。

今回私も青木さん、武藤先生に呼ばれたから参加したのであって、結局は人のつながり。というわけで口だけも良くないので今回出会った山古志NFTの皆さんと早速長岡でWeb3イベントをやることを本日すぐに決定。こういうスピード感で立ち上げていける場所と、人材の供給源となるような学校とのアクセスが良い地方都市はチャンスがまだまだありそうだ。

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