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ポジショニングの戦略の立て方とその要素5つ - April Dunford流

SaaSに限らずあらゆるサービスや商品の成功において、ポジショニング(Positioning)が非常に重要なことは言うまでもありませんが、最近この分野においてたぶん世界トップクラスの専門家ではないかと個人的に思っている April Dunford という方のPodcastインタビューをいくつか聞いて、その重要性を再確認したと同時に、ポジショニングを戦略的に考える上で欠かせない要素や手法を知ることができました。

April Dunfordさん著「Obviously Awesome」はポジショニングに焦点をあてた世界でも数少ない書籍(英語)で、ここで紹介する概念はすべてこの本に書いてあることの簡単な要約です。

(自分はPodcastインタビューをいくつか聞いただけでこの本自体はまだ読めておらず、Audibleで出るのを待っている状態です。)

彼女の公式サイトにも結構詳しい要約ページ↓があるので、こちらも必見です。

Obviously Awesomeという本を含め、彼女の考え方はポジショニングの概念や理解という上っ面だけの情報だけではなく、実際にどういう順序で考えていけば良いかというプラクティカルな手法が解説されており、これが他のリソースとは大きく異なる点だと思います。いわば実践で使えるフレームワークが紹介されているので、アクションに起こしやすいのです。

では以下にポジショニングを考える上で重要な5つのポイントをステップごとに挙げます。

Competitive alternatives

What would people do if you did not exist?

これは競合となるプロダクトをイメージすることに他なりませんが、その答えをうまく導き出す方法が上の問いになります。ユーザーへのこの「もしそのプロダクトが存在しなかったら、あなたは(代わりに)何を使いますか?」という質問の答えが、意識すべき競合プロダクト(competitive alternatives)です。

ただし、実際にプロダクトを使ってくれていて価値を感じていそうな(適切な)ユーザーにこの質問をすることが重要です。

まだユーザーがいなかったり、適切なユーザーが判断しにくい場合は、最初は仮説(Assumption)からスタートでOK。

Aprilさんのポジショニングの考え方では、この Competitive alternatives を考えることからすべてがスタートします。

Unique attributes

What do you have that the competitive alternatives don't have?

このステップでは一つ目の Competitive alternatives のステップでイメージした競合と比較した時に、自分たちのプロダクト(あるいはサービス)しか持っていない機能や特徴をリストアップします。

それはサプライチェーン周りかもしれませんし、ビジネスモデルかもしれません。あるいは高度な技術やIPかも。

ここではリストアップすることを目的とし、それらが提供する価値といった掘り下げは次のステップで行います。

Value for customer

So what for customers?

Unique attributeは機能や性能、特徴でした。Valueはそれらがユーザーにもたらす価値になります。その機能や特徴のおかげで、ユーザーは実際に何ができるのか、どういう恩恵を受けることができるのか、というユーザー目線の価値です。

Unique attributesでリストアップした特徴を、実際のユーザーへの価値へとマッピングする作業と捉えることもできます。

Valueの証明には定量的なものと定性的なものがあり、定性的なものの場合は第三者の証言が大事になります。自分たちが思っていることではなく、実際のユーザーが◯◯と感じていることということが大切です。具体的な証明方法としては、Customer testimonialの他に、外部の(独立した)レビュー、定量的な場合はベンチマークや統計データなどが使えます。

Target market / Characteristics

Who cares the most?

いわゆるペルソナの設定ステップです。

Value for customersのステップで浮かび上がった価値を本当に心から良いと思ってくれるような(潜在)ユーザーは誰かを考えます。ここではその価値が最大化するユーザー層にフォーカスすることが大切です。

市場、地域、会社の規模、役職など、様々な要素を出来るだけ詳細に解像度を上げてイメージすることが求められます。そしてその解像度は、ペルソナ(グループ)に対してマーケティングやセールスにおいてアクションを起こせるのもの、アクショナブルである必要があります。

Market category

What is the market frame of reference that makes your unique value utterly obvious to your best prospects?

そのプロダクトの説明を聞いて、ユーザーは何をイメージするか。類似サービスとしてどのようなものを想像されそうか、というポイントです。

例えばエンタープライズ向けCRM、と言うと競合としてSalesforceをイメージするだろう、といった感じです。

このマーケットカテゴリーの設定をうまくできれば、設定したペルソナに対して自分たちのプロダクトの持つ特徴や価値をより効果的に、より深く、そして端的に理解してもらうことができるはずです。

既存のカテゴリーに新しいプロダクトとしてリリースする場合は、ひとが持っているその既存のカテゴリーへのイメージを使うことができます。

 今までにないプロダクトで、全く新しいカテゴリーを作るようなものの場合、まずはProblemを認知させる、あるいはOpportunityを認知させることから始める必要があるでしょう。

Airbnbなどは「他人の上に泊まる」という新しいカテゴリーを作り出したプロダクトですが、自分の家の空き部屋やソファーを使って収益を得ることができるというOpportunityを認知させることに成功しました。

Relevant Trends

Why is this important right now?

これはあればGoodというようなエクストラポイントなので必須ではありません。

トレンドはそのプロダクトをより良く、クールに見せる効果をもたらし、セールスもしやすくなる傾向にあります。

Machine learning、Cloud computing、DevOpsなどが最近ではトレンドとして世界的に出てきました。これらは様々なMarket categoryに適用できるものの、それ自体がCategoryではないという特徴を持っています。

このトレンドは少しバズワードに近いニュアンスかもしれません。

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Podcastインタビュー(リソース)

Rocketship.fmのものだけインタビュー形式ではないですが、この他にもSpotifyで「April Dunford」と検索するとたくさん関連のPodcastが出てきます。

ちなみに2つ目に載せている「Product market fit doesn't exist」というPodcastエピソードも非常に面白いです。PMFって別にマーケティングとしてアクショナブルでなければ意味ないよね、VCが好きな概念ってだけだよね、といった内容になっています。