リアルナンパアカデミー事件で、盗撮動画が果たした機能

リアルナンパアカデミー事件の塾長の地裁判決で、レイプ盗撮動画を保存したPCとハードディスクが没収された記事を書いた。https://note.com/shouwa/n/nbac0864c5540

塾長は、性交動画を撮ることを推奨しており、塾の教材は今も世間に出回っている。塾生逮捕から塾長逮捕までに数ヶ月あり、一部メディアは、塾長が逮捕される前には塾長へのインタビューを流していた。塾の教えの影響は消えていない。

もしかしたら「塾長は、クルクルでヘタを打っただけで、動画は撮った方がよいかも」と思っている人がいるかもしれない。

その考えを改められるよう、主にリアルナンパアカデミー事件を題材に「盗撮動画が、準強制性交等事件の事実認定で果たす機能」を述べる。

1 「抗拒不能」の認定に役立つ
アルコール又は薬物による「抗拒不能」の状態で性交された場合、被害者が、声を出したり、身をよじったりすることがある。
準強制性交罪の加害者には、「感じているから『抗拒不能』ではない」という理屈を述べる人がいる。この塾長も、そう認識していた可能性がある。

しかし、裁判所は、このような理屈を一蹴して抗拒不能を認定すると思った方がよい。
人間は自分の行動に対する評価は一番甘い。
その甘い自分ですら「後からモメるかもしれないから、動画を残そう」と思うような性交を撮影した動画は、第三者が見れば「被害者が、意識が混濁して性交の相手が誰だかわかっていない状態で反応をしているに過ぎない」ものである。これは抗拒不能の最も有力な証拠となる。

実は、相手が何らかの反応をしたら「抗拒不能」ではないと誤解している人は少なくない。宮崎準強姦事件の被告人もこのような主張をしていた。しかし、裁判所には通用しないので、即刻考えを改めるべきである。

後からモメるかもと思ったら性交してはならない。

2 レイプ盗撮動画は、かえって抗拒不能を推認させる
塾長の判決では、「被害者に意識があれば、撮影されていることがわかるアングルからの動画があること」が、抗拒不能を認定する根拠となっている。

ものの弾みでセックスすることがあったとしても、ものの弾みで裸体動画の撮影に応じる人は稀である。いつネットにアップされて、デジタル・タトゥーとなるかもしれない。裁判所は「意識があれば、動画撮影は拒否するだろう」という経験則を持っている。

なお、久留米準強姦事件でも、盗撮画像が存在すること自体が、抗拒不能を推認させる事実となっている。
この事件の撮影者は被告人ではないのだが、薄暗い室内で、スマホで撮影すれば、画面が明るくなるので、ある程度離れていても気づくだろうという経験則も、裁判所は持っている。

3 レイプ盗撮動画は、被告人の故意も推認させる
塾長の判決では、「被害者に意識があれば、撮影されているとわかるアングルから、被告人が動画撮影をしたこと」を理由に、被告人が被害者の抗拒不能を認識していたことを認定している。
被告人は、被害者が「撮影されていることも認識できない状態」にあったことを知っていたと、裁判所は考えるからである。

4 没収はできる
宮崎強姦ビデオ事件は、弁護人が「性交の動画を法廷で流されたくなければ、示談金ゼロで示談せよ」と被害者と交渉した。

リアルナンパアカデミー事件では、最初に逮捕起訴された塾生の保釈中、塾長は逮捕されずにシャバにおり、この塾生のレイプ動画を保管していた。
この塾生保釈後、塾長は、この塾生のレイプ動画を塾生に送り、被害者と再交渉するよう指示した。(この塾生は、保釈条件に反したことにより、保釈取消となったことが、この塾生の判決で認定されている。)

このように、仮に性交が違法であっても、性交動画の存在を被害者に示すことにより、被害者に示談を促すことができる、又は加害者がそう信じ込むことにより、犯行を促進する機能がある。だから、このような動画は、供用物件となり、没収されるのである。

5 量刑で悪情状となる
レイプした上で、その動画を撮った場合、必ず量刑事情で悪情状として、考慮される。

以上のとおり、同意なく性交動画を撮影した場合、抗拒不能の証拠になり、故意も認定される。行為者に良いことなんて1つもない

この記事で思い直す人が現れ、その結果、動画の存在に苦しむ被害者が減ってほしいと、切に願う。



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