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愛はすべてかなっているんだ

昔、私は当時の知り合い全てから行方をくらましたことがある。

だれも知り合いのいない土地に夜逃げし、朝も昼も夜も、過ぎるその時間を受け止めるしかできなかった。
パンドラの箱を開けた状態で、世界がとても美しく恐ろしく、いろんなイメージが自分の中に鮮やかに色を落とした。
寝ても起きてるのと変わらない悪夢を見、休まる間が全くなかった。

そんな中、振り切ってきた知り合いたちのことを毎日思い出し涙した。
ああ、今もああやって少しずつ魂を殺して目の輝きが少しずつなくなってしまってるのかなあ。
私が急に姿を消し、悲しんでいるかなあ。
本当にごめん、でもそれしかできない。
どうか、なにかの縁で自身を回復し、幸せでいてほしい、どうか。
悲痛な祈り、願いを毎日捧げていた。

YUKIのtonightを、毎晩みんなに捧げるつもりで歌っていた。

その朝、思っていたのは高校のクラスメイトのKちゃんのことだった。
ベッドの上でぺたんと座りながらひとしきり、幸せであって、どうか、お願い、という思いに、体全体がなっていた。

突然、ぱんっとつながった。
そうか、私の愛はもうかなっている。
どれだけその子が、
見てくれは幸せそうだが心に虚無を抱えさまよおうとも、
明らかに悲惨で人生やめたいと思っていようとも、
愛はもうかなっている。
私がこの世で幸せであってほしいと願う人は、
絶対的にもう幸せなんだ。
だから私は、これからの人生、かなっている愛の景色を見に行くんだ。

そのことが、すとんと体に落ちた。
本当のことは、あっけなかった。
そしてすごく幸せだった。
あのときベッドにそそいでいたまっしろな陽の光、
愛だった。

あれから数年がたち、本当に必要だった数人とは、不思議な当たり前が重なりまた縁ができた。
それ以外の何百という人とは、たぶんもう一生会えない。
それが昔は悲しかったけど、今はただ幸せだ。

世界が愛でよかった。

そして私は、今いる人と今を生きる。

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