見出し画像

Plug and Playの考える未来都市(スマートシティ)

こんにちは、shumpsです。

Plug and Play Japanは本日、大阪拠点及びSmart Citiesプログラムの立ち上げを発表しました(プレスリリースはこちら)。大阪拠点は東京、京都に続き、日本における3拠点目のオフィスとなります。新拠点の立ち上げに際して、特に関西の産官学の皆様からご賛同、ご協力、ご支援を頂き、以下7社のコーポレート・パートナー企業様とローンチする運びとなりました。

画像13

日本では、内閣府の第5期科学技術基本計画(2016年~2020年度)において「Society 5.0」が目指すべき未来社会の姿として提唱された事もあり、各地域にて最先端技術の社会実装及びモデル都市の構築に関する取り組みが行われています。関西では、大阪が最先端技術のお披露目の場となる2025年大阪・関西万博の開催を背景に、府全体でスマートシティへの取り組みを推進しており、昨年より「大阪スマートシティ戦略会議」を実施しています。今年8月にはスマートシティ推進に向けて産官学による「大阪スマートシティパートナーズフォーラム」も立ち上げる予定であり、最先端技術を活用した街づくりの更なる加速が期待出来るでしょう。

しかし、スマートシティの概念はその時代における最先端技術や未来都市のあるべき姿によって常に変化し続けるため、その定義は極めて曖昧です。この記事では国内外の最新事例をご紹介するとともに、世界中でSmart Citiesプログラムを展開するPlug and Playの考える未来都市(スマートシティ)に関してお話し出来ればと思います。

1. スマートシティとは。そして何故、今なのか?

前述の通りスマートシティの定義は様々なものがありますが、あくまで一例として、国土交通省が使用している定義は以下となります。

『都市の抱える諸課題に対して、ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区』

スクリーンショット 2020-07-13 8.26.58

(国土交通省:スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】資料)

スマートシティという言葉は10年以上も前から使われており、最先端技術を活用した未来都市の概念が普及した背景には、世界的な環境問題への意識の高まりや国内における人口減少及び少子高齢化があります。2010年には「エネルギー分野特化型」事業として横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)、2012年には「非常事態分野特化型」事業として長野県塩尻市におけるICT街づくり推進事業等、個別分野特化型のプロジェクトが過去に複数実行されてきました。しかし、これらの取り組みの多くは、最先端技術の実証実験を主要目的とした「テクノロジードリブン型」の設計になっていたため、実証実験が終わった時点で完結してしまっていました。

一方、近年のスマートシティに関する取り組みは、「エネルギー」、「モビリティ」、「ヘルスケア」、「ホスピタリティ」、「サステナビリティ」等の複数分野に産官学で幅広く取り組む「分野横断型」のものが増えてきています。これらの取り組みは、街における社会課題を最初に特定し、その後、採用する技術を決める「課題ドリブン型」となっています。政府・自治体、企業、大学・研究機関が一体となり、住民を中心とした街づくりに長期的に取り組む準備が整った今だからこそ、スマートシティを通して社会課題を解決するチャンスが訪れていると言えます。

2-1. 国内事例①:TOYOTA WOVEN CITY

年始に開催された米国ラスベガスのCES2020にてトヨタ自動車が発表したコネクティッド・シティ・プロジェクト「WOVEN CITY」は一際注目を浴びました。2020年末に閉鎖予定である静岡県裾野市の東富士工場跡地を利用し、将来的にはトヨタ自動車の従業員を含む2,000名程の住民が暮らせる未来都市の構築をゼロベースで目指しています。以下のコンセプト動画からも読み取れる通り、街には自動運転、マイクロモビリティ、ドローン、IoT等の最先端技術が組み込まれる予定です。

(YouTube:トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト)

トヨタ自動車は2018年のソフトバンクグループとの事業提携に続き、今年3月にはNTTとの資本・業務提携も発表しており、「CASE」領域における外部連携を加速しています。新型コロナウイルスが猛威を振るう中、直近の2020年3月期決算説明会においても、WOVEN CITYに関する質疑に対して「やりぬくこと、やり続けることだと思っている。お客様のニーズの変化によって細部の変更はあるかもしれないが、大きな計画の変更はない」としています。

2-2. 国内事例②:大丸有スマートシティビジョン

Woven Cityのようにゼロベースで未来都市の開発を勧める取り組みとは対象的に、既存都市のスマートシティ化に関する取り組みも存在します。大手町・丸の内・有楽町地区 スマートシティ推進コンソーシアムは今年3月、2040年を完成期とする大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティビジョン・実行計画を発表しています。

実行計画の中で特に言及されていたのが、「大丸有版MaaS」です。都心における歩行者と共存可能なグリーンモビリティやパーソナルモビリティを導入することで、地上及び地下におけるマルチモーダルな移動手段の実現を謳っています。この様な既存都市のモデルチェンジが日本で実現すれば、既存のインフラを抱える先進国に対して技術やノウハウを横展開する事も可能となるでしょう。

スクリーンショット 2020-07-13 12.58.29

(出典:大手町・丸の内・有楽町地区 スマートシティ推進コンソーシアム)

3-1. 海外事例①:シンガポール

シンガポールは国家として2014年より「スマートネイション構想」に取り組んでおり、2019年には「IMDスマート・シティ・インデックス」にて、世界で最もスマートな都市として評されました。本構想の中で注目すべき最先端技術として、AI、データサイエンス、サイバーセキュリティ、イマーシブメディアを挙げており、特にAI分野に関しては2017年に国家プログラム「AIシンガポール」を開始しています。また、国の戦略的プロジェクトとして以下を現在進めています。

(1) 国民デジタル認証(NDI:National Digital Identity)システムの導入
(2) キャッシュレス社会に向けた電子決済(E-Payments)の普及・拡大
(3) 全国規模のセンサーネットワークの構築
(4) 都市における移動(公共交通機関)のスマート化
(5) ライフステージに応じた公共サービスの組織横断的な提供
(6) デジタルガバメントの共通基盤CODEXの構築

日本とシンガポールでは人口構成や規模が異なるものの、高齢化や資源小国等を含む幾つかの共通課題もあります。従って、日本が目指す「Society 5.0」の先行事例として、スマートネイション構想は注目されています。

3-2. 海外事例②:トロント(サイドウォーク・ラボ

アルファベットの傘下企業であるサイドウォーク・ラボは2017年にトロントのウォーターフロント地区を再開発するプロジェクト「IDEA」に5,000万ドルと投資すると発表しました。この計画は工業用地だった12エーカーの土地を再開発し、データ収集を駆使した未来都市を作るというもので、1,524ページにのぼるマスタープランには最先端技術が取り入れられた未来都市の姿が描かれていました。

スクリーンショット 2020-07-13 16.40.34

(出典:Sidewalk Toronto Master Innovation and Development Plan)

その後の結果はみなさんもご存知の通りで、今年5月にサイドウォーク・ラボはトロントにおけるスマートシティ事業から撤退する事を明らかにしています。サイドウォーク・ラボの取り組みは発表当時からアルファベットによる個人データの管理等を巡り様々な批判を受けてきましたが、撤退に関してCEOダニエル・ドクトロフ氏は「(新型コロナウイルスの影響を受け)経済の先行きが見通しづらく、当初計画の根幹を維持しながら12エーカーのプロジェクトを財政的に成り立たせることが難しくなった」と述べています。この事例からも読み取れる通り、スマートシティに関わるプロジェクトは長期間に渡るため、政府・大企業・スタートアップ・その他関係者を含む幅広いステークホルダーからのサポートやコミットメントが非常に重要です。グローバル・プラットフォームを有するPlug and Playはまさにここを強みとしており、より持続的な協創モデルを実現出来ると考えています。

4-1. Plug and Play Smart Cities Program

スマートシティを推進するにあたり、各国においてスタートアップとの連携が注目されています。スタートアップは一般的に「課題ドリブン型」の思考を持ち合わせており、特定の技術やビジネスモデルを武器にイノベーションを起こします。国内でも今年に入ってから次世代移動サービスを展開するMaaS Tech Japan、電動マイクロモビリティサービスを展開するLUUP、ドローン関連ソフトを開発するセンシンロボティクス等が投資家からの資金調達を発表しています。

世界最大のイノベーション・プラットフォームであるPlug and Playの強みは、スタートアップとの連携支援や産官学を巻き込んだ取り組みとなります。弊社のグローバル・ネットワークを活用する事で、(1)対象地域にあった課題解決、(2)産官学でのN対N連携、(3)各国におけるベスト・プラクティスの共有を実現する事が可能だと考えています。Plug and Playは現在以下の拠点にてSmart Citiesプログラムを運営しています。

スクリーンショット 2020-07-21 19.45.20

また、Plug and PlayはVCとしても数多くのスマートシティ関連のスタートアップに投資を実行しています。以下は弊社のスマートシティ関連投資先企業の一部抜粋となります。

スクリーンショット 2020-07-21 4.19.34

それでは、各国のプログラムに間して簡単にご説明させて頂きます。

4-2. シリコンバレー

Plug and Playのシリコンバレー本社では、Energy、Mobility、Health、Real Estate、IoT、Travelの個別プログラムの総称を「Plug and Play Smart Cities」としています。従来は個別に運営されてきた業界別プログラムを、近年のニーズに合わせ、より分野横断型に設計し直したのです。

スクリーンショット 2020-07-21 4.20.41

シリコンバレー本社では、「Smart Cities Innovation Day」を年2回開催しており、イベントには大企業や各分野における専門家、スタートアップ等をお招きしています。以下動画は2019年10月8日に実施されたSmart Cities Innovation Dayの様子となります。

4-3. EMEA

欧州におけるSmart Citiesプログラムは現在パリ、マドリード、ヴィエナ、アムステルダムにて運営しています。シリコンバレー本社とは異なり、欧州ではSmart Citiesというテーマを個別プログラムとして運営しています。プログラムにおける注力分野は(1)Mobility、(2)Energy & Sutainability、(3)IoT、及び(4)Real Estaet & Constructionとなります。EMEAでは2019年にSmart Citiesのプログラムを立ち上げていますが、現在以下17社のコーポレート・パートナー企業様と連携しています。

スクリーンショット 2020-07-14 11.23.12

パリにおけるプログラムの様子はこちら:

マドリードにおけるプログラムの様子はこちら:

4-4. バンコク

バンコクにおいてもSmart Citiesというテーマを個別プログラムとして運営しています。プログラムにおける注力分野は(1)モビリティ、(2)エネルギー&サステナビリティ、(3)ヘルスケア、(4)IoT、(5)不動産、(6)ブランド&リテールとなり、以下の7社のコーポレート・パートナー企業様と連携しています。

スクリーンショット 2020-07-21 4.39.32

過去にバンコクで実施したプログラムには、以下のスタートアップ20社にご参加頂いております。バンコクのプログラムは、APAC Innovation Day等を活用した外部連携に力を入れており、Demo Dayに関してもAPACにおける他拠点(シンガポール、インドネシア)と合同で実施しています。

スクリーンショット 2020-07-21 4.24.41

こちらは今年5/26-28に実施されたDemo Day「APAC X」の様子です。

4-5. 大阪

それでは本題に入りたいと思います!

現在、大阪のベンチャーエコシステムはスタートアップ(500社超)、アクセラレーター、大企業、政府、教育機関、財政、投資家、その他サポーターから形成されています。本日発表させて頂いた大阪Smart Citiesプログラムを通して、大阪ベンチャー・エコシステムの様々なプレーヤーを巻き込み、Plug and Playが得意とするN対Nの協業モデルを推進していきます。

スクリーンショット 2020-07-21 4.23.04

(出典:各社ウェブサイトをもとにPlug and Play作成)

記事の冒頭でも記述した「大阪スマートシティパートナーズフォーラム」は大阪府が「2025年大阪・関西万博に向け、「未来社会の実験場」にふさわしい、最先端技術を活用した取組みと、府域全体で先端技術の利便性を住民に実感してもらえるような取組みを両輪とした、“大阪モデル”のスマートシティの実現」を目的として今年8月に立ち上げるもので、現在フォーラムの事業に賛同する企業団体等を募集しています。大阪府と連携するうえで、我々もフォーラムに加盟される様々なステークホルダーと親交を深められればと思っています。

スクリーンショット 2020-07-15 10.50.44

(出典:大阪府ウェブサイト)

大阪Smart Citiesプログラムのビジョンは「産官学連携の元、スタートアップと大企業によるイノベーションを促進し、Well-beingなスマートシティを実現する」であり、以下の3つのミッションを掲げています。

(1)大阪を世界のスタートアップに連結
(2)京阪神のスマートシティ領域のイノベーション
(3)起業家の輩出と底上げ

EMEAやバンコクのプログラムと同様、日本に関してもSmart Citiesというテーマを個別プログラムとして運営する事を予定しており、注力分野は(1)Smart Life & Construction、(2)Travel & Experiences、(3)Urban Mobility & Clean Tech、(4)Hospitality & Healthとなります。これらの4分野を軸に、大企業と国内外のスタートアップとの連携を促します。ただ、先述の通りSmart Citiesの定義は抽象的であり、対象地域や時代に左右されるため、我々はこれらの注力分野を決して完成形だとは考えていません。プログラムを一緒に作り上げる皆様と大阪におけるベスト・モデルを目指せればと思います。

大阪拠点の立ち上げには、2021年のワールドマスターズゲーム、2025年の大阪・関西万博、IR(統合型リゾート)誘致の可能性等を見据え、特に関西の産官学の皆様からご賛同、ご協力、ご支援を頂き、7社のコーポレート・パートナー企業様にファウンディング・パートナーとしてご参画頂きました。また、大阪府やグランフロント大阪ナレッジキャピタルとも協定を締結させて頂く事に至りました。様々な方の熱い想いがあったからこそ、大阪拠点の立ち上げは実現したと実感しています。

今後は大阪をSmart Citiesのグローバル・ハブとする事を目指しながら、徐々に他拠点との連携も深めていきます。また、プログラムや投資活動を通して、起業家の輩出と底上げにも力を入れていきます。国内におけるPlug and Play Venturesの投資活動に関しては、弊社Yuinが記事を執筆しているので、もしご興味があればご一読頂ければと思います。私自身も国内投資を担当しておりますので、出資のご相談や壁打ちに興味がある方はお気軽にご連絡頂ければと思います。

6. 最後に

長くなりましたが、最後までご拝読頂きありがとうございました。大阪チームの紹介をして記事を終わりたいと思います。左から順に、大阪拠点の責任者の安藤、ビジネス・デベロップメントを担当する佐倉、スタートアップ側を担当する自分(小林)となります。

スクリーンショット 2020-07-21 4.24.04

安藤、佐倉からの熱いメッセージをお届けします!

安藤 慎吾(Director)

「待ちに待ったPlug and Play Osakaを開設することができました。この拠点の立ち上げには非常に多くの方々の支えがございます。まずはパートナー企業の皆様です。イノベーション創出に求められる両利きの経営でも謳われております知の探索を体現すべく、コロナ禍の中で新しい取り組みを始めることが困難な中でも、Plug and Play Osakaのパートナーとして7社にご参画いただきました。心よりお礼申し上げます。次に、官学財界の皆様です。人々の生活をより良くしていく為、私たちの取り組みにご賛同いただき、大阪府様やナレッジキャピタル様との協定締結を始め、大阪市様、経済産業省近畿経済産業局様など各方面からご声援をいただいております。そして、最後にPlug and Play JapanとPlug and Play Globalの仲間がこの立ち上げを随所で支えてくれました。これからは私たちがスタートアップを支援し、産官学財界連携の元、パートナー企業とスタートアップとのイノベーションを創出します。そして、大阪を始めとする京阪神全域でWell-beingなスマートシティを築いて参ります。」

佐倉 愛(Associate Business Development)

「Plug and Playはグローバルでスマートシティの取り組みを実施しています。現在シリコンバレー、パリ、マドリード、アムステルダム、ビエナ、バンコクの6つの大都市でスマートシティのプログラムが先行して走っています。大阪に関してもグローバル・ネットワークとしてスマートシティ・プログラムを今後展開していきます。大阪スマートシティをテーマにしたPlug and Play Osakaは国内外のスタートアップを誘致し、関西を盛り上げていきたいです!アクセラレータープログラムは大企業様のプログラムでもあるので、大企業様のニーズに応じながら一緒に課題解決し、イノベーションの促進と市民のWELL-BEINGなスマートシティを実現できるよう、全力で頑張りたいと思います!」

この記事を通して、大阪に対する我々の熱意が少しでも伝わったのであれば嬉しいです。Plug and Play Osakaの取り組み関してご質問がある方はいつでもご連絡ください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?