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不同意って何? 1

不同意性交等罪が衆参両院で可決された。
不同意性交等罪の「不同意」は法律用語だから、普通に話すときの「不同意」とは異なる。
ヌカ喜びするのも、逆に勘違いで叩くのも不幸なので、条文や、WG・検討会・法制審の議事録や、国会の法務委員会や本会議の音声データ上明らかになっているところを説明していく。

まず、不同意性交等罪の不同意は、「気持ち」ではない。
たしかに、普通に話すときの「不同意」は、同意していない、賛同していない気持ちである。
しかし、「不同意性交等罪」の「不同意」は、「状態」である。
人の意思に直接フォーカスする要件とする場合、明確性や安定的適用の観点から問題があるという意見を受けて、法制審で「状態」を要件とする案に収束した。※1

では、どのような「状態」か。

ある要件によって、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な「状態」である。※2

法務委員会で「舌を噛みそう」と言った議員さんがいらしたが、性犯罪のプロセスをリアルに考えれば、特に複雑でもない。

まず「有効な同意」をするには、同意するか否かを決定する自由がなければならない。
大量のアルコールで朦朧としていたり、睡眠薬を盛られた人は、「同意しない意思を形成」することが困難である。

次に、就職の良い部活の顧問とスタメン入りが微妙な部員、雇用流動性のない業種の社長と平社員のように、「NOと言ったら人生終了」になりそうな関係では、同意しない意思を「表明」することが困難である。

最後に、NOと言っても、性行為を完遂されてしまう場合がある。
暴行脅迫により、NOを言い続けることができない場合が典型だ。
これが、同意しない意思を「全うすることが困難」な状態である。

以上が、同意しない意思を形成し、表明若しくは全うすることが困難な状態の説明である。
この「困難」は、著しく困難であるという意味ではなく、「文字どおり、それをすることが難しい」という意味だと、法務省は言っている。※3

なお、この記事のタイトルは、レイチェル・ブライアン氏の名著「同意って、何?」へのオマージュである。
自分と他者を大事にするための同意について書いてある本であり、ハッピー感があって素晴らしいので、強くお勧めする。

※1と3 法制審議事録10
※2 すごく長いので別の記事で述べる。

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