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Pachamaは衛生画像を解析し、カーボンクレジットのバリデートを行うマーケットプレイス

先日以下のPodcastでカーボンクレジットのマーケットプレイスを開発する Pachama という環境系スタートアップの創業者の話を聞いて、いわゆる社会起業家的なレベルの高さにかなり驚きました。

こちらPart 2もあって、非常に有益なエピソードになってるので、二酸化炭素排出やカーボンクレジットに興味ある人にはオススメです。

テキストでも解説しますが、Pachamaの解説動画(英語)はこちら。

Pachamaが提供するサービスと解決する課題

まずPachamaのサービスの概要から。

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ひとことで説明すると「企業や個人がカーボンクレジットを購入できるマーケットプレイス」ですが、衛生画像を独自の機械学習で解析し、実際にどれだけのCO2がキャプチャーされたかを検証(認証)、そのデータをモニタリングできるソリューションもセットで提供しています。

ここでカーボンクレジットの対象となるのは森林(forest)で、地球上の森林によってどれだけCO2がキャプチャーされているかを画像からリモートで判断する、検証する、ということを行なっています。

また、同時にどれだけ森林破壊が世界的に進んでいるか、特定のエリアでの植林がどれだけ進んでいるか、などの情報も高精度で把握できるそうです。

Pachamaを利用する企業にはMicrosoft、Shopify、GitLab、SoftBankなどが挙げられていますが、これらの企業にとっては

1. 購入したカーボンクレジットの有効性(本当にCO2削減に寄与しているか)のアセスメントは非常に難しい
2. 信頼できるソースから買いたいけどどこが信頼できるか判断が難しい

という課題があります。もちろんこれは個人の購入者にもあてはまる課題ですが。

Pachamaは衛生画像の解析というテクノロジーによって、カーボンクレジットの有効性を可視化することで、企業や個人が安心してカーボンクレジットを購入し、その有効性を確認できるソリューションを提供します。

もちろん、土地所有者側と企業側をマーケットプレイスとして繋ぐことで、両者が相手(クレジットを買ってくれる企業 & 売ってくれる土地オーナーやプロジェクト)を簡単に見つけられるという価値提供を行なっていることは言うまでもありません。

このほかに、Pachamaでは企業側の書類の手続きの自動化・効率化なども機能として提供していおり、カーボンクレジット購入におけるペインを包括的に解決するバーティカルなソリューションを目指していると創業者の Diego Saez Gil は語っています。

尚、Pachamaのマーケットプレイスは、企業だけではなく個人でも5クレジットから購入することができます。

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あの Paul Graham も100トン買っていました。

*カーボンクレジットは、1クレジット = 1トンのCO2として売買されます。

今後の展開とカーボンクレジットのマイクロトランズアクションの未来

Pachamaはビル・ゲイツのBreakthrough Energy VenturesやAmazonから資金調達を行なっており、今後はさらに小さな土地所有者にもマーケットプレイスを拡大していくそうです。

ここからはあくまで自分の個人的な妄想というか予想ですが、ある程度の広さの森林を持っている、あるいは植林できるエリアを所有しておれば、誰でもその土地を活用してカーボンクレジット収益を得られる、という世界になると、いわゆる田舎や過疎地で暮らす人であっても新しい収入を得られる可能性に繋がります。今までは農作物を作って売ったお金や森林を伐採して木材を売って収益を立てていた人たちが、今後は植林や森林保全によって収益を得られる、というシフトになるかもしれません。

さらに、今後もし企業だけではなく都市への二酸化炭素排出削減が求められるようになると(なるかわかりませんが)、東京都が地方の都市や自治体からカーボンクレジットを購入する、というお金の動きも出て、地方自治体の税収に寄与するかも。

いずれにせよ、結局は資本主義社会なので、何かしらの経済的なインセンティブの設計は不可欠で、ここが今後注目されます。

グリーンテックがアツい

カーボンキャプチャー(carbon removal)はイーロン・マスクと彼のFoundationが設立したXPRIZEが$100Mの賞金を設定したり、世界が必要としているテクノロジーということで可能性のあるものには資金が付きやすいイメージです。

尚、Pachamaでは「森林(木)が一番コスト効率がよくスケールさせやすいカーボンキャプチャーの手法として証明されている」ということがサイトで解説されています。

いずれにせよ、ビル・ゲイツも語っているように、そもそも仮に今日世界中で全ての二酸化炭素の排出がゼロになったとしても、大気中に溜まっている二酸化炭素はそのまま居続けるので、それを効率的に減らすという手法なりテクノロジーは必須になります。

大気中に蓄積された二酸化炭素はstock、新しく日々排出される二酸化炭素はflowと言われるらしく、ここらへんは以下のPodcastエピソードが参考になるのでオススメです。

二酸化炭素周りでは、カーボンフットプリントの計測や削減目標設定、プロセスの可視化などのソリューションを提供する Watershed というスタートアップも。

環境系(グリーンテック)スタートアップは二酸化炭素以外でも、グリーンエネルギーやバイオなどさまざまな分野があり、ビル・ゲイツのFoundationに代表されるような基金をはじめベンチャーキャピタルなどからも資金を調達できる可能性が増えており、調達できる額も増えている印象です。

ある程度知識や意欲のある学生であれば、旧態依然の大企業に就職するよりも、しっかり資金を獲得している環境系スタートアップでやりがいを持ってトライしてみる、という選択肢も個人的にはとても価値があるように思います。それら多くのスタートアップは海外というのが現状ではありますが。

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最後に、このnoteの冒頭にも書いたように、Pachamaはいわゆる社会起業家のレベルが規格外だと個人的には感じました。

創業者のパッションはもちろん、アマゾン近くで育って米国に移ってからも森林火災で家が全焼した彼自身のストーリー、エンジニアというバックグラウンドを持ち衛生画像や機械学習といったテクノロジーを活用している側面、バーティカルなマーケットプレイスというポジショニングやMOATの作り方、リアルな課題を解決し実際に決済が発生しているというビジネス性とリアリティー、そしてなにより環境というマーケットとその社会的インパクト。

どのアングルから見ても、シンプルにすごいなー、と。