色は匂へど 散りぬるを
大人になると、昔嫌いだったものが好きになったり、好きだったものが嫌いになったりする。
嫌いだったものが好きになるのは、ちょっとだけ嬉しい気持ちになるのに、なぜか好きだったものが嫌いになるのはちょっと苦しさを感じるし、とても残酷だと思う。
私の場合、「匂い」要は香水だったり芳香剤だったり、なんならその人本来が持っている体臭も。本当はまだ、好き。でも、苦い思い出たちが私の好きだったものを嫌いにさせてしまった。「その香り」がするたびに胸が締め付けられる。頭で記憶を思い出すよりも先に、胸がチクッとする。パブロフの犬みたいに、無意識に。
好き「だった」人がつけていた香水は、辛い気持ちを最も簡単に思い出させるから嫌いになった。好きな匂いのはずなのに、嫌いにならざるを得なかった。正直、すごく、すごく悲しい。
まるで、ラーメンが好きでラーメン屋で働き始めたはいいものの、毎日ラーメンを見てそこで働きすぎたせいで嫌いになった、みたいな感覚。
でもきっとこの感覚って匂いだけじゃなくて全ての思い出に総じて言える。嗅覚、視覚、味覚、触覚。場所や味、肌の感触とか。一瞬にしてリコールされると、「ああ、この記憶は私の脳が覚えていたいと、大事にしている記憶なんだな」と思う。
カナダでは日本よりも先に「Insideout 2(邦題:インサイド・ヘッド2)」が公開されて、先日レイトショーを一人で観に行った。2は1よりも大人に刺さるな、というか大人なら誰もが通ってきた葛藤の時期の頭の中を描いていて、グッとくる場面があった。どの感情も自分を構築していく上では欠かせなくて、たまに自分のことが嫌いになるようなことがあっても、それも含めて自分の感情なんだと。
だから、思い出が詰まった匂いを嗅いで心がギュッとなることがあっても、それも私の経験してきた大事な想いなんだなと思うようになった。
頑張ってまた、一日一日を乗り越えていきましょう。
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