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それしかないです。

「ちょっと来て」って内線でよび出されてメール室に行く。
そしたらYさんとUさんがいた。
今のメール室の人たちの、今日が最後の日だったのだ、委託会社が変わるから。
Yさんは今別のビルなのに、わざわざ寄ってくれた。

ぽくぽくというお菓子をもらう。
「すみませんありがとうございます、部のみんなでいただきますね」
「あっ、それならもっといっぱい入ってるの買ってこなきゃだったなあ」
「お前しっかりしろよ~!」

Yさんはこの後も同じメール室会社で、別のオフィスで働くことになるだろう。Uさんはしばしの自由生活。
「staphyさん偉くなってUを雇ってやって~」
「無理ですよ~偉くなれない笑」

「私もあと1年数ヶ月なんですよ」というと
「staphyさん辞めるころにまた会いに来るからね」
とYさん。
こんなに発せられただけで役割を果たす言葉もない、それは祝福だった。

このあとすぐ出ちゃうというから、急いで昼休憩をとりお店へダッシュ。
あずきとカカオのやつ(スキ)をゲットし戻る。

Uさんに会えたから押しつける。
「来ちゃったよ~~、いいのに、いつもいろいろもらっちゃってんのに」
そうこうしてるうちにYさんも戻ってきた。

今日、その場は
ずっと目の奥が広くて
どこまでも見渡せそうで、
きらきらが
BANANA DIARYのようなひかりが
ながれこんできて、
私はショコラを渡した。

「ありがとうございました」
「本当に感謝しています」

どこを探してもそれしかいいたいことはなかった。
でもそれはなんどいってもたりなかった。
おじぎをくりかえす。

Yさんはふっと横の同僚にいった。
「staphyさんほんとかわいいっしょ」

その声の色や温度に、
眼差しに全部出ていた。
なぜか全部分かった。
全くエロくなくて、
ずっと私のことを
自分の娘のように
たいせつに思って
見ててくれてたんだということが。
そんなこと、全く知らなかった。
Yさんの眼差しにはなぜか、
赤いラメみたいな色が
優しくはみ出してみえた。

ありがとう、感謝しかない、それだけです
そんな私の光る気持ちがその瞬間届いていたと思う。
ちゃんと届いていることもそのときなぜか分かった。

今の会社に来たばかりのころ、不安で不安で不安だった。
椿の中に生えちゃった楠みたいに、そこそこ招かれざる客だった。
毎日がアクシデントで、常に難破していて、寄る岸辺もない状態だった。各所に迷惑かけた。

そんな中、Yさんはプロとして粛々と仕事し、淡々と力を貸してくれた。
いろんなことが「分かる」人だったのだと思う。
だから喋らなくても、同じフロアへ集荷にきた気配だけで、息がしやすかった。
心のどこか1点で深く頼りにしてた。

今は自分の足で立って、お礼とお別れを言える。
まだまだ怖いことはあるけど、自分で歩いていける。
ここまで運んでくれた時の流れと宇宙に、Yさんの在り方に、
やっぱり、ありがとうございます。
それしかないです。

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