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なぜiPhoneが1円で売られているのか

iPhoneが1円で売られている件について

最近、大手家電量販店で「iPhoneSE 第二世代」「iPhone12」「iPhone12 mini」などのiPhoneが1円で販売されるキャンペーンを見かけるようになりました。

内容としては「回線契約と一緒にiPhoneを購入するとiPhoneが一括1円で買えますよ」というものです。

かくいう僕も昨日(2022年3月20日)都内の家電量販店でiPhone12を1円で購入してきました。

なぜ定価だと8万円〜9万円するようなiPhoneが1円で売られるという事態が起きているのでしょうか。

なぜiPhoneが1円で売られているのか

先に結論をいうと、

  1. 家電量販店は新型iPhoneが発売される前に旧型モデルの在庫を減らしたい

  2. 家電量販店はお客さんにキャリアの回線契約をしてほしい

という2つの理由からiPhoneが1円で売られていると考えられます。

もう少し詳しく解説

全体像を把握するために登場人物を整理するとざっくり以下の3つです。

  • Apple

    • iPhoneをたくさん売りたい

  • キャリア

    • au, docomo, SoftBankなど

    • なるべく多くの人に自社で回線契約してほしい

  • 販売代理店

    • 携帯ショップや家電量販店(ヨ○バシカメラ、ヤ○ダデンキなど)のこと

    • お客さんにiPhoneなどのスマホを売りたい

    • お客さんに回線契約してほしい(キャリアから報酬がもらえるため)

上記を踏まえた上でiPhoneが1円で売られている理由について解説します。

理由1. 家電量販店は旧型モデルの在庫を減らしたい

iPhoneが1円で売られている1つ目の理由は「家電量販店は旧型モデルの在庫を減らしたい」からです。
家電量販店はAppleからiPhoneを仕入れて在庫を抱え僕たちユーザーに販売しています。iPhoneは毎年9月頃に新型が発売されるので、旧型モデルが完全に売れなくなる前になるべく在庫を減らしたいのです。

なぜ在庫を減らしたいのか

ではなぜ在庫を減らしたいのかというと以下の理由があります。

  • 在庫の管理費を削減したい

    • 在庫を抱えているだけで「倉庫代や土地代」「設備費」「人件費」などいろいろな費用がかかる

  • 少しでも売上げアップにつなげたい

    • 安くても売ることで売上が上がり決算書の見栄えがよくなる

  • 在庫を減らすことで税金を減らしたい

    • ざっくり以下の式により、在庫が減ると支払う税金も減る

      • 支払う税金 = 利益 × 税率

      • 利益 = 売上 - 仕入原価

      • 仕入原価 = 仕入れ - 売れていない在庫商品

ようするに「1億円の貯金があります」っていうAさんと「1億円で買ったつぼを持ってます」っていうBさんを比べると、Aさんの方が魅力的ですよねっていう話です。

なぜ3月にセールが行われるのか

家電量販店の多くは3月が決算月です。決算というのは「今年はこれだけ利益を出しましたよ」という企業の通知表を出すことで、その通知表に含まれる最後の月が3月だということです。

少しでも決算の成績をよくしたいので3月頃にセールを行って、在庫をなるべく減らしたり売上を少しでも上げたりとがんばっているわけです。課題に追われた夏休み最後の1週間と同じことです。

理由2. 家電量販店はお客さんにキャリアの回線契約をしてほしい

iPhoneが1円で売られている2つ目の理由は「家電量販店はお客さんにキャリアの回線契約をしてほしい」からです。

家電量販店はau, docomo, SoftBankのような携帯キャリアの代わりにお客さんに回線を売っており、その対価としてキャリアから報酬を得ています。

例えばある人がヨ○バシカメラで契約したau回線で毎月5000円を支払っているとすると、ヨ○バシカメラはauからその5000円のうちの数%を報酬としてもらっています。なので家電量販店はお客さんに回線契約をしてほしいのです。

参考:携帯ショップの収益について - YouTube


上記2つの理由からiPhoneが1円で販売されるという現象が起きています。「回線契約せずにiPhoneを1円で売ってほしい」と頼むと「在庫がありません」と断られるのは、回線契約してもらわないと家電量販店としては利益にならないからです。

今後どうなるのか

では今後もiPhoneが1円で販売されるセールは行われるのでしょうか。ここからは僕個人の勝手な予想です。

「決算月にセールで安くなる」という流れはおそらく今後も変わらない

毎年2〜3月頃に型落ちのiPhoneがセールで安くなるという流れはおそらく今後も変わらないと思います。

なぜなら、やはり家電量販店としては在庫を減らしたいのと回線契約を得るためのいい材料になるからです。また、決算月にiPhoneがセールで安くなるというのは今年に限った話ではなく過去にも毎年行われているからというのもそう考える理由の1つです。

最新ではなく型落ちのモデルでいいのであれば「3月に家電量販店でiPhoneを買い換えると同時に回線も乗り換える」とすれば、来年以降もお得にiPhoneを購入できると思います。
参考:家電スタッフがオススメするスマホ機種も月額料金も安くする方法 - YouTube

iPhoneが1円で売られて困るのは誰か

では逆にiPhoneが1円で売られて困るのは誰でしょうか。それは「Apple」と「格安SIMの回線業者」です。

「iPhoneはセールを待てば1円で買える」という認知が広まってしまうとiPhoneが定価で購入されなくなってしまい、Appleのブランドイメージ低下にもつながります。それを懸念して「iPhoneを安く売るな」とAppleから家電量販店に対して圧がかかる可能性はあるかもしれません。

またiPhoneを1円で販売する条件としてau, docomo, SoftBankのような大手3ブランドの回線契約を条件としているため、mineoやOCN mobileのような格安SIMを提供している事業者にとっては相対的に契約を取りにくくなってしまいます。

格安SIMの事業者団体が「iPhoneを1円で販売するのをやめてくれ」という発信もしています。
参考:VNOの業界団体からiPhone投げ売り禁止を求める提言が出ている件 - YouTube

この圧力が強くなって総務省が動けば、iPhoneを過度に安売りすることに対して規制が入る可能性はあると思います。

さいごに

iPhoneは高い買い物なのでどうせならなるべく安く手に入れたいものです。

可能な限りお得に買い物をするために常にアンテナを張っておくことと「なぜそのような事象が起きているのか?」を考えるようにする習慣をつけると、いろんなものを上手に買えるようになるのではないでしょうか。

少しでも参考になれば幸いです。


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