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ネオギャルミキサーおじさん

CMの制作会社に入社し、早3ヶ月が経過。業務が多岐に渡るゆえ、まだまだ仕事に慣れたとはとても言える状況ではないが、それでも少しずつ「この業務は好きだなあ」なんて思える工程も出てきた。

そんな好きな業務の工程の1つがMAである。MAとは完璧にまだ理解できていないもののざっくり、音の仕上げをする工程のことである。だいたい僕たち制作マンとミキサーさん、SEさん、ポストプロダクション(撮影後の編集プロダクション)のアシスタントさん、そして監督とで行う。なんとなくTV等でアーティストがこもって楽曲制作をする姿を見ていたからか、MA室に入るたびに興奮する(そして極度の暑がりの僕にとって、どんな部屋よりも涼しく静けさがあるところ、無料で自販機飲み放題のところなんかが特にお気に入りだ。オアシス)。

MAのある日の監督が入室する前のミキサーさんたちがデータの整理をしているときの一幕である。僕の先輩は隣で別の作業をしており、まだまだ僕にできることは限られており、それでいて携帯をいじるのもなんとなく他人の目に映る社会人1年目のイメージとしては良くなかろうということで、手元にあった資料に目を落としながらミキサーさんたちの会話に耳を傾けることにした。

間もなくして、「キンペイがさあ〜」というミキサーさんの声が耳に入ってきた。「キンペイ?」と僕の頭の中で「?」が浮かぶと同時に、SEさんも「キンペイ?」とミキサーさんに聞き返した。するとすかさず、「そうそう習近平が〜」といった次第で会話が展開されていった。衝撃のあまり、後の会話を聞きそびれてしまったことに悔いが残るが、なんて愉快なミキサーさんなんだろうと。

そんなミキサーさんの最近のマイブームは健康らしい。消化スピードのちがう食べ物どうしの食べ合わせは腸内のガス溜まりにつながるらしく、フルーツと主食は時間を空けて食べるようにと丁寧に教えてくれた。そうだ、言葉使いの激しいギャルほど優しいことを思い出した。

好きな業務工程にまた1つ好きなポイントが加わる微笑ましいひとときとなった。


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