見出し画像

BitCloutとは?クリエイターエコノミー x ソーシャルトークン x ブロックチェーンなクリプトソーシャルネットワークの可能性

クリプト界隈、米国テック界隈を中心に最近注目を集めているBitClout。

日本ではVALUと比較され詐欺じゃないのかとか噂されていますが、実は日本以外でも同じような意見は結構見受けられます。

このサービスが今後Facebookのように大きくなり新しいソーシャルネットワークとなるか、あるいはVALUのような終わりを迎えるかは、現在のところ時期尚早で予測がつきませんが、個人的に一つ言えるは「いろいろ問題ありそうだけど、面白いコンセプトの面白いサービスだ」ということ。

自分なりに調べたことをここにまとめました。

BitCloutとは

BitCloutはBitcoinと同じようにホワイトペーパーが公開されています。

そのホワイトペーパーの一番最初(What is BitClout?)に以下のように書かれています。

BitClout is a new type of social network that lets you speculate on people and posts with real money, and it’s built from the ground up as its own custom blockchain.

簡易日本語訳:「BitCloutは、独自のブロックチェーンを用いて作り上げられた、ヒトに投機できる新しいタイプのソーシャルネットワークです。

Its architecture is similar to Bitcoin, only it can support complex social network data like posts, profiles, follows, speculation features, and much more at significantly higher throughput and scale. Like Bitcoin, BitClout is a fully open-source project and there is no company behind it -- it’s just coins and code.

簡易日本語訳:「その構造はBitcoinに類似していますが、複雑なソーシャルネットワークのデータ(投稿やプロファイル、フォローなど)および投機機能を非常に高いスループットとスケールでサポートすることができます。Bitcoinと同様に、BitCloutも完全なオープンソースプロジェクトで背後に企業の存在はありません。あるのはコインとコードだけです。」

---

イメージとしては、BitCloutとはTwitterとRobinhoodを足し合わせたようなサービス、と説明できるかと思います。

個々がアカウントを所有し、投稿ができ、他人をフォローすることができる、Twitterのようなソーシャルメディアであると同時に、さまざまな株やその他金融商品に投資できるRobinhoodのような側面も持ちます。

そしてBitCloutで投機するのは株ではなく「ヒト」です。もう少し詳しく言うと「そのヒトの信用や評判(replutation)」です。

公式サイトでは、Crypto Social Network と表現されています。

サービスに関係しているとされる人たち

BitCloutは、世界でもトップクラスのベンチャーキャピタルであるセコイアキャピタルやa16zをはじめ、Chamath(ソーシャルキャピタルの創業者でビリオネア)、Coinbase Ventures、Winklevoss Capital、アシュトン・カッチャーのSound Venturesなど、そうそうたるメンツから資金調達をしたと噂されています。その金額は日本円で150億円超とされており、Bitcoinの形で deposit されているようです。

ただし営利企業が作っているサービスではないということで、実際の中の人についてはあまり情報がありません。

が、創設者は Nader Al-Naji という人だということでほぼ確定のようです。彼はBasisというステーブルコインの創設者として知られていますが、そのプロジェクトは結局おしゃんになってしまったようで、業界で特別良い経歴や評判があるわけでないようです。

アカウント作成

BitCloutは当初はクローズドだったようですが、今は普通に公式サイトの Sign Up ボタンから誰でもアカウントを無料で作成することができます。

アカウント作成には電話番号が必要です。また、一般的な固定パスワードをアカウント作成時に設定するのではなく、seed phrase を使っているところも少し特徴的です。

アカウントが作成されれば、ログイン後に Profile -> Update Profile から Username を設定・取得することができます(急げ!)。

クリエイターコインの購入

BitCloutでは、すべてのユーザーに独自のコインが発行されます。そして誰でもそのコインを購入することができます。株と同じく、自分のコインが購入されればその価値が上がります。

クリエイターコインの購入方法は、まず$BTC(Bitcoin)で$BitClout(BitClout独自の暗号通貨)を購入、$BitCloutで誰かのコインを購入、というプロセスです。したがって、そもそもBitcoinを持っていないとクリエイターコインは購入できません。(今後は購入方法が増えるかもしれませんが。)

↓はアーティストのスティーヴ・アオキのページですが、彼のクリエイターコインの価格、流通量、時価総額、そして彼のクリエイターコインを所有するホルダーの一覧を見ることができます。

画像1

各クリエイターは自分のコインが購入された場合にその一定%を得ることができ、これは Reward Percentage と呼ばれますが、デフォルトは10%に設定されています。誰かが自分のコインを購入したら、その10%が自分にも入る、というイメージです。そしてこの%は0〜100までクリエイターが自由に設定することができます。

$BitCloutは$BTCと同様、価値が極端に下がらないようその発行量が制限される仕組みになっており、100万BitCloutが売却される度にBitCloutの価格が倍になるようで、長期的には1000万から1900万BitCloutが発行総量になる見込みらしいです。また、$BitCloutという暗号通貨(仮想通貨)を使うことによって、スパム抑制の効果も期待できるとしています。

ちなみに今だと誰でも電話番号を承認してアカウントを作成すると 0.005 $BitClout がもらえるようで、自分も最初からその額がアカウントに入っていました。(とはいっても今のレートで1ドル弱の価値ですが。)

クリエイターコインの利用用途

将来価値が上がると思うクリエイター(ヒト)のコインを購入し、価値がもし上がってそのコインを売れば利益を得ることができる、という投機性が一般的なクリエイターコインの利用用途ですが、ホワイトペーパーではこれ以外の利用用途についても述べられています。

個人的にはここが一番BitCloutで可能性を感じる領域でもあります。

コイン保有者限定のミーティングやコメント参加権利

クリエイターの投稿に対してコメントできる対象を一定コイン以上の保有者に限定することで、スパムや誹謗中傷を大きく減らしてそのクリエイターのファンやサポーターの声にスポットをあてられるだけではなく、限定のイベントへの参加という購入動機を与えることもできます。

ダイレクトメッセージのフィルタリング

一般的なソーシャルメディアでは誰でも著名人にDMを送れたり、誰も送れなかったりと、ファンやサポーターが優遇される設計にはなっていません。BitCloutでは、例えば自分のコインを一定以上持っている人しかメッセージを送れないよう制限をかけたり、届いたメッセージを送信者のコイン保有量でソートしたり、あるいはメッセージ送信にコインの消費が必要なように設定したりと、よりファンやサポーターの声が届きやすい設計が可能です。

スポンサード投稿(リツイート)

あるクリエイターに自分の投稿をリツイート(repost)してほしい時、そのクリエイターの"Inbox"と呼ばれる場所にコインを使って入札(bid)することができます。もしそのクリエイターが入札された金額でリツイートを承諾した場合、リツイート実行後にコインがそのクリエイターに渡ります。
Twitterでは #PR というタグがつけられた広告ツイートを目にしますが、BitCloutではそれをクリエイターコインを使った機能としてサポートする、というイメージです。

プレミアムコンテンツ

そのクリエイターのコインを一定数以上保有している人だけが閲覧できるコンテンツです。TwitterのSuper Followsのようなサブスクタイプも可能。

Money Likes

FacebookやTwitterではいいね!は誰でも無料でできますが、Money Likesではいいね!するのにお金がかかります。その代わり、そのクリエイターのコインがもらえます。普通にそのクリエイターのコインを購入する代替方法として、そのクリエイターの投稿にいいね!をしてコインを得る、というイメージ。

---

このようにBitCloutではクリエイターコインを単なる投機手段としてではなく、クリエイターエコノミーにおけるファンエンゲージメントの重要な要素として設計しているようです。

クリエイターのソーシャルキャピタルをトークン化した、新しい形のアセットクラスと言えそうです。

ただし、現時点では上に書いた利用用途はすべて開発段階で、実際にそのように使えるようになるのは今後の予定となっています。

尚、クリエイターコインの価格は以下の方程式に従って決定されます。

Price in BitClout = .003 * creator_coins_in_circulation^2

この価格に$BitCloutのUSD価格をかけると、そのクリエイターコインのUSD価格が計算できます。

この方程式からわかるように、誰かがそのクリエイターコインを購入すると、そのコインの価格が上がるようになっているため、人気のコインの価格は高騰し、結果的に発行量が抑えられる、という仕組みです。

クリエイター視点でのBitClout

FacebookなりTwitterなりInstagramなり、今までのソーシャルメディアは、UGCとしてユーザーのコンテンツで成り立っている、収益をあげているにも関わらず、肝心のクリエイターの収益が二の次にされている、という批判は今まで色々ありました。

最近は PatreonOnlyFans など、クリエイターがファンから直接資金を得ることができる、クリエイター中心のプラットフォームの人気が増しており、クリエイターエコノミーというワードも定着しつつある印象です。

BitCloutはクリエイターエコノミーやクリエイターとサポーターとの関係に、ブロックチェーンとトークンの概念を持ってきた新しいサービスで、よりクリエイター目線のサービスという見方もできそうです。

オーディエンス / ファン視点でのBitClout

これまでのインターネットでは、クリエイターのアーリーファン(有名になる前から応援してきた人たち)がそれに対して金銭的なリターンを得る方法が非常に少ない状態でしたが、BitCloutではクリエイターを直接支援できると同時に、そのクリエイターのコインというアセットを保有することで、将来的にそのクリエイターの価値が上がった場合にリターンを得ることが可能になります。

また、上のクリエイターコインの利用用途でも述べたように、コインを保有する(資金面で応援する)ことによってさまざまな特典や権利を得られる可能性もでてきます。

これらは今までのプラットフォームには(現時点では)ない機能や特徴で、十分魅力的な提供価値と言えそうです。

ユニークなバイラルマーケティング

BitCloutでは、Twitterでフォロワーの多い上位15,000アカウントのデータを取得して、それらのアカウントの Username をあらかじめリザーブしています。

自分のアカウントがリザーブされている場合、その人はBitCloutでアカウントを作成し、自分のパブリックキーを #bitclout というタグを付けてツイートすることで、そのTwitterアカウントとBitCloutのアカウントの関連性が証明され、そのBitCloutアカウントを取得できます。

パブリックキーとツイートを利用した非常に面白いバイラルマーケティングで、今後プロダクトローンチ時に類似のマーケティング手法が流行る可能性もありそうです。

さまざまな批判も

批判その1: あらかじめリザーブされた Username のオーナーのアイデンティティーを、彼らの同意なしに投機対象に

Twitterでフォロワーの多い15,000のアカウントに対してあらかじめ Username をリザーブし、そのオーナーがアカウントを取得する前から、誰でもそのクリエイターのコインを購入できるような仕様のため、一部のオーナーからは自分(のアイデンティティー)に対して、勝手に人々が投機できるようにさせている、という批判がでています。

上にも書いたように、手法としてはクレバーで面白いマーケティング戦略ですが、BitCloutは投機性があるというのがあだになっています。

批判その2: 200万枚とも言われる$BitCloutのプレマイニング

VCなどから調達した100億円をゆうに超える資金は、BitcoinとしてBitCloutに入ったようですが、代わりに$BitCloutを非常に低価格で資金提供者に配布したとされており、フェアなプロジェクトローンチではないという批判があります。

一番最初に$BitCloutをもらった or 購入した人たちは、現時点($BitClout = US$160+)ですでに少なくとも100Xのリターンがでているはずです。

批判その3: オープンソースプロジェクトなのにソースコードが(まだ)公開されていない

ソースコードの公開がいつになるかの情報もまったくない状態のようです。従って自らNodeを立てることも今のところできません。

批判その4: 現状 Withdraw ができない

今のところBitcoin -> BitCloutはできますが、逆のBitClout -> Bitcoinができないので、BitCloutに送ったBitcoinはBitCloutにロックアップされる状態です。ここは意図的にBitCloutの価値が崩壊しないように制限をかけていると思われますが、今後はBitCloutでBitcoinを購入する(Bitcoinに戻す)こともできる(Withdrawができる)ようになると言われています。いつになるかは定かではありませんが。

計画的な詐欺の可能性は低そう

オープンソースプロジェクトであることや、著名VCやビリオネアがbackingしていることなどから、少なくとも送られたBitcoinを盗もうなどという計画的な詐欺サービスではなさそう、というのが個人的な見解です。

ただ、VALUも別に最初から詐欺を念頭においたサービスではなかったのと同じように、BitCloutが結果的にどうなるかはまだ誰にもわかりません。

ローンチ時のやり方などいろいろ問題のあるプロジェクトではありますが、クリエイターに主権があるソーシャルネットワーク、ファンやサポーターとクリエイターのインセンティブがアラインしているサービス、ブロックチェーンを利用した非中央集権的サービス(のはず)ということで、コンセプトとしては悪くないというか面白いサービスだな、と思っている部分もあります。

さまざまな批判があることは事実ですが、結局のところクリエイターとそのファンやサポーターにとって今よりもベターな代替サービスとなるのであれば、そこが一番大切なように思います

とはいえ批判の中には実際に集団訴訟に発展しそうなものや、すでに弁護士経由でBitCloutに書面が送られていたりと、かなり厄介で泥沼な部分もありそうで、少しYouTubeの初期を彷彿とさせます。

リソース