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雪の日は本の中で温まろう。

静かな東京に雪が降る。巣ごもり日和ですね。たまりにたまった本を少しでも…!ともくもくと読んでいる。そしたらまた「この本について話してみたい」というタイプの好きに出会ってしまった。

櫻井とりお『虹いろ図書館のへびおとこ』

小学校に行けなくなってしまったほのかが、たまたまおんぼろ図書館にたどり着く。そこでであう、みどり色の司書、少し年上の男の子、たくさんの本たちとのお話です。

自分が小学生のとき「ヤングアダルトの作品って本気でこの年代はこういう話し方だと思っとるんかな?大人の想像上の『若い人たち』な感じで、自分の中の言葉と違うからなじめない」と思っていた。正直この本を読み始めたときその感覚を思い出した。でも、主人公ほのかの性質が小学生の私にそっくりで、気づけば心と言葉がぴったり一致していた。

小学生という時代は皆ひとしく大変だ、と思う。もちろん中学・高校も、社会に出てからも、人生である以上大変の連続だ。でも小学生は「よく分からない世界の中で生きることそのものの重み」が、選択肢も逃げる場所もなく100%で、全身にのしかかってくる。そこから生き延びるためとる姿勢には個性がでるだろう。そこが私とほのかは酷似していた。
自分は「かわいそう」にはならない。誰かの前で涙は見せない。前を向いて、考えて、誇り高く生き抜くんだ。全部受け止めて自分の中の曲げられないところを通すんだ。
そんな気持ちが全身から発されていたと思う。だからほのかは親や先生を頼らず生き延びようとしたし、私は1日も休まず学校に通いつづけた。
(その姿勢が生んだ歪みも、招いた大変なことも知っている。でも、今だったらと考えてみても、性質としてそうとしかできなかっただろうなと思う)

だけど読みながらしみじみ分かった。ほんとは私もほのかも怖くて怖くてしょうがなかったのだ。自分の小さな体にのしかかる重みの果てしなさが。全く灰色にしか見えないこの先が。実は残酷な人々が。だからがむしゃらに、そっちを見ず前だけ向いた。少しでも気がゆるんだら全部だめになってしまいそうだった。

だから、ほのかが図書館にたどり着いたとき。イヌガミさんと関わりはじめたとき。スタビンズ君とけんかするとき。そこでおきていくたくさんのできごと。
ほのかにおきたすべてのことに、涙が止まらなかった。心からありがとうと思った。大きななにかがほのかを抱きしめ「大丈夫よ~いい子ね~~」とやさしくゆらしているようだった。
それは、直接さわれない岩の割れ目にいるあの日の私までも、一滴一滴落ちる涙で、癒し修復していってくれた。

また、出てくる本たちが本当になつかしくて。もちろん読んだことない本もいっぱいあったけど、まとっている「小学生のときに読む本」の空気がすごくいとおしかった。『こまったさん』とか、全く料理しないくせに熱心にホワイトソースの作り方を読んでいたのがめちゃくちゃなつかしい。それを読んでいた学校の図書室や市の図書館の、照明の色、景色、匂いまでよみがえってきて、意外と私もその場所にすくわれていたことをしみじみと知った。

本そのものが図書館みたいな風情で、開いただけで図書館の中にはいった気分になります。
子どもの頃、心の中に大切な空間をつくって生き延びた人たちに、心からおすすめします。

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