日弁連定期総会2020を終えて


今年の定期総会が9月4日にあった。
「この組織ヤバい」と心底思うようになった。

一番大きな理由は、6号議案に関する執行部の解答である。

6号議案が紛糾した背景を述べる。

今年の6月、法テラスの利用要件を大幅に拡大する新型コロナ法テラス特措法案が、国会に提出された。法テラス利用のためのハードルを極端に下げる内容だ。
法テラスの弁護士報酬は極めて低い。新型コロナ法テラス特措法は、平たく言えば「マチベン殺し特措法」だった。
立憲民主党の階猛議員はツイッターで日弁連の要望があったと述べた。

公明党に対する要望を撮った記事には、荒日弁連会長、渕上事務総長の顔があった。

驚いたのはヒラ会員だ。
日弁連は強制加入団体なので、弁護士は全て日弁連に登録し、会費を徴収される。
こともあろうに日弁連が、会員4万人の看板を背負って、マチベン殺し特措法を、国会議員に要望したのだ。

弁護士ツイッタラーが階猛議員のツイートに、リプライで質問し、打越さく良議員は、ヒラ会員有志に要望の内容を説明した。

他方、日弁連執行部は、法テラス利用要件の拡大は、単なる「アイデア」として述べたと理事会で説明した。

マチベン殺しのアイデアを述べるのもどうかと思うが、階議員のツイートは、どう見ても単なるアイデアとして受け取ったようには見えない。

ヒラ会員有志が日弁連執行部に、ロビー活動の内容を明らかにしてほしいと質問状を出した。賛成者は818人。
全会員の約2%に当たる数であり、地方の単位会を複数集めた数でもある。

日弁連執行部は、この質問状に対し、理事会議事録のとおりという回答をした。
理事会議事録の日付は、質問状の日付の前である。この理事会議事録では不十分だから、質問状を出したのだ。回答になっていない。

このような状態で、総会の6号議案が可決されたら、マチベン殺し特措法に、総会がお墨付きを与えたと利用されかねない。

このような背景があって、総会当日を迎えた。

私が一番驚いたのは、次の質疑応答である。

執行部:コロナで法テラスに償還できなくなる人が増え、法テラスの財源が逼迫するので、議員に法テラスの予算を増やしてほしいとお願いに行った。
質問者:では、なぜ法テラスの利用範囲を拡大しようとしたのか。
執行部:法テラスの財源が逼迫しているから。
質問者:財源が逼迫していたら、法テラスの利用範囲を拡大したら、余計逼迫するでしょう。
なぜ法テラスの利用範囲を拡大しようとしたのか。
執行部:法テラスの財源が逼迫したから。

これを三回くらいループし、なぜか質問者が議長に止められて終わった。

この総会は、ほかにもヤバいところが多々あるのだが、この質疑が一番ヤバいと思った。

執行部の回答の根底にあるのは、「新型コロナという未曾有の危機に、弁護士が自主ダンピングするのは正義である」だから、会員は協力するし、議員は法律を作るという驕りである。

正義は人の数だけある。正義という言葉で、立場の違う人を説得することはできないのだ。

弁護士は個人事業主なのだから、法的サービスを提供する前提として、自分の事務所の経営がある。
正義だからやれと言われてもできない。
と、大阪の橋本先生が述べた。貸与制世代で消費者金融に借り入れがあるのに、交通費を払って総会に足を運んだ。この言葉に執行部は、誠実に回答すべきだろう。

私は、日弁連の死刑廃止運動に反対の立場なので、この4年間執行部提出の決算と予算に反対票を入れてきた。もともと執行部に親和的ではない。
ただ、死刑存廃は、思想信条・宗教論争の側面があるので、話が噛み合わないのは、一応理解できる。

しかし、「法テラスの財源が逼迫したから、法テラスの利用範囲を拡大するアイデアを出す」ことは、足し算と割り算ができれば、客観的に、おかしいとわかる。

こんなにも客観的に検算可能な誤りすら「正義だから、会員は協力する」と思っているなら、自分たちの正義に酔いすぎだ。

弁護士法、日弁連会則は、執行部性善説で来た。
今、執行部は、それを最大限利用している。
会則の改正が必要だ。

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