地球は青かった
第2次大戦の終結とともに始まった米ソの冷戦はソ連の崩壊時までつづいたが、それは軍拡だけでなく、さまざまな情報戦の形をとった。
そうした情報戦のひとつを紹介してみたい。
ライカ犬を乗せたスプートニクの宇宙飛行につづき、ソ連はボストークでガガーリンを地球周回させたのち生還させ、世界をあっと驚かせた。出し抜かれたアメリカの驚きはいかばかりだったろう。
80年代のいつ頃だったか、NHK教育放送でBBC制作のガガーリンに関する番組が流れたが、はたしてどのくらいの視聴者が目に留めただろうか。
それによれば人類初の宇宙飛行をなし遂げたのはガガーリンではなく、それ以前に打ち上げられたソ連の飛行士だというのだ。
以下のストーリーは、後日別番組で紹介された内容と併せて紹介してみる。
ツポレフとともにソ連の爆撃機・旅客機を設計したセルゲイ・イリューシン(後に航空相)の息子ウラジミールが地球を周回飛行したが、帰還時にコントロールを失ってソ連でなく中国領に不時着させてしまい、これは公表されなかった。
いっぽうガガーリンはソ連の英雄となってあちこちに担ぎ出されたが、あるときこの事実を知ってしまう。茫然自失となったガガーリンは次第に精神を病み、あるレセプションの席上でブレジネフにグラスのワインをぶちまけてしまった。
これ以上ガガーリンを利用できないと知ったブレジネフはガガーリンの抹殺を決め、戦闘機の事故に見せかけて、かれを葬り去った。
ここまでの内容なら私も半信半疑なのだが、番組の最後に流れたBBCの説明が半可通には応えた。
ウラジミールの前にも5人の飛行士が打ち上げられ、いずれも失敗して帰還できなかった。その名は・・・・・そしてセレンティ・シボリンである。
自称クレムリノロジーであったわたしの記憶には、70年代に新聞紙上に載ったコラムが刷り込まれていて、シボリンの名ははっきり覚えている。
ネタを考えてみるなら、イリューシンとかシボリンといったもっともらしい尾ひれを付けて、真実らしく見せかけたのだと思える。
やはり、ユーリー・ガガーリンの名は人類史に輝くひとつの星として残るのだろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?